王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第43話偵察2

「殿様、兵士はいないようです」
斥候の一人が報告に戻ってきた。
「おかしいな。ネッツェ王国からの報告では、どれほど小さな村にも、指導役の兵士が派遣されているという事だが」
俺も魔法で確認しているが、近習衆以外には攻撃魔法しか使えないと伝えているので、真剣に報告を聞き、疑問を聞く。
「私もその話は聞いていますが、ここは貧し過ぎて派遣されなかったのではありませんか?」
「それはないだろう」
「何故でございますか?」
「それはな、兵士に支給する食糧を減らすためだ」
「ひでぇ! 飢饉に苦しむ村に高い税をかけてわずかな収穫を奪い取った上に、兵士を送り込んで、本来国が支給するはずの兵食まで村に負担させているのですか!」
「そう言う事だろうな。だが国も言い訳を考えている」
「こんなひどい事をしておいて、どんな言い訳があるというのですか?」
「どれほど百姓仕事に頑張っても、今の状態では村人の大半が飢え死にを避けられない」
「はい。それは確かにそうだと思います」
「いくつか方法があるが、飢饉のイマーン王国に留まっていては、村人全員が生き残る方法はない」
「そうなのですか?」
「ああ、奴隷になるにしても、今のイマーン王国では奴隷に与える食糧すらない」
「それはそうですね。奴隷に与える食糧はないでしょうね」
「だから奴隷になるにしても、食糧の豊富なネッツェ王国に売られていくことになるのだが、誰だって自分が奴隷に売られるのは嫌だ。いや、普通に愛情があるのなら、家族を奴隷に売るのは苦渋の選択だ」
「はい。その通りだと思います」
「だがそこに、国が直々に兵士を派遣して、他国への略奪をそそのかしたらどうだ」
「それが、今回の五月雨式の侵攻だというのですね」
「ああ、だからどのような寒村にも、兵士がいるはずなのだ。ここに兵士がいない理由を知りたいな」
「時間をかけて探りますか? それとも直接尋問されますか?」
「そうだな。探るのならこれから幾らでも色んな手を使えるが、尋問するとなると、その後で皆殺しにするか捕虜にしなくてはいけなくなる」
「殿様は、皆殺しは好みではないのでしたね?」
「お前もであろう」
「まあ、殿様も私達も、平和で豊かなアリステラ王国育ちですから、これほど困っている者達を、皆殺しにするのは躊躇いますね」
「そうであろう。だから出来れば分からないように調べたいのだ」
「分かりました。もう一度丁寧に調べてみます」
「頼んだぞ」
この後も、もう一人の斥候や斥候の経験もある二人の射手も同じ話をし、丁寧に村とその周囲を探ってもらった。

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