「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第34話領地開発

俺との永続的な友好関係が、ローゼンミュラー家の維持発展には必要不可欠と決断したのだろう、今まで姿を隠し存在を秘密にしていた2代目当主が俺の前に現れた。もっとも俺の人間不信は続いているので、あくまでもパソコンの画面を通しての会談だった。

「御初に御目にかかる、ローゼンミュラー家の先代当主・カールだ」

「こちらこそ御初に御目にかかります、一朗です」

「うむ、儂は駆け引きや余分な話が嫌いなので、率直に話させてもらう」

「それは有り難いですね、私もその方が助かります」

「イチロウ殿は騎士の位を得られたが、実際には領地を持たれていない。そしてローゼンミュラー家は、イチロウ殿との交易を続けなければ軍資金や兵力が不足し、襲ってくる貴族家や騎士家から領地を守ることが出来ない」

何が言いたいのだろう?

ローゼンミュラー領の一部を割譲(かつじょう)するとでもいうのだろうか?

だが土地への執着が激しいのが、在地領主の性(さが)だったはずだ。そう簡単に領地を割譲するはずがない、そうなると言ってくる事は想像できる。

「ローゼンミュラー領の奥地を開発してみてはどうだ?」

「奥地はローゼンミュラー家で開発する心算(つもり)では無かったのですか?」

「確かに領地を拡大することは、初代領主である父からの悲願ではあったが、資金と労力を使ったものの人里を見つけることができなかった。仕方なく里山に砦を築こうとしたものの、獣や魔物を排除することができず、多くの死傷者を出して撤退するしかなかった」

「その悲願を諦めて、私に開発権を譲(ゆず)るのですね?」

「ああ、私も衰(おとろ)えた。残念だが現領主のクラウスに任せては、家を傾ける可能性が高い」

「私が敵に回ったら、ローゼンミュラー家はもっと不利になるとは考えないのですか?」

「イチロウ殿は故郷(こきょう)に帰ることを1番に考えているのだろう? 開発は帰れなかった場合の次善の策だ、我らはイチロウ殿が故国に帰れるように出来るだけ協力する。それでも帰れなかった場合は、ローゼンミュラー家を通行する際に1割の関税を確実にもらった方が互いのためだ。それにビアンカが随分懐(ずいぶんなつ)いていると聞いているから、嫁に貰ってもらえば血縁に成れるしな」

娘を政略結婚の道具のように扱うのは腹立たしいが、先の盗賊団の一件と言い、異世界は弱肉強食の戦国時代のようだ。下手な騎士家に嫁がせると、嫁いで直ぐに夫が戦死して未亡人なる可能性がある。最悪の場合は、実家と婚家が敵対して板挟(いたばさ)みになったり、実家に帰されバツイチになったりするのだろう。同じ危険を犯すなら、莫大な資金力を持つ俺に隣接地を開墾(かいこん)させた上で、正室として嫁がせた方が娘のためと思っているのかもしれない。

だが俺のことも少しは考えて欲しい、7歳児を嫁に迎えてどうしろと言うのだ!

「ビアンカは幼すぎるのではないですか? まあ開発をさせてもらえるのなら、できる限りの資金は出しましょう。万が一ローゼンミュラー領に敵が攻め込んできた場合は、援軍を送る盟約を結んでおきますし、一時的に撤退する場合も受け入れる盟約を結んでおきましょう」

「話が早くて助かるよ」

2代目と言う事だが、ローゼンミュラー家をずっと守て来ただけの漢(おとこ)なのだろう。だが画面に写る姿は病み衰えて、左右を3代目のクラウスと嫁? 後妻? に支えられている。クラウスもさっき馬鹿にされていたのに、何の反発もしない所を見ると、よほどカールを尊敬してるか恐れているのだろう。

さてどうしたものか?

今回手に入れた資金と前回手元に残った資金を合わせれば
金貨:17万6346枚
銀貨:12万7166枚
銅貨:     36枚

日本にある金貨:6万3330枚

ローゼンミュラー家を仲介して、新たに護衛として雇い入れた傭兵が200人加わった事で、俺の直属兵力は260兵となった。獣人家事奴隷(メイド)20人と合わせて毎日の食費が銀貨280枚。これに毎日の傭兵費用が、銀貨810枚必要になる。

だがこの費用を抑えることが、今後の事を考えると大切だと思う。傭兵たちを直臣として忠誠心を養わなければ、いつ寝首を掻かれるか分かったものではない。それにローゼンミュラー家に1割の通行料を支払うなら、傭兵の又貸し料を払うのは不公平だと思う。

傭兵たちには、急速築城訓練も兼ねて里山や奥山に砦を築く事を、アーデルハイトたちから事前に話してもらっている。それに手柄を立てた場合は、相続権のある従士に取り立てるとも話してもらっていたので、明日から築陣に投入することが可能だ。

問題があるとすれば、ローゼンミュラー家に仕える心算(つもり)だったのを、俺の家臣にすると言う事だ。だが俺も一応騎士となったのだから、それほど惨い契約違反にはならないだろう。俺の能力に関しては、60人の古参兵が尾鰭(おひれ)をつけて話してくれるだろうから大丈夫だとは思うが、念のために積極的に情報操作を仕掛ける事にしよう。

「カール殿、新たな条件を話し合いたいのだが、俺が全てを決める訳にはいかんのだ」

「イチロウ殿の後見人である、姉上に話を通すのですな」

「はい、私だけでは老練(ろうれん)なカール殿の罠(わな)に嵌(は)まる可能性がありますから」

「厳しことを言われるな、だが当然の事だろうな。だがまあなんだ、ローゼンミュラー家のためにも奥地に砦を築く事は急務だ、築城は明日から始めたいのだが構わないか?」

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