女将軍 井伊直虎

克全

第105話中国地方の攻防17

1570年『近江・観音寺城』今川義直・直虎

「まず今生き残っている小早川家の嫡流は小早川繁平殿ですが、寺に押し込められ軟禁状態です」

「確か目が不自由なのでしたね」

「それなのですが、寺に入り込んだ手の者の話では、元就や隆景が助命を条件に潰したそうです」

「なんですって、それは余りに酷すぎます、反対して助けようとする者はいなかったのですか」

「一門の船木常平や家臣の田坂義詮は、命懸けで助けようとしたそうですが、常平は難癖をつけられて自害させられていますし、義詮に至っては謀殺されています」

「他に助けようとした者はいなかったのですか」

「名も知れぬ忠臣はいたかもしれません、ですが一門で家老の乃美家も納得した上でのことだったそうです。それに許しがたいのは、実際に手を下したのは美隆興だったようです」

「本当に許しがたい、根絶やしにせねばなりませんね」

「はい、絶対に許す訳には参りません。しかもそれだけではありません、大内義隆も元就も最初から小早川家を乗っ取る心算だったようです」

「どう言う事でございますか」

「大内義隆は尼子に大敗した折に、殿を小早川正平に命じて死ぬように仕向けたようです」

「討ち死にまでして大内義隆を守ったのに、嫡男の目を潰され家を乗っ取られたのですか」

「はい、しかも小早川家を守ろうとした竹原小早川家の興景を毒殺して、まず竹原小早川家を乗っ取ったそうです」

「我慢なりません、繁平を早急に助け出す事は可能ですか」

「軍勢を進めて合戦状態にして、寺の見張りが手薄になるように致しましょう」

「分かりました、直ぐさま御隠居様に軍を進めてもらいましょう」

「もう少しお待ちください、まだ手配りせねばならない事があります」

「他にも調略を仕掛けるのですか」


「沼田小早川家」
小早川煕平-小早川敬平-小早川扶平-小早川興平-小早川正平-小早川繁平
-小早川義氏
-船木常平-?
-平賀隆保
-乃美是景
-生口元清

「竹原小早川家」
小早川弘景-小早川弘平-小早川興景-小早川隆景(毛利元就次男を養子)


「乃美家」
小早川弘平-乃美隆興-乃美景興-
-乃実賢勝(浦元安の養子・浦賢勝)
-乃美宗勝(浦宗勝)
-乃実盛勝
-乃実景継
-乃実景勝
-乃実景嘉
-乃実景尚
-乃美元信
-大方(毛利元就継室)

乃美家は、沼田小早川家当主・小早川敬平の弟・小早川是景を祖とする小早川庶流・小早川弘平の子として誕生。隆興の代になって領地としていた乃美郷(現・広島県東広島市)の地名を取って、乃美氏を称した。はじめ公平と名乗るが、大内義隆から一字を賜るなどして、隆興と改めた。乃美宗勝は従弟(宗勝の父・賢勝は同じ小早川庶流の浦家に養子に入ったが、元は隆興の父・弘平の弟である)。

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