大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第39話狂戦士

「お下がりください」
オリビアの斬撃を受け止めた敵兵は、すばやく反撃を繰り出し、オリビアの勢いを殺しつつ、男爵を後方に逃がそうとした。
「余計な事を申すな! お前はその女の首を取ればいいのだ。他の者達は馬車を襲え。残りは雑魚ばかりだぞ!」
だが男爵は感謝の言葉をかけることなく、ただ忌々しそうに吐き捨てるだけだった。
男爵の命令を受けた盗賊は、欲望に目をぎらつかせて馬車に殺到したのだが、そこにはルイとダイが待ちかまえており、指弾を使った石飛礫の攻撃で頭を粉砕されて死屍累々の状態になっていった。
五十兵百兵と頭を吹き飛ばされるに及び、盗賊たちは恐れてしまい、馬車に向かって来る者がいなくなった。
その間もオリビアと敵兵の討ち合いは続き、五分の実力かと思われたのだが、討ち合う内にオリビアの斬撃が速くなり、徐々にオリビアの斬撃が敵兵の身体をとらえだした。
「何をしているギース! もたもたしていると妹を殺すぞ!」
「ウギャー」
男爵に脅されたギースと呼ばれた敵兵は、異様な叫び声をあげると同時に急に強くなり、徐々に斬撃が早く強くなっていたオリビアを圧倒した。
「助けてあげたいね」
ルイは男爵がギースと言う敵兵の妹を人質にして、無理矢理戦わせているのを知り、助けてあげたいと思い、手分けして戦わないかと言う思いを、一言に中に込めてダイに話しかけた。
その言葉に意味を正確に理解したダイは、周りに魔族の刺客の気配がないことを確認したうえで、言葉をかけることなく阿吽の呼吸で、ルイと互いに身体強化魔法と支援魔法と防御魔法を重ね掛けして、万が一に備えた上で盗賊団の中に斬りこんでいった。
ダイは男爵を生きたまま捕虜にして、ギースと呼ばれた男の妹が捕らえられている場所を聞き出そうとしたのだが、狂気に取りつかれて戦うギースは、徐々に熊に変じていった!
人間の時の技能を残したまま一部熊に変じたギースは、魔獣のような剛力を手に入れる事で、人間の時でも白金級の強さだったのが、白銀級の戦士に強化されたのだ!
ルイはこのままギースが狂気にとらわれたまま戦えば、身体が耐えられないほどの動きを強要され、心臓が耐えられなくなったり身体中の筋肉が切れたりして、ギースが死んでしまうと判断した。
オリビアはダイとの修練がよかったのか、白銀級と思われる狂戦士となったギースと互角に討ち合っており、何の心配もなかったが、他の者が手を出せば不覚を取ることもあるし、ギースが妹を人質にされているのを聞いてからは、ギースへの攻撃を止めて守りに徹していた。
それを見てとったルイは、安心して眠りの魔法と麻痺の魔法をギースにかけるのであった。

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