「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第8話急襲

「安心しろ、あれは我が国の魔道具だ、攻撃するんじゃない」

ローゼンミュラー騎士家の家族と兵士が空を見て騒いでいる。彼らにして見れば、空を飛ぶドローンは魔獣に見えるかもしれない。姉ちゃんとネットでつながっているという安心感はとても大きく、騎士や兵士を相手に堂々と話すことができた。

続けざまに何台ものドローンが飛んで来て、多くの荷物を置いて行った。今回は騎士と兵士の他に、荷物を運ぶための領民が動員されていた。日本でも山小屋に荷物を運ぶ歩荷(ぼっか)がいるが、この領地にもいるようで、背負子(しょいこ)を担いでいた。彼らは1人で100kg程度の荷物が運べるようで、10人が動員されていたので1トンの荷物を運ぶ事が出来た。

とにかく今は、危険な場所に危険な時間に集まっているから、獣に襲わっる可能性が高いそうだ。手早く配達された荷物の確認をして、背負子の中に詰め込んで行った。生モノや壊れモノは上にして、頑丈なモノを下にするように心がけた為、どうしても時間がかかってしまった。

「ガァゥ」

不意に山手の森から何者かが飛びだしてきた!

驚きの所為か、俺の身体はピクリとも動かないが、騎士と兵士たちは違うようだ。襲撃者を迎え討とうと、盾と槍を構えている。いや、運搬役として動員された領民ですら、とっさに安全な方に移動している。

尊大で横柄な大女、好きになれそうもない騎士様だが、逃げる事無く襲撃者に立ち向かい、領民を背中で庇(かば)っている。中世騎士道精神なのだろうが、偉そうにするだけあって勇敢(ゆうかん)だ。

襲撃者は四足(よつあし)のまま突進して来たが、騎士・アーデルハイトは防ごうと盾を構えて体当たりをした。だが襲撃者の勢いは強力で、アーデルハイトは5mほど吹っ飛ばされたが、倒れる事無く踏ん張って逆襲に剣を構えた。

一方襲撃者は多少勢いを減らされたものの、そのまま兵士に向かって突進を続けた。だが兵士も勇敢で、騎士ほどの装備ではないのに、盾を構えて体当たりを行った。

3人の兵士が体当たりを行った事で、襲撃者は止まってしまい、2本足で立って両腕で兵士を薙ぎ払おうとした。ようやく俺にも襲撃者の正体が分かったのだが、熊が犯人だった。立ち上がった熊は4mはあろう大きさで、兵士など一撃で殺されると思った。

だが周りの味方は狙われた兵士を見殺しにする事無く、最初にバルバラが魔術師の杖を構えて何か唱えたが、その途端(とたん)に熊の動きが少し遅くなったようだ。次にアーデルハイトが、2本足で立つ熊のアキレス腱を剣で切り付けた。

「グガァー」

熊は痛みと怒りの雄叫(おたけ)びとともに振り返り、アーデルハイトを攻撃しようとした。だがローゼンミュラー家の兵士は鍛えられているようで、後ろを向いた熊の足に槍を突き刺した。バルバラは続けて呪文を唱えているし、僧侶の服装の少女も呪文を唱えている。いつの間にか兵士が熊包囲陣を作っていて、熊の正面にいる者は盾を構えて身構え、左右後ろの者は執拗に足を攻撃している。

もう大丈夫かなと思った途端、熊が此方を向き眼と眼が合ってしまった!

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