王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第53話反撃2

「かかれ!」
イマーン王国の隊長の命令で、年老いた老人が城門に攻めかかって来る。
御爺さんと御婆さんばかりで、とても軍勢とは言えない。
棄民と言うべきか、それとも爺捨て姥捨てと言うべきか。
あまりの圧政暴政愚政に、心の底から怒りがこみあげてくる。
「殿様。敵の隊長や兵士の側には、もう老人は残っていないようです」
「そうだな」
パトリックの言う通り、敵の正規兵の周りには、老人たちの家族がいるだけだ。
嗜虐の性癖を満たすために、正規兵が無理矢理家族を連れてきたのか?
それとも家族が最後のお別れをしたくて、望んで付いてきたのか?
俺にはどちらか分からない。
分からないが、絶対に隊長や正規兵を許せない。
「麻痺」
怒りに任せて、金級の魔獣を千頭同時に麻痺させることが出来る、金級麻痺魔法を放った。
当然だが、全員簡単に麻痺した。
千人を超え二千人近い人数だったが、誰一人抵抗できなかった。
こんな役目を与えられる隊長と兵士だ。
イマーン王国軍の中でも最低評価の者達なのだろう。
しかも大多数は、御爺さんや御婆さんとの別れを惜しむ村人だ。
標準の倍近い人数だろうと、効果を現したのだろう。
問題は彼らをどう処遇するかだが、村人はいつも通り戦争奴隷だ。
ネッツェ王国に略奪に入っていた者は、戦争犯罪奴隷とする。
参加していなかった者は、普通の戦争奴隷とする。
問題はイマーン王国軍の隊長と正規兵だ。
一応俺は士爵で一軍の将軍扱いになっているから、戦争奴隷の処遇は自由に決まることが出来る。
「悩んでおられるのですか?」
「ああ、少しでも労働力として利用した方がいいのか、それとも見せしめの為に処刑にすべきなのか」
「奴隷達に決めさせてはいかがですか」
「何故だ?」
「殿が売り払わない限り、元村人の奴隷と元正規兵の奴隷が共に暮らすことになります」
「なるほど。嬲り者にされた女やその家族が、加害者の兵士と一緒に暮らすことになるのは問題だな」
「はい。配置する城を別にしたり、外城の丸を別にしたりする方法もありますが、被害者の村人は心休まらないでしょう」
「提案とすれば、奴隷として別の場所で働かせる案と、処刑する案。それに戦争犯罪者奴隷として売り払う案の三つでいいか?」
「さようですね。その三つが妥当な案だと思われます」
「だがパトリックは、村人が処刑を選ぶと思っているのだろう」
「はい。ですがそれは殿も同じでございましょう」
「ああ」
手の空いている奴隷を使い、麻痺させたイマーン王国軍を確保した。
隊長と正規兵は手足を厳重に縛り、星形要塞四ノ丸の一角に閉じ込めた。
老人を含む村人兵は、十人ずつ繋げて手を縛り、麻痺を解除して自分の足で外城に入らせた。

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