女将軍 井伊直虎

克全

第103話中国地方の攻防15

1570年『近江・観音寺城』今川義直・直虎

「毛利の一門衆ですか、いったい誰を調略されるのです」

「敷名元範です」

「確か、元就と後継争いをして殺された弟の遺児でしたね」

「はい、実際に謀叛に成功しなくても構わないのです、疑った元就や家臣団が粛清してくれればいいのです」

「毛利家内部で粛清が繰り返されれば、辟易して離反する国衆・地侍が増えるでしょうが、敷名元範は今どこにいるのです」

「旗返城主として備後の最前線にいるようです」

「最悪前線から追いやられるだけでも、戦力を削ることが出来るのですね」

「そうです、次に元就から邪険にされている側室の子供達にも調略を仕掛けます」

「毛利家でも正室の子と側室の子は、厳格に区別されているのですね」

「それが武家と言うものですが、特に毛利家では先に言った相合元綱の謀反が堪えているのでしょう。それに四男の毛利元清は、先に備中への援軍で大敗していますから、自分の将来を悲観しているでしょう」

「父の元就存命中は命を取られる事はなくても、甥や兄達が全権を手に入れたら殺されるかもしれないと言う事ですか」

「殺されないまでも、城地を召し上げられ僧籍に入れられるかもしれません」

「確かに兄弟の確執は、命懸けでございますね、次は五男でございますか」

「はい、毛利元秋は出雲の月山富田城にいますから、尼子勝久に命じて調略を仕掛けられませ」

「条件はどういたしましょう」

「多治比猿掛城と1万石を与えると申されませ、元就の正統な後継者にすると為されませ」

「しかしそれでは敷名元範や毛利元清の条件が難しくはありませんか」

「敷名元範には、父・相合元綱が殺された毛利本家の後継者とすると伝えられませ」

「毛利本家ですか」

「そうです、今まで毛利元就・隆元・輝元と継いだのは正統ではない、毛利幸松丸は元就に暗殺されており、本当の後継者は相合元綱・敷名元範だと伝えるのです」

「成功すればいいし、失敗して粛清されることになっても、元就が本家を横領する為に主君である甥を謀殺した。そう言う疑いが、毛利家内部に広まると言う事ですか」

「そうです」

「毛利元清への条件はどうするのです」

「京に所領1万石を与えるから、出奔せよと使者を送るのです」

「元就の息子が最前線の持ち場を放棄して、敵である幕府に逃げ込むだけでも、毛利家中は崩壊するかもしれませんね。その為なら、1万石が5万石でも安いものでですね」

「そうですね、それに元清が我らの味方になれば、同腹の天野元政や才菊丸が粛清されるかもしれません」

「天野元政と言えば、先年家督争いのあった天野家に養嗣子に入ったのでしたか」

「そうです、万が一それを粛正したとなれば、取り潰される天野の一門衆は毛利を恨みましょう」

「なるほど、ですが本命がまだですね」

毛利元就
父親:毛利弘元
母親:福原夫人(福原広俊娘)
継母:杉大方(高橋氏)

兄弟:毛利興元
:相合元綱
:北就勝
:見付元氏(弘元庶子?)
:宮姫(武田某室)
:女(渋川義正室)
:相合大方(井上元光室)
:松姫(吉川元経室)
:竹姫(井原元師室)

子供:
正室:妙玖(吉川国経娘)
長女(夭折。高橋氏の人質。のち高橋氏により殺害)
毛利隆元
吉川元春
小早川隆景
五龍局(宍戸隆家室)
継室:乃美大方(乃美隆興娘)
穂井田元清
天野元政
毛利秀包(小早川秀包)(才菊丸)
側室(三吉氏)
椙杜元秋
出羽元倶
末次元康
三女(上原元将室)
側室(矢田氏)
二宮就辰

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