大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第64話ワイバーン

「ワギャー」
大きな叫び声と共に、金剛石級に分類される下位属性竜のワイバーンが襲ってきた!
いや、ワイバーンだけではなく、飛行能力のある魔獣や魔鳥が、獣人族の女の子や動物たちを喰おうと殺到したのだ。
だがルイが魔法防御を急いで展開したので、飛行魔獣や魔鳥は獣人族の女の子はもちろん、彼女たちを護ろうとしていた動物たちも食べることができなかった。
その時にワイバーンはどうしていたのか?
驚いたことに、すでにワイバーンは首を斬り落とされ死んでいた!
ドラゴン種のなかでは最下級に分類されているとはいえ、ビックタイガーやビッグクロコダイルどころか、キングリーチすら凌ぐ強固な鱗と皮に覆われたワイバーンの首を、豆腐を切る以上に簡単に断ち切ってしまっていた。
だがルイがどのような武器や魔法を使ったのかは、遠くから見ていたカーラにもわからなかった。
箒に乗ってルイを追いかけていたカーラは、ようやく追いついてきていたのだが、その目では何が起こったのか確認することができなかった。
「カーラさん、迷子になっている人がいないか探しましょう」
「え、あ、はい、分かりました!」
あまりのことに自分が目にしたことが信じられず、呆然自失していたカーラにルイが話しかけた。
話しかけられて自分を取り戻したカーラは、あたふたとしながらルイの言う通りに迷子を捜すのであった。
ルイは念のために魔境の境界線を二度往復して、合計二十三人の迷子を助けたが、全員ルイの言葉を信じてくれずに逃げるので、仕方なく眠らせて助けていた。
眠らせているとはいえ、あまりに長く子供たちを連れまわすのも可愛そうなので、一度虎獣人村に戻ることにした。
「おお、これほど早く、これほど沢山の子供たちを助けてくれるとは思いませんでした。本当にありがとうございます」
虎獣人村に戻ったルイは、また話の分かる若頭に子供たちを預けようとしたのだが、残念ながら村には若頭の気配がなかった。
そこで偉そうに指示を出している、老年の虎獣人に子供たちを預けようとしたのだが、どうやら老年の虎獣人は老練な村長だったようで、虎の特性とは思えない丁寧な対応をしてくれる。
「いえ、当然の事をしたまでです。それでつかぬ事を聞きますが、この村にワイバーンの皮や鱗を加工できる職人はいますか?」
「ワイバーンですか?」
「ええ、子供たちを襲おうとしたので、仕方なく狩ったのですが、私も忙しいので、私の代わりに加工してくれる人がいれば任せたいのです」
「なんですって?! ワイバーンを狩ったですって?!」
「心配しなくても、魔境には古代竜がいるようなので、ワイバーンを狩ったくらいでスタンピードは起こりませんから、安心されてください」
「いや、そんなことを心配したわけではないのですが、これほど短時間で、しかも単独でワイバーンを狩ったことに驚いているのです」
「それくらいのことができないで、子供たちの捜索を任せろとは言いませんよ。ところで話を戻しますが、ワイバーンの加工ができる者をご存知ではありませんか?」
「それならば、魔境を迂回しなければいけませんが、魔境の反対側にドワーフ族の集落があります。しかし魔境を迂回して山道を行くとなると、獣人族の足でも往復二カ月はかかりますよ」
「そうですか。でも私なら空を飛んでいけますから、子供たちの捜索が一段落したら、行って頼むことにします」

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