大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第42話村作り

「ここがお前たちに貸し与える土地だ。がんばって村を作るのだ」
「ありがとうございます。お代官様」
難民の代表が頭を下げて、オーランド王国の代官に何度も何度も礼を言っている。
フィン王国を逃げようとした人たちは、最初は国境線で止められた。
だがそこで何の問題も起こさず、静々とオーランド王国の指図に従った事と、男爵城や家々から持ち出した食料や財産で一年は生活できることで、難民として受け入れてくれることになった。
奴隷ではなく難民として受け入れてもらえた背景に、ルイとダイの情報を集めていたオーランド王国忍者の活躍があった。
クリューサーオールとペーガソスという強力な魔獣を操り、玉鋼級以上と思われるルイとダイに率いられた、一万を越える難民と正面から戦う事は不利だと考え、難民として受け入れ、荒れ地を開拓させた方が得だとオーランド王国は考えたのだ。
ただ全ての人が無条件に受け入れてもらえたわけではなく、奴隷や領民に無慈悲に接し、武力や略奪を繰り返していた国軍兵や男爵領軍兵は、武器を奪われ奴隷にされた。
国軍兵や領軍兵が男爵城から略奪した財宝は、難民に分け与えられて食料の購入や村作りに使われることになったが、武器や防具は冒険者を希望する者に与えられ、余った物はガルドの隊商に払い下げられた。
オーランド王国が提示した難民村候補地は色々あったが、ルイの提案で一番条件が悪いとオーランド王国側が考えていた、魔境に近接した湿地帯が選ばれた。
オーランド王国が一番選ばないだろうと考えていた理由は、魔境の外ではあるものの、湿地帯特有の猛獣が多く住む上に、水に病原菌が多くいるので、飲むと死んでしまうからだった。
こんな場所を選ぶよりは、乾燥地帯で常に水不足で苦しむが、猛獣の少ない荒れ地を選ぶと考えていたのだった。
だがルイには秘策があったのだ。
少数ではあるが、奴隷にされなかった国軍兵と領軍兵がおり、彼らを中核に自警団を組織して、自警団に猛獣を退治させることにしたのだ。
それに自警団の団長には狂戦士:ギースがいるので、白銀級以下の魔獣や猛獣など敵ではなかったのだ。
そして病原菌のいる水に対しては、ルイが作った魔法陣を通せば無害になるようにして、安心して飲める水を創り出すようにした。
元々魔術には水を創り出すものがあるので、魔力さえあれば水を創り出すこと自体は不思議な事ではないのだが、魔力の節約を考えるのなら、何も無い所から水を創り出すよりも、汚水をきれいにして飲めるようにしたほうがよかったのだ。
問題は魔法陣を起動させるのに必要な魔核なのだが、それはギースが指揮する自警団が、魔境で魔物を狩れば楽に手に入れる事ができる。
今はギースと言う圧倒的に強い戦士がいるから成り立つ事ではあるが、後々ギースが鍛えた自警団が戦力化され、村人も狩人や冒険者としての実力がついてきたら、ギースに頼らなくても村が成り立ち自給自足ができるようになるだろう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品