王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第37話建国準備

「国を建ててもらう」
「はぁ?!」
「新たな国を興せと言っている」
「今王太子殿下の派閥が私を警戒していると申されたばかりですが、それなのに新たな国を興せと申されるのですか」
「アレクサンダーには、国内に対する欲がない。王位を狙っていない証拠を示してもらいたい」
「分かりました。しかし具体的にどうしろというのですか?」
「ネッツェ王国の内紛に介入し、領地を斬り取れ」
「ですが末席とは言え、まがりなりにも王位継承権を持つ王子が他国の紛争に介入するなど、周辺国から批判を受けるのではありませんか」
「受けるだろうな」
「それは、内紛に巻き込まれて私が死ぬような事があっても、王家王国は報復介入などせず、騎士家のアーサーが死んだだけとするという事ですか」
「そうだ。そしてアレクサンダー王子は病で急死したことになる」
「それが、王国内の派閥争いを治める方法だと言われるのですか」
「王子の間や親族の間にこれ以上亀裂を呼ばず、刺客が放たれるのを防ぐためにはそうせねばならん」
「そもそもそれは、父王陛下が見境なく後宮に美女を集め、子供を作りまくっているから起こったことですよね」
「余の性癖故どうにもならん」
「性癖。どうにもならないと言われては困ります。陛下がなされた事の責任は、陛下自身が取って下さい」
「そうしたいのはやまやまだが、もはやどうにもならん。養嗣子として貴族家に送り込むことで、各派閥間の調停調節をしていたが、それをアレクサンダーが破壊してしまったからな」
「私の所為にするのですか?」
「御前には余の我儘にしか見えなかったようだが、あれしか内紛を起こさない方法がなかったのだ。それを王家が有利な形で領地没収となってしまい、派閥争いに加わっていた貴族が余計に恨まれてしまったのだ」
「そもそも、後宮に美姫を送った貴族家に有利な政策をしたから、他の貴族家を離反させることになったのではありませんか。やはりすべて父王陛下の所為ではありませんか。それで私が命を狙われて、国外に追放になるなど納得できません」
「馬鹿な事を言う」
「何が馬鹿な事なのですか」
「御前が理想を掲げて動かねば、目立つこともなく狙われることもなかったのだ。自分の理想を掲げて動くという事は、それなりの反発を受けることを理解していなかったのか?」
「それは逆恨みと言うモノでしょう」
「人とは愚かな者だ。悪事をしていて、それを諫められたり咎められたりしても、自分の非を認めず相手を恨むのが普通なのだ」
「私が、人を知らないと申されるのですか」
「そうだ。人間を相手にする以上、理想的な反応など期待する方が愚かなのだ」
「それは、父王陛下が相手でもですか」
「そうだ。余がアレクサンダーが望む通りの反応をすると期待するな」
「分かりました。父王陛下がそう申されるのでしたら、自分で国を興して見せましょう」

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