大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第101話ダンジョン

ルイとダイは、夢中になって薬草や魔法薬の材料を集めていたが、二人の探知魔法に少し強い魔力反応が引っ掛かった。
「何かありますね」
「はい。恐らくダンジョンです」
「ほう。これがダンジョンの反応なのですか」
「はい。ダンジョンの魔法反応は独特ですから、覚えておかれたら便利ですよ」
「入ってみたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「そうですね、この程度の魔力反応なら、私や若様なら大丈夫です」
「そうですか。だったら入らせてもらいますね。ベルト王国の魔境にはダンジョンがないので、初めてダンジョンに入ることになります」
「そうでしたか。確かにベルト王国にはダンジョンがありませんから、若様のお立場だとダンジョンに入る機会がないでしょうね」
「では一旦アネットたちと合流して、ダンジョンに入る事を話しておきましょう」
「分かりました」
ダイはアネットに話す必要など感じなかったが、ルイが話すというのを止める気もなかったので、二人で飛行魔法を使ってアネットたちと合流した。
ルイとダイがダンジョンに入ると、緊急時に直ぐに助けられないので、アネットたちには念の為に魔境外の奥山で待機してもらうことになった。
しかし何もない所で待たせるのも心配だったので、ルイは魔境外に拠点となる陣地を築くことにした。
ダイには大げさに思えたが、特に反対する理由もないので、ルイと一緒に何重もの防御魔法陣と攻撃反射魔法陣を大地に描き、古竜が相手でも直ぐには破壊されないくらいの堅固な陣地を築き上げた。
ルイとダイの二人にかかれば、これほど規格外の魔法陣であろうと、サクサクと創り上げることができる。
この世界では、古竜のブレスに対抗できるような魔法陣は表に出ておらず、極東の魔法王国とベルト王国内に、使える者が密かに暮らしているだけだ。
いや、密かにというのは正確ではない。
極東の魔法王国は軍事機密として他国に漏らしていないだけで、国内では魔力に恵まれた者なら学んで使う事ができる。
ベルト王国では、ミカサ公爵家がベル王家に伝えた秘術なので、ミカサ公爵家に配慮してベル王家の者しか学ぶことができない。
いや、そもそもこの世界の人間基準では、規格外の魔力がある者しか、古竜のブレスに対抗できるような魔法陣を築くことはできない。
そんな規格外の魔法陣なのだが、ルイとダイには鼻歌を歌いながら描けるものだった。
一時間ほどで満足できる魔法陣を何重にも描いたルイは、ついに初ダンジョンに挑むことになったのだ。

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