大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第41話国外脱出

糞まみれになった男爵が案内したのは、男爵が城主を務める城であった。
城には多くの老若男女が奴隷として囚われていて、その中にはギースの妹:ファルもいた。
だがルイは、ファルだけを助ければいいという薄情な人間ではないので、囚われていた二千人もの人間を全て開放した。
本来なら城を守り国境を護るはずの将兵は、盗賊としてオリビアやダイに皆殺しにされてしまったので、奴隷たちを押しとどめる者はいなかった。
いや多少の守備兵は残っていたのだが、臆病な豚のように糞まみれの姿で震える男爵の命令で、逃げる者を邪魔することができないでいた。
優しい心に中に冒険者の現実も知っているオリビアが、奴隷たちを指揮して城の食糧庫を襲い、城の食料を根こそぎ持ちだした。
飢えて痩せ細った奴隷たちではあったが、食料を奪うために力を振り絞って麦や米の入った袋を担ぎ、国境線に向かって歩くのだった。
だが男爵領を逃げ出したのは奴隷だけではなかった。
奴隷と変わらないような生活をさせられていた領民も、一部の特権階級以外はオーランド王国に向かって逃げ出すのだった。
今までは男爵軍が怖くて逆らうことができなかったが、男爵が捕らえられている今なら逃げられると考え、なけなしの家財を背負って逃げるのだった。
「どうせ逃げるのなら、男爵家の軍馬や輸送用の牛を使って運べるだけの物を乗せて運ぶんだ」
こんな状態でも、略奪となる男爵家の家財の持ち出しはルイには命じられないので、ルイに代わってダイが略奪の命令を下した。
それを聞いて男爵城から略奪を行ったのは、奴隷でも領民でもなく男爵の領軍兵だった!
以前から男爵の手先になり、奴隷や領民を平気でムチ打っていた心卑しい領主軍の兵は、男爵が捕らえられているのを見て手の平を返すように簡単に裏切ったのだ。
何処に何が隠されているかをよく知っている男爵家のメイドたちに案内させて、領主軍の兵が城中を略奪して回った。
ダイやオリビアに加えてルイまでが空に浮かんで監視しているので、暴行や殺人は行わないが、それこそ壁や床をはがす勢いで全ての物を奪っていった。
ルイとダイとオリビアは、奴隷と領民と元領主軍兵士を率い、隊商の待つ街道まで行き、そこから国境を目指したのだが、本来なら奴隷や領民の国外逃亡を監視して捕らえる領主軍の兵が一緒に逃亡しているので、フィン王国側で邪魔をする者はいなかった。
だが問題はオーランド王国であった。
オーランド王国から見れば、統制の取れていない一万を越える難民を受け入れるのはとても危険な事なので、国境線で止められる可能性がとても高かったのだ。

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