女将軍 井伊直虎

克全

第112話中国地方の攻防23

「では備後をどうなされますか」

「杉原や三吉・山内は毛利に味方して籠城していますが、幕府に味方して毛利に反旗を翻した国衆・地侍は奉公衆として直臣扱いとしましょう」

「古志豊長や和智・宮などを直臣とするのは当然ですが、不利になってから寝返った者達は、母上様が仰られたように何時また毛利に寝返るか分かりませんね」

「ですから毛利に忠誠を尽した者達を、所領を減じて本拠に残すか、検地のうえで貫高を保証して領地替えするのか思案のしどころです」

「敷名元範殿には、毛利元範を名乗らせ備後・旗返城から吉田郡山城に移しましょう」

「毛利と一党を全員領地替えするのですね」

「そうです、周防国と長門国に移します」

「安芸国と備後国を直元に預けるのですね」

「そう決断しました」

「備後国から安芸国に跨る小早川家はどうされるのですか」

「以前から決めていたように、繁平殿に返り咲いて頂きます」

「家臣は幕府から送り込むのですね」

「実質傀儡ではありますが、井伊家から正室を嫁がせましょう」

「では安芸の差配に入りますが、武田家を裏切った旧臣達はどうなされますか」

「安芸国から追い出します、毛利家を選んだのですから当然です」

「吉川家はどうしますか」

「当然追いだしますが、内応を約束していた市川元教には、事があれば反乱を起こしてもらいます」

「その時には吉川の家名と領地を元教に与えるのですね」

「はい」

「石見の吉川家はどうされるのですか」

「先程も申しましたが、石見は益田と吉見以外の毛利方は取り潰します、後々の事は毛利家が責任を持つべき事です」

「分かりました、では井上家はどうなされますか」

「市川元教と同じです、事が起きた場合には反乱を越してもらいます、条件は井上家を幕府直臣に取り立てて安芸の城地返還です」

「さて最後に能島の村上水軍をどうなさる御心算ですか」

「約定通り、幕府水軍に加えます」

「来島村上や因島村上はどうされるのですか」

「幕府水軍に加わればよし、毛利や河野に味方するなら後々滅ぼします」

「村上水軍を割ることが出来れば、毛利水軍に加わった大内水軍衆を各個に調略する事も出来るでしょう」

「母上様、長門国の須佐湊と周防国の三田尻湊・楊井湊を幕府の直轄領とすることはできませんか」

「湊を押さえて水軍衆を味方にする足掛かりとするのですね」

「その為に必要なら、安芸高田郡4万3000石と郡山吉田城をを毛利家に残しても構わないのではありませんか」

「敷名元範殿の話はなかったことにするのですね」

「はい、その代わり今度の一連の合戦で山内輝弘に味方して滅ぼされた、国衆・地侍の城地は幕府の直轄領とします」

「分かりました、その条件で御隠居様に交渉して頂きましょう」

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