公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全

第38話

私が真摯に分かりやすく話をすれば、ルークは理解してくれます。
ほんの少しずれている所はありますが、人を殺したりしないので大丈夫です。
でんでん虫や豚や蛙に変化させてしまう事もありますが、余程の悪人でなければ一週間程度で元の人間に戻します。
だから大丈夫です。
そう思っていました
思っていたのですが、私への愛情が強すぎるのでしょう。
脅かすと言う点に力を入れてしまったようです。

各国に追い返した使者に、強烈な呪いをかけていたようです。
王への報告が一字一句でも間違っていると、疣臭豚に変化する呪いをかけていたのです。
相手が王であろうと担当重臣であろうと、関係なしに目の前で疣臭豚に変化してしまったそうです。
しかもその強烈な臭気は、嗅いだ者を失神させてしまったそうです。
怖気つくほどの醜い見た目と、失神するほど強烈な臭気を伴う化物にされた家臣。
自分もそんな化物に変化させられると思った王。

各国の王は素早い対応をしました。
誰でもいいから、直ぐに派遣できる王族を我が国に送ってきました。
兎にも角にも謝ろうとしました。
本当は悪いなんて思っていないのでしょうが、表面だけでも謝らないと、人間ではいられなくなると思ったのでしょう。
人間でなくなったら、王でもいられなくなりますから。

送られて来た王族は、後日正式な全権王族がやって来るので、その者と会談して欲しいと城下で喚きました。
その人数は日に日に増えていき、とても煩かったです。
直ぐにルークは音を遮断する魔法を城全体にかけました。
静かにはなりましたが、毎日声が潰れるまで大声で懇願する使者が可哀想です。

「ルーク。
相手は王族ですし、少し会ってあげましょう。
そして正式な使者との会談を約束してあげましょう。
不可侵条約を結べれば、戦争で殺される人も、奴隷にされる人もいなくなります。
だからね、会ってあげましょう」

「それは大切な事なの?」

「ええ、とても大切な事なのよ。
それにお姉ちゃんの願いで、夢でもあるの。
ルークはいい子だから、お姉ちゃんの夢を叶えてくれるわね?」

「うん。
僕いい子だから、お姉ちゃんの夢をかなえてあげる。
ふかしんじょうやくて言うのを結んで、せんそうとどれいをなくせばいいんだよね?
僕にまかせてよ!」

「ええ、ありがとう。
ルークが約束してくれたら安心だわ」

ルークごめんなさい。
確かに私の願いであり夢だけど、全然ルークのためにはならないよね。
ルークが本当に欲しいのは、私の愛情だよね。
私の愛情を独占したいのよね。
だけど私は、ルークの愛情だけでは満足できないの。

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