大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第65話追捜索

「若様、ルイ殿、どうしても行方の分からない女子供がいるのです」
「そうですか。ですが生存を諦めるわけにはいきませんから、引き続き捜索を続けましょう」
「そうしていただけますか! 私たちも諦める気はないのですが、それでも魔境に中や人間どもの国にまで捜索に入るとなると、若様とルイ殿に頼らなければなりません」
ルイが多くの人を助け、ついでにサクッとワイバーンを狩った翌日、全ての獣人族の村から代表が集まり、今後の方針を話し合うことになった。
村によっては、村長どころか若頭やほとんどの男を殺されてしまったところもあったが、それでも何とか代表者を立てて参加していた。
急いで生存者と死者を調べ、随時戻ってくる村人や助けられた村人を集計し、いまだに行方の分からない者を確認したのだが、少数ながらも生死の分からない者がいたのだ。
獣人の支配域内で隠れているのなら、助けられるのは時間の問題だけなのだが、人間族に連れ去られてしまったのなら、人間族の国にまで行って助け出さなければいけない。
魔境の中に迷い込んでしまったのなら、諦めるしかないのは分かっているので、その事は誰も口にしなかった。
「私とダイで人間の国と魔境を手分けして探しますから、みなさんには子供が迷い込みやすい森や谷を探して頂きます。それでよろしいですか?」
「お待ちください若様」
ルイが話を締めくくろうとした時、反対意見を言ったのは事もあろうにダイであった。
「何か問題がありますか?」
「子供たちを探すのに全力を尽くすと言う事に反対はしない。だがもうこれ以上若と離れるのは問題だ。若と一緒に行動する」
「私とダイが一緒に行動してしまったたら、人間の国か魔境のどちらかが手薄になってしまいます。それを分かっていっているのですか?!」
ルイがいつになく怒りを混じらせた声色でダイに聞き返した。
「一分一秒を争うのは理解している。だがどうにも嫌な予感がする。だから俺は何を言われようと若の側を離れない。その代わりにフェアリーに捜索を頼む」
「なんだってすって?! フェアリーですって?!」
ルイは考える表情をしていたが、各村の獣人代表が驚愕の表情を浮かべていた。
フェアリーとは伝説の生き物で、見た目は羽の生えた小さな人間なのだが、人間や獣人よりも精霊や神に近い存在で、この世界が堕落したのを嫌って姿を隠したのだ。
「本当にそれでいいのだな?」
「ああ、この地域はまだ純粋な心が残っているので、フェアリーの気配が感じられる。ここでなら彼らの力を借りる事ができる」
「代表の方々はそれでいいでしょうか?」
ルイの問いかけに反対する者は誰一人いなかった。
フェアリーが手助けしてくれると言う話には疑問を持ったが、ルイが代表の方々に信用してもらうために、会議の前に狩ったワイバーンを見せていたので、面と向かって反対意見を言える者がいなかったのだ。
「若様とダイ殿に向かってもらう方だが、人間の国の方でお願いしたい」
唯一ルイに堂々と話ができるのは、虎獣人村の若頭だけで、彼は誰もが言いにくい、魔境に入った者は諦めると言う事を言葉にした。

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