大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第102話銀級ダンジョン

ルイとダイが挑んだダンジョンは、周囲の作りが自然の壁でできており、大きさも縦横二メートル程度しかなく、大型の魔物なら立って移動できないくらいの作りだった。
「まだ若いダンジョンですね」
「教えてもらったことはありましたが、ダンジョンは本当に魔物の一種なのですね」
「はい。生まれたばかりのダンジョンは、それこそ普通の小さな虫を食べて育つ、とても弱い生き物です。そこから竜と共生するような強いダンジョンに育つまでには、何百年もかかります」
「そうなのですか。生まれたばかりのダンジョンは、魔蟲どころか普通の小さな虫を食べるような存在なのですね」
そんな話をしながらダンジョンを行くルイとダイであったが、途中で出会う魔物は銅級や鉄級ばかりで、槍の一突きで即死させられる相手ばかりだった。
そもそも上下二メートル程度しかないダンジョンでは、刀剣などの武器を上段に振りかぶるのが難しく、突きしか有効な攻撃方がない。
どうせ突きしか手段がないのなら、少しでも攻撃距離の長い槍の方が有利なので、今回は室内で使う二メートル程度の手槍を使っていた。
刀剣とは違って、穂先近くを持ったり中央を持ったりすることで、狭い室内でも自由自在に攻防に使う事ができる便利な武器だった。
しかも材料に複合セラミックを使っており、魔法陣を刻み魔晶石も埋め込んでいるという、ある意味桁違いの攻防力を持っているので、銅級や鉄級の魔物などに使うのはもったいないほどだった。
そんなルイとダイにとっては、この程度のダンジョンのリーダーでは何の歯ごたえもなかった。
「やれやれ、初めてのダンジョンだから愉しみにしていたのですが、リーダーが銀級のネズミ型魔物では物足りませんね」
「ダンジョン本体を倒しますか?」
「それは、魔境の主を倒すのと同じことですか?」
「いえ、それは違います。ダンジョンはあくまで一体の魔物です。中に住んでいる魔物とは共生関係ですが、魔境とは違っています」
「いえ、そう言う意味で聞いたのではありません。ダンジョン自体を倒した場合、中にいる魔物がスタンピートを起こすかどうかを聞いているのです」
「その心配はありません。魔境のボスが生きている限り、ダンジョンが死んで魔物との共生関係がなくなっても、魔境からあふれる事はありませんし、直ぐにダンジョン跡から魔物が出ていくこともありません」
「普通の洞窟として住み着くと言う事ですか?」
「はい。壁の強度が弱くなり、地震などで崩れる心配もありますし、死体や排せつ物の処理がなくなりますから、水や空気が濁ってしまいますが、直ぐに住めなくなるわけではありません」
「そう考えると、ダンジョンと人間が共生できれば便利ですね」
「今までそのような事を考えたことはありませんでしたが、そう言えばそうですね」
「ではこのダンジョンと話し合ってみましょう」

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