大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第68話エミネ王女の恐怖エミネ王女と焦り

「バズネ。バズネ! 直ぐに来なさいバズネ! どこにいるの、バズネ!? グズグズしないで直ぐに出てきなさい、バズネ!!」
惨殺された魔族の遺体が発見されたことで、王宮内は蜂の巣を突いたような騒動になっていた。
その中でもエミネ王女は、怒りと恐怖をぶつける為、新たに契約した魔族の代表を探し回っていた。
だがどれだけ呼んでも現れないバズネに、疑問を覚えだした。
徐々に不審を感じ、自分の私室の中をバズネの名を呼びながら、いなくなった魔族の侍女を探していたの。
いつもは呼べば直ぐに現れたバズネが、いくら呼んでも探しても現れない。
エミネ王女は徐々に恐怖を感じるようになった。
「バズネ! どこなのバズネ! もう怒らないから出ていらっしゃい、バズネ! もう隠れるのは止めて出てきて、バズネ。バズネ!」
以前と全く同じ状況になり、恐怖に囚われたエミネ王女は、私室を出て狂ったように王宮中をバズネを探し回り、今回も他の侍女や侍従にいさめられ、部屋に連れ戻されてしまった。
目と顔に恐怖と狂気を宿したエミネ王女を心配した侍女や侍従が、十数人もエミネの側に付き添ったことで、ようやくエミネ王女も平静を取り戻していった。
そこで今回もエミネ王女が思いついたのが、真実を教えてくれる魔法の鏡にバズネの事を聞くことだった。
だが何も知らない侍女や侍従の前で、魔法の鏡を使う事もバズネの事も聞くこともできないので、平静を装い心配する侍女や侍従をなかば無理矢理部屋から追い出して、魔法の鏡に真実を聞くのであった。
だがエミネ王女の演技も虚しく、魔族の遺骸が見つかったことと、エミネ王女の侍女が消えてしまったことに加え、エミネ王女が半狂乱になったことを関連付ける噂が広まることになった。
「鏡よ鏡、バズネはどこに行ったの」
「地獄に行きました」
「バズネも殺されたと言うの!」
「はい、殺されました」
「なんですって?! バズネの一族はアンネロッタの一族よりも強いと言ったではないの!」
「そうは申しましたが、ミカサ一族よりは弱いのです」
「だったら最初からそう言いなさい!」
「そう聞かれませんでしたから」
「つべこべ口答えしない!」
「はい」
「ではミカサ一族より強い魔族を召喚する方法を教えなさい!」
「一万人の人間を生贄に捧げることです」
「一万人でいいのね」
「はい」
「間違いないわね」
「間違いございません」
「何か問題があるのじゃないの」
「問題はありません」
魔境の話を聞いたエミネ王女は、ようやく恐怖から解放されたが、新たな魔族を召喚するために、平気で一万人の国民を平気で殺そうとしていた

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