王子様探偵と妖狸町中華とダンスィ

克全

第27話妖狸町中華5

急いで料理の注文もせずに表に出たのだが、何の問題もなかった。
英二君という若者が、無法者を一睨みで抑えている。
身長は低いががっちりとした体格だ。
喧嘩をすればそれなりに戦えるのだろう。

だが、相手は無法になれたならず者だ。
身長は一九〇センチメートルを超えている。
体重も一〇〇キロを超えている。
中途半端だが、格闘技を齧っているようだ。

きちっと話をつけておかないと、後で何をするか分からない。
ここは弁慶に脅させればいい。
ああいうう輩は、強い者には凄く弱い。
弁慶のような強面に脅されたら、簡単に尻尾を巻いて逃げるだろう。
まして剣鬼と剛龍までいるのだ。

「君。
どんなに腹が立っても、他のお客さんを押しのけてはいけないよ。
そんな事をすれば暴行罪になるよ。
お詫びに財布を出して、ここにいる人たちに奢りなさい。
それと住所と電話番号を教えなさい」

だがそんな心配は杞憂だったようだ。
無法者は英二君の言いなりだった。
大人しく財布を出して謝っている。
俺の眼が曇っていたようだ。

「あぁあぁ、全然入っていないじゃないか。
これじゃあお詫びに奢るなんてできないじゃないか。
大の男が情けないね。
仕方がないね。
丁寧に謝って帰りなさい」

「皆さん申し訳ありませんでした。
どうかお許しください」

無法者の様子がおかしい!
完全にビビっている。
顔が恐怖で歪み、身体全体が胴震いしている。
いくら何でもここまで恐れるのは異常だ。
子供がやくざ者に脅迫されているようだ。

「御待ちの皆様には申し訳ありませんが、一時的な繁盛は店を潰すんです。
百数十年、地元の皆さんに愛されて、長年続けてきたお店です。
腐れマス塵の影響で一度だけしか来ないお客さんを優先したら、店が潰れてしまいます。
何十年と御愛顧してくださったお客さんは、今まで閉めていた二階でもてなします。
一見のお客さんは一階でもてなさせて頂きます。
それが納得できないと言う方は、どうかお帰り下さい」

英二という若者は、行列しているお客さんに堂々と宣言した。
まさに威風堂々と言った態度だ。
武道を極めているようには見えないが、歴戦の兵士のようだ。
そんな英二の言葉に、行列していた人達も納得したようだ。
納得していなくても、黙るしかなかったのかもしれない。

問題は明日以降がどうなるかだ。
今日の事は大々的に拡散されるだろう。
それは防ぎようのない事だ。
それでも多くの人が押しかけてくるのか?
マス塵がこれ幸いと叩きに来るのか?

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