大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第17話魔法剣士:レイラ

「姉さん、大丈夫かな?」
「ギルドが白銀級と言う人が二人もいるんだから、何も心配いらないですよ」
「でも、私たちほとんど戦えないよ」
「だいじょうぶ。あの人たちが狩った獲物を運べばいいの。案内と運搬の仕事をもらえた上に、武器と防具まで貸してもらえる機会なんて、もう二度とないわよ」
「うん」
ルイとダイは、老人や孤児に施しを与えていたプラチナブロンドの髪の冒険者:レイラに色々話を聞き、施しをする心算で案内役と運搬役を雇った。
どうせ七割もの税を取られるのだから、少々人間を雇って手間賃を払っても大して変わりはないと考えたのだ。
そんな少しの手間賃よりも、信用できるこの魔境にくわしい人間を雇う方がずっと大切だと考えたのだ。
レイラの実力も聞いておく必要があったので、色々と話を聞いたが、八人の運搬役老人と四人の案内役少女を雇う条件で、全てを教えてくれた。
レイラは珍しい両手剣の使い手で、しかもレベルの低いフィン王国の冒険者の中では比較的上級の銀級剣士だった。
しかも普通は千人に一人しかいない魔術士で、鉄級の回復魔法・攻撃魔法・支援魔法が使える貴重な冒険者だった。
だからこそ、税が高く身分差別が激しいフィン王国にあって、一人逆らうように老人や孤児に施しを行っても黙認されているのだ。
普通なら誘拐されて売られるはずの少女が、ギリギリ銅級冒険者資格が取れるまで生き残れたのも、国の役人や悪い冒険者の食い物にされずに済んでいるのも、レイラの後援があってこそだった。
単純にレイラ以上に強い冒険者はそれなりにいるが、魔法と剣の両方を使える者はいない。
難しい依頼を達成するためには、回復魔法・支援魔法・攻撃魔法が使えるレイラの助力がどうしても必要なので、レイラが自腹を切って老人や孤児に施すくらいの事は黙認されているのだ。
先頭はダイが進んでいるのだが、二番目に歩く案内役の少女など不要と思えるくらい、魔物が出ても一瞬で狩る状態だった。
荷物運びの老人が一人で取りに行っても安全な近さにいる魔物は、小石を使って一撃で倒して、老人に集めさせている。
銅級のウサギ型魔物:ホーンラビットや、同じく銅級のネズミ型魔物:ファングラットを、売り物になる毛皮を傷つけないように力を加減したうえで、小石を親指で弾いて飛礫(つぶて)として使い、必殺の武器に変えていた。
ダイの飛礫攻撃を見ていたルイも直ぐ真似をしたので、あっという間に倒される魔物は老人たちだけでは運べない量になった。
「ここで食べてしまおう」
食事を与える約束だったので、ルイとダイは小休止で狩ったばかりのファングラットを料理した。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品