大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第66話フィン王国再び

ルイとダイは一緒に行動して、互いに同じ魔法や近い魔法を重ねてかけて獣人の捜索に全力を尽くし、次々と探し出し助け出した。
フィン王国は身分差と貧富差が激しいので、獣人を奴隷として所有しているのは、貴族や大商人や聖職者だけなのだ。
ルイもダイも先の通過の際は見逃したが、今回は一切の容赦をせず、今回連れ去った獣人だけではなく、以前から獣人を奴隷にしていた、貴族や商人や聖職者を襲撃した。
貴族の城、商人の屋敷、聖職者の教会を次々と破壊し、抵抗する護衛を叩きのめし、全ての獣人を救い出して獣人の森に連れて行った。
「ルイ様、申し訳ないのですが、フィン王国から助け出した全ての獣人を受け入れるのは、今の我々には難しいのです」
「食料の問題ですか?」
「食料もそうですが、多くの家が焼き討ちに合い、まともに住める家が少ないのです」
虎獣人の若頭・タイガがとても苦しそうに話す。
彼もこのようなことは言いたくないのだが、獣人族の置かれた苦しい状況では、こう言うしかなかったのだ。
「ではどうでしょう。今回の報酬として、獣人の方々の支配地域の中から、若様に領地を頂きたい。そこはどのような荒れ地でも危険な場所でも構わないので、領地を頂けたらフェアリーに家を建ててもらうので、そこを行き場のない獣人の村にしましょう」
唐突にダイが横から提案してきた。
「俺の一存では決められないが、今回の若様とダイ殿の助力に報いるのなら、それくらいのことは当然だと思う。出来るだけダイ殿の提案に沿う形で話を進めるが、領地の割譲となると直ぐに決められるのもではない」
「ではどうでしょう。獣人族の方々の支配が及ばず、だれも住んでいないところはありませんか? それこそダイの言うように、全く水のない荒れ地でも構わないですし、峻険な山奥でも構いません」
「知っての通り、魔境と奥山の境界があいまいな場所はあるが、そこはさすがに村を作るのは難しいと思う。魔境に向かって左手の奥地に、獣人族でも越えられないような峻険な山々があり、その向こうはどうなっているのか分からないのだが、そこに誰も住んでいなければ、自由に領地にしても大丈夫だと思う」
急ぎルイとダイはその場所を確認に行ったが、先の先までは確認できなかったものの、峻険な山々の間には盆地があり、果樹の植林や遊牧なら可能だと思われた。
ダイはどのような場所であろうと行き来できるフェアリーに頼んで、峻険な山々の中に洞窟の家を作ってもらった。
「だれだ貴様は!? ここは王宮だぞ! 余はこの国の王太子だぞ! 余に手を出してただで済むと思っているのか?!」
ルイとダイは、ついにフィン王国の王宮に乗り込み、王宮や王都に囚われている獣人を開放することにした。
邪魔をする兵士や役人を叩きのめし、その場で獣人を虐待している者は現行犯で殺した。
さすがにこの頃にはルイの怒りも静まっていたので、問答無用で殺すのはダイだったが、ルイもそれを止めようとはしなかった。
だがそんな処刑候補に、フィン王国の王太子がいたのだ!
王太子は嫌な笑い顔を浮かべて、獣人を鞭打ち拷問道具で痛めつけ、自分の卑しい欲望を満たしていたのだった。
「うん? お前はベルト王国の第三王子ではないか?! 確かルイトポルトと申したか?」
「やれやれ、思い出さなければ死ななくて済んだかもしれないのに」
「そんなことはありませんよ。相手が王太子であろうと王太姫であろうと、ベル王家の方々に仇をなす者は、問答無用で死んで頂きますよ」
「よせ、やめろ、そんなことをすれば国際問題になるぞ! 我が国とベルト王国との戦争になるぞ!」
「戦争になれば、ベルト王国がフィン王国を併合するだけだ」
ダイはそう言い捨てると王太子の首を跳ね飛ばした。

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