王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第75話再侵攻

「こりませんね」
「まあ仕方ないだろう」
俺はアリステラ王国から戻って直ぐに、王位に就くとドワフランド王国に使者を送った。
以前我が国を訪れたドワフランド王国使者が言っていたように、特に何の問題もなく俺の即位宣言を受け入れた。
同時に国境は接していないが、大陸に影響力を持つ大国に建国の意志を伝え、大使の派遣を願う使者を送った。もちろんアリステラ王国にも送ったが、これは猿芝居と言うモノだ。
アリステラ王国はゴールウェイ王国の建国宣言は無視するが、ゴールウェイ王国の内情を探るため、大使を派遣すると言う事前協議をしていた。
そのように状況が進んでいるので、領地を奪われたネッツェ王国とイマーン王国は、まだ俺と戦争状態なので、建国式典を行わせないように、協力して攻め込んできたのだ。
「サクサクと無力化してくるよ」
「御供させていただきます」
本当は一人で戦う方が気楽なのだが、近習衆としては、はいそうですかと言えないだろう。
遅れながらも必死でついてこようとする。
厳しい戦いどころか、赤子の手をひねるような、簡単な戦いなので、近習衆の速さに併せてやる。
「麻痺、睡眠、麻痺、睡眠、麻痺、睡眠」
敵陣の要所に魔法を放つ。
人質にして身代金をとれそうな貴族士族を、無傷で確保するためだ。
同時に血統と適正に優れ、訓練に長い年月をかけた軍馬を確保した。
既に数度の戦争で、十万頭を超える優秀な騎士用軍馬を確保しているが、沢山いればいるほど国が豊かになる。
駄馬や輓馬も十万頭を超える頭数を捕獲しているから、奴隷達は大喜びだ。
彼らにしたら、二パーセント前後のアルコール度数になる馬乳酒の母体になるのだから、数は多ければ多いほどいいのだろう。
もちろん冒険者兵士も大喜びしている。
世話は大変だが、騎士を目指すのなら、騎士用軍馬は必要不可欠だ。
フルアーマープレートを装備しての馬術を覚えなければいけないし、軽装備での山岳馬術を覚える必要もある。
高価な軍馬だが、一頭いればいいと言うわけではない。
戦争になれば、どれほど貴重な軍馬と言っても、使い潰す必要がある。
替え馬も必要だし、従騎士用の馬も必要だ。
部隊を率いるのなら、派遣場所によって馬車を引く輓馬も必要ならば、馬に直接荷物を載せて運ばせる駄馬も必要になって来る。
騎士に成った冒険者兵士達も、それぞれが率いる奴隷警備兵や奴隷守備兵を訓練し、いずれは軽騎馬兵や重騎馬兵として働けるようにしている。
奴隷を馬に乗せて騎馬兵として活用するのは、ゴールウェイ王国が世界初になるだろう。
「麻痺、睡眠。彼らを確保しろ」
「は!」
必死でついて来る近習衆に、俺が無力化した兵士の確保を命じる。
何度も戦う内に、ネッツェ王国の奴隷や貧民の間には、我が国が天国のように豊かで平和だと言う噂が広まっていた。
天国などと言うのは大ウソなのだが、少なくともネッツェ王国よりは暮らし易いのは確かだ。
だから機会があれば我が国に逃げてくるのだが、中には密偵も混じっているし、隙を見て俺の首をとろうとする者もいる。
直接俺の首を狙ってくれたら問題はないのだが、弱い領民を狙われると困るので、一旦麻痺や睡眠の魔法で無力化し、色々と尋問した上で受け入れることになったのだ。
「ここは頼んだぞ」
「は、御任せ下さい」
俺はラボック城の事は城代に任せて、次の戦場に向かう事にした。

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