大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第56話魔女

ルイとダイが空を駆けて魔力の発生源に近づくと、そこには箒に乗った少女が空を飛んでいた。
そして彼女を追うように、ヒッポグリフに乗った騎士が空を駆けていた。
この状況でルイとダイがする事など決まり切っていて、逃げている箒に乗った少女を助けることだ。
「こちらに逃げてきなさい」
ルイが叫ぶと同時に、ルイの意思が少女を助け騎士を排除することだと確認したダイが、ペーガソスを操り一気にヒッポグリフに乗った騎士の前に移動した。
「ここから先は通さん」
「邪魔をするか!」
「あのような少女を、槍を振って追い回す乱暴者を阻むのは騎士の義務である」
「何を言う下郎。我こそはフィン王国でこの人ありと知られてヒッポグリフ男爵・リチャード・フォン・バイロンなるぞ! 邪魔立てするとただでは済まぬぞ」
リチャード男爵が自信満々に叫ぶのも当然といえば当然で、魔獣の中でも強力な部類に入るヒッポグリフを騎獣にする実力者など、普通は一国に数人いる程度なのだ。
「ふん! ヒッポグリフ程度を手懐けたくらいで猛々しいことだ。そんな事より今お前がいるのはオーランド王国の領内だ。ここで人を襲うと言う事は、オーランド王国に戦争を仕掛けていると考えていいのだな」
ダイは厚かましくオーランド王国の人間のような口を利き、リチャード男爵を牽制した。
「違う! そこの娘は我が国で罪を犯した犯罪者だ。それを追って来ただけだ」
「嘘です! 私はどこの国でもない自由な土地に住む魔術士です! 私たちは誰にも迷惑をかけずに平和に暮らしていたのに、その男たちはいきなり襲ってきたのです」
「嘘をつくな! その娘が住む所は古来より我が国の領土だ。我が国の領土に勝手に住み着き、我が国の財産である森林を勝手に伐採したので奴隷にするだけだ」
「やれやれ、どちらが嘘をついているかは、魔法で真贋を鑑定すればいいことです。ダイさん、捕まえて調べて下さい」
「承知!」
ダイは容赦せずにヒッポグリフ男爵に襲い掛かっていった。
ヒッポグリフ男爵も、フィン王国では上位五人にあげられるような強者だろう。
一国の平均的な戦闘力を考えれば、圧倒的に有利な上空から攻撃できるヒッポグリフ乗りは、その国を代表する騎士であるのが常識で、飛行騎獣乗りを何騎召し抱えているかが国の強さの基準の一つでもある。
そんなヒッポグリフ男爵ではあるが、ダイが殺さないように手加減した槍の突きすら、かわすことも受ける事もできずに一撃で昏倒させられていた。
そしてダイの魔法で真実を話すようにされ、フィン王国が獣人たちの平和に暮らす山岳地帯に攻め込み、奴隷狩りを行っていることが分かった。
そして逃げていた少女が、獣人族と平和に暮らす数少ない人間の一人だという事も自白させられた。
少女はカーラと名乗った。

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