大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第71話スライム便所

「ルイ殿下、ダイ様、お二人の家に案内させて頂きます」
「これは、これは、妖精の女王陛下直々に案内していただけるのですか? ソフィア陛下」
「これは恐れ入りますソフィア陛下。初めて御意を得ます。ベルト王国第三王子のルイトポルト・カール・ルートヴィヒ・ベルと申します」
「そんなに畏まらないでください。私たち妖精族も、久しぶりに人間族や獣人族の方々と交流できて、とてもうれしく思っているのですよ」
「そう言って頂ければ、無理をお願いした心も少し軽くなります。ご厚情お礼の申し上げようもございません」
「まあ、まあ、まあ、そのような堅苦しい挨拶はもうやめて、私に家を案内させてください」
「ありがとうございます。宜しくお願い申し上げます」
「基本的な構造は、ルイ殿下とダイ様の家も、獣人たちの家も同じですが、ルイ殿下とダイ様の家は非常時の避難所になっておりますから、村人全員が逃げこめる広さになっております」
「なるほど」
「それで入り口なのですが、もともと強固な岩盤の岩山でしたので、その岩盤を利用した強固な岩扉になっていますから、強力な戦士や魔術士であろうと、魔獣や魔族であろうと、討ち破ることはできない作りになっています」
ソフィア陛下の説明通り、横穴住宅の入り口の護りは強固で、ドワーフ族が鍛え上げたハンマーだろうと、魔族の強固な爪であろうと、割ることも裂くこともできない強固な岩盤だった。
「天井には果樹の棚を作っていますが、幹や枝葉は地上に出ていますから、横穴住宅に逃げ込んでも何年何十年だろうと籠城できますよ」
「すばらしい作りです。これならみなも安心して暮らすことができます」
「それと肉食の獣人族の方々には、鶏を飼う部屋を設けてあります」
「ご配慮かさねがさね有難く存じます」
ソフィア陛下の言うように、大きな部屋に沢山の鶏が放し飼いにされており、飛んで天井に実る果樹をついばんだり、地面から生えているキノコをついばんだりしている。
「ごらんのように、キノコや野菜が生える部屋も用意しています。万が一地上の枝葉を全て焼き払われ、しばらく居座られたりすると、枝葉を再生させられないこともありますから」
「ご厚情感謝の言葉もございません」
「それとトイレなのですが、便所スライムを底に住ませていますから、匂いもありませんしくみ取って捨てる必要もありません。増えた便所スライムは鶏のエサにすれば危険もありませんし、鶏の味もよくなります」
ソフィア陛下の説明には、さすがのルイとダイも驚いていた。
普通どれほどの王侯貴族や金持ちでも、汚物の処理には困っており、莫大な金額を投じて魔道具の水洗便所をオーダーメイドするしかない。
そして大規模都市で汚物処理する場合では、地下に下水道を設けるのだが、下水道の出口はとても臭いし、下流は汚染されてしまうのだ。
それをスライムに食べさせて処理するだけでも大発見なのに、使ったスライムを利用して養鶏をするなど、都市の形を変えるほどの大発見なのだ!

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