「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第85話アバーテ地区

情けない話だが、検分役を務めて下さった御母堂のカミラ殿が領地に戻られたのは4日後だ。本当に申し訳ない、恥ずかしくて情けなくて、真面にカミラ殿の顔をみることができなかった!



そこからさらに4日後、満月期に入った時期を見計らい、ミヒャルケ侯爵家に味方する有力貴族のブロンテ伯爵家が、総勢6000兵の軍勢を率いてアバーテ地区に攻め込んで来た。だがブロンテ軍も満月期には狭まった山道しか侵攻路がなく、山道を護る砦を突破して領内に攻め込まねばならなかった。凶暴化した獣や魔獣の襲撃もあり、アバーテ地区に入るまでに1000兵の雑兵を失っていた。

だが兵力を増強したとは言え、1000兵弱の兵力しかないアバーテ城では、必死の籠城戦を展開するも、点在する村々を護る事まではできなかった。しかも大半の家臣が仕官して僅かな期間しかたたない新参者であり、敵対貴族家のスパイも多数紛れ込んでおり、ブロンテ軍の攻撃に合わせて裏切る可能性も高かった。

「イチロウ殿、援軍を出して頂けないか?」

「分かりました、ドローンを使ってアバーテ城を囲んでいる軍勢や、農村を襲っている雑兵を撃退いたしましょう」

「ありがたい、このままではアーデルハイトとバルバラは討ち死にしかねない」

危機感を抱いたカール殿は、ネットを駆使して即座に俺に援軍を依頼してきた。すでに初夜の儀式も無事に終え、サートウ家とローゼンミュラー家は親戚となっており、以前に締結していた軍事・交易条約での同盟条約もあり、興亡一体の関係となっていた。

まあだがなんだ、アバーテ城が日本から取り寄せた商品の交易拠点だとか、軍事的にローゼンミュラー家本領の防波堤だとか、ローゼンミュラー家がサートウ家の盾だとか言うのは全く関係なしに、妻となったべアトリクスの実家を護りたいと言う想いが沸々(ふつふつ)と湧いて来る。

こんな場合を想定して、Y組戦闘部隊を異世界に運んできたドローンを回収修理改造し、魔道具とカメラを搭載し遠隔操縦の操作距離と航続距離・滞空時間も延長してあった。サートウ領からドローンを出撃させ、アバーテ地区で縦横無尽に戦闘を行っても、余裕を持って帰還出来るように仕上げてあるのだ。

俺とビアンカを筆頭に、カミラ殿や獣人家事奴隷(メイド)隊のドローン操縦部隊が、同時に48機の戦闘用ドローンを駆使してアバーテ城や周辺集落に援軍を送り込んだ。もちろん予備機を用意しており、総機数192機のドローンが準備してある。

それもこれも組員の命をかえりみる事無く、死ぬと分かっているのに毎日毎日組員と武器をドローンに乗せて異世界に送り込んだY組の御蔭だ。Y組としても、K国やT国の強硬な意向には逆らえなかったのだろうが、余りにも組員の命を粗末にしすぎだ。

しかも送り込む組員が、すべて先祖代々の日本人ばかりで、在日や帰化日本人が1人もいないと分かったのには驚いた。あまりに露骨な遣り口に、Y組の下劣な正体が知れるとおもった。

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