公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全

第37話

私とルークの会話がこのような結果を産むなんて、全く想像もしていませんでした。
ローガン陛下が各国の圧力に抗する為に、少々大袈裟に伝えたのかもしれません。
それとも私が、各国王族が感じているルークへの恐怖感を、あまりにも過小評価していたのでしょうか?
どちらにしても、ローガン陛下が圧力をかけてきていた王族に、ルークが自分とオリビアにむりやり婚姻を勧める身勝手な王族に対して
「でんでん虫にかえてやる」
と怒り狂っていたと伝えたのです。

各国の王族と重臣は恐怖から恐慌をきたしたのでしょう。
周章狼狽してローガン陛下に使者を送ったそうです。
ですがローガン陛下は心労で倒れてしまっていて、とても使者に会えない状態だったそうです。
恐らく仮病でしょう。
仮病であって欲しいです。
そうでなければ、私とルークの話を聞いただけで倒れたことになります。
それではあまりに悲し過ぎます。

結果として、各国の使者は我が国にやってきました。
城下で喚き立てる使者がそう言っています。
城下の商人から聞いた、私やルークに会える方法を素直にやっているのでしょう。
しかし、余りに煩いです。
ルークが怒りださないか心配です。

「ルーク、彼らに帰るように伝いたいのだけれど、城下に送ってくれる?」

「えぇぇぇぇ!
駄目だよ。
あんな連中にお姉ちゃんを会わせるのは嫌だよ!」

「でもね、お姉ちゃんはルークがこれ以上嫌われるのが嫌なの。
ルークが怖がられるのも嫌なの。
ちゃんと話して分かってもらいたいの。
だからお願い」

「でもお姉ちゃん。
あいつら下っ端だよね。
あんな奴と約束しても、王は簡単に約束を破るよ。
王が約束していても、王の言う事を聞かない王太子や家臣もいるよ。
家臣の約束なんて絶対守らないよ」

ルークの言う事ももっともです。
確かに権力者は平気で約束を破ります。
ルークと私の穏やかな生活のためには、少し強く脅かしておいた方がいいのかもしれません。
だったらどうすればいいでしょう?
少なくとも全権を移譲された王族と直接話し合うべきですね。

「だったらルーク、使者に条件を伝えましょう。
私とルークが直接会うのは、全権を委任された王族以上である事。
ちゃんと話し合う事ができたら、ルークは不当に他国の王族をでんでん虫に変えない。
そう約束するのです。
だったら安心でしょう?
それに向こうはルークの事を怖がっているのですから、優しくしてあげないといけないのですよ」

「嫌だよ、お姉ちゃん。
さっきも言ったけど、あいつらは絶対に約束を守らないよ。
だから放っておこうよ」

「そうね、約束を守らない人が多いわね。
だからね、呼び出して少しだけ脅かすのよ。
これ以上怖がられたり嫌われたりしない程度に、少しだけ脅すの。
それで二度と煩く言ってこないようにするの。
どうかな?」



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