王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第32話アゼス魔境探査4

いや、大丈夫だ。
火炎魔法や雷撃魔法なら、目に見えてレベル差が分かるが、俺が使う無詠唱の即死魔法や麻痺魔法だと、見た目には何の差もない。
あまりに効果が強いと、多少疑問に思うかもしれないが、相性だと言い張れば、主君である俺に対して強く言い張ることは出来ないだろう。
だが白金級だと自称している以上、金剛石級や玉鋼級の魔法を使うと流石にばれてしまうだろう。
一つ上の白銀級の魔法を連発するくらいにしておこう。
「即死」
「即死」
「即死」
「即死」
駄目だ。
二頭しか殺せなかった。
残り十三頭が此方に殺到する。
ガァォーオ!
俺が前に出る!
俺のハードレザーアーマーは、王都魔境のボス、キングベアの皮を鞣して創られた逸品で、相手が玉鋼級だとしてもある程度は防いでくれる。
「「「「「殿下」」」」」
「足手纏いだ! 守りを固めてろ!」
家臣を無駄死にさせる訳に行かない。
「麻痺」
「睡眠」
「即死」
「麻痺」
「睡眠」
先頭のビッグウルフが麻痺してくれて、次に続いていたビッグウルフは眠ってくれた。
御蔭で五度魔法を唱える事が出来た。
即死魔法でもう一頭死んでくれたので、生きているのは残り十二頭。
四頭が麻痺して、五頭が眠ってくれたから、襲ってくるのは三頭。
先頭をきって襲い掛かってくる一頭に、不意を突いて魔法袋から長巻を取り出して一閃する。
魔獣であろうと白金級ならかなり知恵がある。
白銀級に進化しているなら猶更だ。
最初に俺が持っていた、大刀の長さの間合いで考えていたのだろう。
ビッグウルフは俺の攻撃を避けられなかった。
爺から譲り受けた長巻は、刃金に爺達が斃した金剛石級ボス・リントヴルムの鱗が使われており、例え相手が玉鋼級の防御力を持っていたとしても、防ぐことも耐えることも出来ないはずだ。
白銀級や玉鋼級に進化していたとしても、ウルフ系の魔獣は防御力よりも瞬発力と攻撃力に優れる種族だ。
爺に鍛え抜かれた俺の槍刀術の技に、リントヴルム鱗長巻の切れ味が加われば、ビッグウルフの首を一振りで斬り飛ばすことが出来た。
だがこの攻防の間に、二頭目のビッグウルフが急速に間合いを詰めてきた。
刀身を振り回して攻撃する時間はない。
石突の先端を利用して、ビッグウルフの心臓を刺突する。
二頭目のビッグウルフも知恵があるのが災いしたのだろう。
長巻の刃金は危険だが、石突はそれほど脅威ではないと考え、一気に俺の喉笛を狙って跳躍攻撃をかけてきたのだろうが、爺が譲ってくれた長巻は石突にもとてつもないモノが取り付けられている。
刺突攻撃を考慮した石突には、リントヴルムの骨を丁寧に時間をかけて研磨したモノが装備されているのだ。
流石に牙や爪の部分は貴重で高価過ぎるので、父王陛下が国宝として秘蔵されており、爺達の手元に残らなかったそうだ。
三頭目がもう間近だ!


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