王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第56話出稼ぎ

忙しい時間をやりくりして、御用商人のアヒムから色々な情報を聞かせてもらっている。
「殿下、ネッツェ王国がイマーン王国への侵攻を企てています」
「殿下は止めろ。もうネッツェ王国の陪臣士爵だ。だがその情報は気になるな。情報源はなんだ」
「ネッツェ王国が兵糧になる穀物や塩を買い集めています」
「なるほど。今更籠城用の兵糧は不要だし、余剰食糧の多いネッツェ王国が食料を集めるとなると、軍事行動以外には考えられないな」
「はい。それにイマーン王国の盗賊団が未だに活発に動いていますので、この時期に他の国と戦争を始めるとは思えません」
「分かった。近々ネッツェ王国の反攻があると想定して、今後の戦略を組むとしよう」
俺は再び補給の為に、アリステラ王国に入った。
あまりに急速に奴隷が増えたので、予備の食糧や飼料を大量に確保しておきたかったのだ。
だが前回の密入国を父王陛下や重臣方に咎められたので、ネッツェ王国には内緒だが、アリステラ王国には入国の報告を入れた。
父王陛下や重臣方も強かで、今回新たに魔境で手に入れた魔獣・魔蟲・腐葉土・落ち葉・魔樹はもちろん、前回の密入国で手に入れた素材の税金も徴収されてしまった。
まあ今回はダブルスパイと言う面もあるので、外国の貴族としてではなく、アリステラ王国貴族としての税率を適用してくれた。
だが軍事行動中という事なら、免税にしてくれてもよかったのに。
父王陛下や重臣方には密入国を報告してあるので、今回は王都に寄って集めた情報を父王陛下に直接報告した。
まあ母上様に会いたかったというのが本心だ。
母上様と一晩語り明かし、爺が集めてくれていた、王都魔境や王都ダンジョンの素材も手に入れた。
アゼス魔境の素材で魔法袋が満杯だったので、爺の魔法袋の中身と入れ替える状態だった。
アゼス魔境の素材は、王都のオークションやネッツェ王国のオークションに出品してもらうことにした。
そして急いでダラム城に戻ることにした。
奴隷達の願いを受けて、ダラム城周辺の村々を襲い、正規兵を殺し村人を奴隷にした。
哀しい話だが、イマーン王国の村人のままだと、盗賊に仕立て上げられ略奪の途中で死ぬか、餓死するしか選択の余地がない。
それなら俺が無理矢理奴隷にして、死の恐怖から解放してやった方がいい。
それにどのみち時間が経てば、イマーン王国の命令で俺の城に攻め寄せてくる。
そうなれば結局俺に麻痺の魔法をかけられ捕虜になるのだ。
だから積極的に奴隷狩りを行った。
その結果、冒険者兵士二千兵に対して、戦争奴隷が一万人となってしまった。
ダラム城には、冒険者兵士と一万の戦争奴隷が居住している。
一つの城と言うか都市に一万人以上の住人が住むなど、ネッツェ王国では王都や首長家の領都くらいなのだ。
流石に居住環境が悪くなってきているし、自給自足体制を築くのにも問題が出てくる。
そこでイマーン王国内に新たにアルタス城を築くことにしたが、その城も自給自足体制を目標としているので、その為に必要な素材を、アリステラ王国の魔境で調達したのだ。

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