「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第48話攻城の果てに

アバーテ卿は馬鹿では無かった、無血開城は予定通りなのだが、アバーテ卿は結構交渉上手だった。籠城する領民を言葉巧みに説得し、必ず降伏するがローゼンミュラー家に免税を守らせるためにも、一定の勢力を維持したアバーテ家を残す必要があると思わせた。

確かにその通りだろう、1度敵対した領民だ、惨(むご)い相手なら領民を全て奴隷にする者もいる。ローゼンミュラー家の高待遇は、領民に疑いを抱かせるほどのものだったようだ。

アバーテ卿は最終的に、家財を全て持ちだす権利と共に、城地を無血で開け渡すだけでなく、爵位を譲渡するから御金を寄越せと言いだした。

これに対して龍子姉さんとバルバラの対応策が一致し、金貨1000枚でバッハ聖教皇家・アショフ武王家に、正式な爵位譲渡手続きをすると言うものだった。

長く続いた異世界の戦国乱世は、色々な前例を創り出していた。武力で敵対者を完全に滅ぼし、爵位や騎士位が付属した土地を占領し、バッハ聖教皇家やアショフ武王家に献金をして承認してもらうと言う方法が1つ。もう1つは、御金を払って領主から爵位や騎士位が付属した土地を買い取る方法。そして1番多いのが、戦いの後で敗者が城に籠り、勝者がそれなりの御金を払い開城させると言う方法だ。

死兵となった者たちが籠城する城を攻撃するとなると、必ず勝てるとしても大損害を被(こうむ)ることになる。そうなれば、勝ったとしても兵力が減った所を他の敵に攻撃されてしまう可能性がある。それくらいなら、籠城している領主に金を払って出て行ってもらった方が御互いのためだ。更に籠城している将兵を家臣に迎えることができれば、爵位・土地・戦力を増やして勝利を得る事ができる。

負けた領主を配下に迎えることも含めて、大兵力で脅しをかけて互いに戦力を減らす事無く、勢力を拡大する事が理想とされているようだ。

「アバーテ卿、潔(いさぎよ)く城地と爵位を譲られた事、見事な判断であった」

「領主として民の平安を1番に考えたことでございます、勅使殿」

「教都での事は私に任されよ、決して悪いようにはしない」

「ありがとうございます、何分よしなに御願いいたします」

城に籠っていたアバーテ卿の一族は、建前上は勅使に保護された。同じく城に籠っていた領民も、城を出て自分たちの家に帰っていった。無人になった城には、ブリギッタが300人の兵を率いて入城した。残る300兵をべアトリクスが率い、アバーテ卿を監視しつつ城外で野営することになった。

5日後、今回の大勝利が大きかったのだろう、アーデルハイトたちがハナセダンジョン都市で新たに500兵を集めて戻って来た、いよいよ教都に向かう時が来たのだ!

俺はローゼンミュラー館から出ないけど。

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