公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全

第11話第三者視点

ルークはただただオリビアを見つめていた。
そこに盗賊の襲撃があった。
ルークは凛々しく勇ましく指揮するオリビアを見つめていた。
でも我慢できなくなった。
お姉ちゃんに抱擁してもらいたくてたまらなくなった。

「お姉ちゃんただいま。
お土産げ持ってきたよ。
着て見せて。
早く着てみせて!」

「お帰りなさい、ルーク。
どこもケガしなかった?
痛いところはない?
誰も殺したりしていないでしょうね?
悪戯もしなかった?」

「誰も殺していないよ。
悪戯はしたけど、それは殺されそうになったからだよ。
ルークは悪くないよ。
陛下もルークが悪くないと言ってたよ。
だからルークは悪くないよ」

「まあ!
殺されそうになったの⁈
大丈夫?
どこのケガしていない?
痛いとこはないの?」

「大丈夫だよ。
どこも痛くないよ。
それより早く着てみてよ」

「今は駄目よ。
悪い山賊がいつ襲って来るか分からないから、着替えることはできないのよ」

「えぇぇぇぇ。
そんなの嫌だよ。
だったらルークが山賊を皆殺しにしたらいいの?
山賊を皆殺しにしたら着替えてくれる?」

「山賊でも、殺したら駄目なのよ。
強く正しい子は、殺さずに捕まえるの。
そうしたら、報奨金と言う御褒美がもらえるのよ。
ルークは強く正しいよね。
生きたまま捕まえられる?」

「大丈夫。
みんな捕まえたら、ルークは強く正しいの?
強く正しかったら、お姉ちゃん着替えてくれるの?」

「ええ、でも着替えるのは砦に着いてからね。
馬車の中は狭いから、広いところで着替えるわね」

「えぇぇぇぇ。
じゃあ外で着替えようよ」

「外では誰が見てるか分からないから、恥ずかしいのよ。
ルークも人の前で着替えては駄目よ。
分かってる?」

「でも、お姉ちゃんは侍女の前で着替えてるよ。
侍女はいいの?」

「ずっと側に仕えてくれている侍女はいいのよ。
侍女なら恥ずかしくないの。
でもね、男の人に見られるのは恥ずかしいのよ。
いい子だから、分かってね」

「分かった。
ルークはいい子だから分かるよ。
でもね、だったら、先にいい子いい子して欲しいな」

ルークは久しぶりにオリビアに思いっきり甘えた。
オリビアに説得され、大魔境に行ったが、その間寂しくて仕方がなかったのだ。
最初に力いっぱい抱きしめてもらい、次に優しく頭をなでてもらった。
狭い馬車の中だったが、膝枕をしてもらって安らかに眠った。





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