大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第103話ダンジョンの生態

「ダンジョンと会話できるのですか?」
「はい。虫や小動物を相手にしている幼いダンジョンとは無理ですが、これくらいのダンジョンとなら会話が可能です」
「ダンジョンと会話する為には、決まった場所があるのですか?」
「いえ。ダンジョンがその気になれば、入って直ぐに会話ができますが、普通は返事などしません」
「どういう時に返事をしてくれるのですか」
「本体はダンジョンのどこかに隠れているのですが、そこを探し当てて命の危険を感じさせれば、助かりたくて返事をします」
「殺すぞと脅して返事をさせるのですね」
「はい。ダンジョンはモンスターですから、絶対的な強さを示して脅かさないと、こちらの言う事を聞いてくれません」
「ですがダイなら、本来の気配を隠さずに出せば、ダンジョン内のモンスターを殺さなくても、十分言う事を聞かせられるのではありませんか」
「それはそうなのですが、それは若様も同じですよ」
「そうですか。ではやってみますね」
「ちょっとお待ちください。今それをやってしまうと、自暴自棄になったダンジョンが、一か八か本体がダンジョン部分から離れて生き延びようとするかもしれません」
「一か八かと言う事は、危険な行為なのですね?」
「はい。本体の大きさによって、一日に吸収しなければいけない栄養、魔素、魔力などの量が違いますが、幼い頃ならともかく、成長したダンジョン本体が階層部分を切り離したら、大抵飢え死にしてしまいます」
「ダンジョンを飢え死にさせないためには、逃げられないと諦めさせる必要があるのですね」
「はい。脅かし過ぎて逃がしてしまわないように、注意深く追い詰める必要があります」
ルイとダイは話をしながら、銀級ダンジョンの中を、魔物を殺しながら歩き回った。
ダンジョン内に住む全ての魔物を殺し尽くし、ダンジョン本体を脅かすのは当然だが、逃がさないように本当の強さは隠すという、微妙な調整をしていた。
特にダイが気を付けたのは、一直線に最短距離でダンジョン本体に向かうのではなく、最深部に向かいつつ、訓練の為にダンジョンの魔物を殺していると見せかけることだった。
ダンジョン最深部や途中の要所には、ダンジョンが成長するまでに集めた地下資源の鉱物や宝石が置かれており、光物や鉱物を好む人間や魔物を集める罠になっていた。
ルイとダイには大した価値ではないが、普通の冒険者なら、引退して悠々自適の生活が出来るほどの価値があった。
ルイとダイは、自然洞窟形式のダンジョンを二キロメートルほど歩き、点在する魔物住処の横穴を全て確認し、最奥の行き止まりまで辿り着いた。
そして巨大な青い宝石を手に入れると、ゆっくりと戻るふりをしながらダンジョン本体が隠れているところまで戻るのだった。

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