大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第97話開戦


「宰相、ネッツェ王国に攻め込みなさい」
「しかしながら王女殿下、開戦の大義名分がございません」
「イマーン王国が食料不足で困っていると聞いていますよ」
「それは私も聞いております」
「嘘おっしゃい! イマーン王国から軍事同盟の使者が来ているのでしょ」
「なぜそれをご存知なのですか?!」
「私にも目もあれば耳もあるのですよ」
「王女殿下も油断なりませんね」
「王族として当然の事です。それよりもイマーン王国との軍事同盟を締結して、ネッツェ王国に攻め込むのです」
「それでは我が国に何の利もなく、無駄な戦費を使うだけでございます」
「宰相は反対なのですか?」
「勝てない戦はしない事でございます。いえ、勝てたとしても、戦費に見合うだけの利がない戦はやるだけ損でございます」
「どうしても?」
「この国の政を預かる宰相として、国の為にならないことはできません!」
「そう。しかたないわね、殺してしまいなさい」
「な?!」
エステ王国の宰相は、自分が殺されたと気付かずに殺されてしまった。
エミネ王女に無理矢理再度呼び出された三氏の魔族は、激減した一族から何とか一人を選抜し、エミネ王女との連絡役とした。
ベル王家には絶対手出ししないと言う条件と、魔王を呼び出す方法を教えるという、二つの条件に妥協して、魔界で没落しそうな三氏魔族が協力することになったのだった。
三氏魔族としても、魔王の人間界召喚に協力することで、魔界内で魔王の支援を得て、何とか魔界での地位を維持しようと必死だったのだ。
だが魔王ほど強力な魔族を、この世界の理に逆らって召喚するのは非常に難しく、最低でも十万人の生贄が必要だった。
さすがの王女も、自国民を十万人も無理矢理殺すわけにはいかないので、戦争を起こして敵国民と自国民の双方を殺すことで、十万人を虐殺することにしたのだった。
そこで最初は宰相を説得して開戦させるつもりだったが、宰相が反対するので、宰相を殺して魔族と入れ替えてしまうことにしたのだ。
「では後は頼んだわよ」
「任せておけ」
「私の警備はあなたがしてくれるのね」
「任せなさい」
「ネッツェ王国軍を叩くのはあなたに任せるわよ」
「任せろ。ベル王家には煮え湯を飲まされたが、普通の人間に負けることはない」
「大口を叩くのは実際にやってからにしなさい。貴方の一族は、ベル王家を殺しに行く前に同じ事を言っていたわよ」
「ちっ!」
三氏族から派遣された三魔の魔族は、宰相になってエステ王国を牛耳る役と、王女を護る役、さらに前線でエステ王国を勝たせる役の、三つの役割を分担することになった。
この戦いで本当に十万人以上を殺すことができれば、魔王召喚に必要な生贄以外を、三氏魔族が平等に分けることになっていた。
少しでも多くの生贄を手に入れ、力を手に入れなければ、魔界で没落するのは目に見えていたのだ。

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