大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第40話救出

「助ける! 急ぐ!」
ルイが魔法で狂戦士を生け捕りにしたのに気が付いたのだろう。
オリビアが戦いの途中だというのに振り返ってルイに叫ぶ。
実際には一部の隙もないのだけれど、気配の読めない未熟者には隙に見えるかもしれない。
だがそれでも誰もオリビアに攻撃しようとしないのは、ギースとの戦いがあまりに激烈であったので、恐ろしくて近づくことも出来なくなっているのだ。
それに狂戦士:ギースの恐ろしさは、味方である盗賊たちの方がよく知っているので、ギースを倒したように見えるオリビアに、攻撃をしかけるような怖いもの知らずはいないのであった。
「ガルド、私たちは囚われている人たちを助けに行きます。結界を張っておきますから、ここで待っていてください」
「承りました、若様」
ルイがダイとオリビアを引き連れて、盗賊に囚われている人々を助けに行くと聞いて、本当はこのままこの国を逃げようと言いたいガルドが、必死で言葉を飲みこむ。
ガルドも本来は心の優しい人間なのだが、隊商を護り維持していかなければならないリーダーとしての責任があり、隊商のメンバーには帰りを待つ家族が母国にいるから、ルイとダイに加えて護衛の中で最強のオリビアまで隊商を離れるのは、本当なら絶対許すことのできない暴挙なのだ。
だがここで行くなと言えば、ルイとダイに加えてオリビアにまで見捨てられるのは明らかで、そうなった隊商が生きてフィン王国を出られる確率はとても低いのが理解できるのだ。
もちろん護衛契約しているオリビアが、勝手に隊商を離れるのは契約違反で、莫大な違約金を支払うことになるのだが、全滅した隊商では請求のしようもないし、奇跡的に一人でも生きて母国に帰れたとしても、ルイとダイなら違約金くらい一日で稼ぐのも理解できるのだ。
ならば気持ちよく救出に行ってもらい、その間恐怖に耐える方がましだとギースは結論したのだ。
それにあのルイがかけるという結界だから、たとえ相手がドラゴンであろうと結界の中には入れないだろと理解したのだ。
そしてギースは見たのだ。
ルイが飛行魔法を使って空を飛ぶ姿を!
ほとんど使える人がいないと言われる飛行魔法を、楽々と使うルイの魔力がどれほど無尽蔵なのかと思うと、とてもルイに逆らう気にならないギースだった。
オリビアがクリューサーオールの背に乗り、ダイがペーガソスの背に乗って空を駆けるのだが、ダイの使う槍の先には男爵と言われた男が吊り下げられていた。
上空高く吊り下げられた男爵は、恐怖に大小便を垂れ流す情けない姿であったが、それでも生き残りたい一心で、恐怖に震えながら人質たちを捕らえた場所に案内するのだった。

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