女将軍 井伊直虎

克全

第73話軍勢強化

今川家では大々的に足軽を募集して訓練をほどこしたが、それに必要な兵糧や武具を買い揃える軍資金は、水軍衆による貿易で十分賄う事が出来た。駿河から紀伊までの海域は、今川水軍が完全に制海権を確立しているし、北畠・雑賀・根来などの水軍衆も協力してくれていた。同時に越前・若狭・丹後の水軍衆を使って、渤海などの大陸との直接交易を行い莫大な利益を得ていた。

それに伴って、太平洋側の産物と日本海側の産物を、尾張・美濃・近江・若狭の街道を整備して交易し莫大な利益を上げていた。関所などなくても、人の流れが多くなり銭や物流が多くなれば自然と専売品が売れる、そうなれば民は何の痛痒も感じる事無く税を納めてくれる。特に水軍衆をつかって、木曽三川や近淡海の水運を活用して船賃をとることが大きかった。

武器の事を考えれば、近江国友村を領内に取り込んだことが大きかった。これによって、独占的に鉄砲を生産させ買い取ることが出来るようになった。しかも南朝繋がりで、紀伊国への影響力が確保出来たので、雑賀や根来からも鉄砲を購入することが出来た。更に一向宗以外の根来や雑賀の傭兵を、優先的に確保出来る状況を創り出す事に繋がった。


1567年『近江・観音寺城』今川義元・直虎

「御隠居様、朝廷は願いを聞き届けてくれそうですか」

「今後全ての朝廷費を今川家で負担するのなら、義直を征夷大将軍に就任させてもいいと言っている」

「左様でございますか、それはようございました」

「だが武田の隠居も色々と動いているようで、将軍に就任したことが契機となって、武田と北条が動きだすかもしれん」

「顕如との交渉はどうなっておりますか、それによって武田の動きも予測できないでしょうか」

「顕如は娘を嫁がせる事を真剣に考えているようだ、今1番力を持っているのは我らだから、武田との縁を切ってでも今川と誼を結びたいような反応だった」

「理子様が男子を産まなければ、顕如の娘が次期将軍を産む可能性すらあるのですから、武田を切り捨てる決断もあり得るでしょう」

「確かにそうだ、だがそれは北条にも言える事だ、関東管領の地位を得る事が出来るなら、今川の風下の立つことも厭わないかもしれん」

「はい、問題は信玄殿がどう決断なされるかです」

「そうだな、だが嫡男の義信が問題だ」

「氏真を毒殺した義直を許すなと申しているのですね」

「聞いていたか」

「はい、白拍子が探ってくれました、嶺子殿から説得してもらえないのですか」

「確かに夫婦仲はいいようだが、果たして義信が説得に応じるかどうか、それに義信が応じても信玄が応じるとは限るまい」

「親子二代に渡って、父親を放逐するのも面白いのではありませんか」

「怖い事を考える女子じゃな」

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