女将軍 井伊直虎

克全

第71話外交政策

1567年『近江・観音寺城』今川義元・直虎

「御隠居様、武田家や北条家への使者でございますが、長得殿の引き渡しと今後も同盟を継続することは当然として、婚姻についても話し合う事が出来ますでしょうか」

「だが義直は前将軍・足利義輝の妹を正室に迎えている、それ以外の娘は側室や妾にせねばならんぞ」

「はい、ですが早川殿と再婚と言う形なら、話がまとまるのではないでしょうか」

「なるほどな、武田には我が娘が嫁いでいるし、北条氏政には信玄の娘が嫁いでいる、形だけでも北条家から娘を貰えればいいと言うのだな」

「はい、義直が征夷大将軍に就任さえ出来れば、正室が前将軍の妹である以上、北条家の娘が側室であっても仕方ないのではありませんか」

「そうだな、再婚の早川が後から嫁いできて前将軍の妹を押し退けると言う方がおかしいな」

「はい、これで北条と武田が大人しくしてくれればいいですが、それ以外の策も打っておきましょう」

「ふむ、武田と北条を抑えるとなれば上杉か」

「はい、上杉輝虎に朝廷から正式に関東管領職を任官させる可能性がある事と、新将軍として北条家に関東管領職を与える可能性もある事を伝えましょう」

「両天秤にかけるのか、だがそれでは信頼を失う可能性もあるな」

「武田と北条が、将軍家の御領所に攻め込む姿勢を見せているので、甘い顔ばかりしている訳にはいきません」

「なるほどな、同盟を維持するならばいいが、そうでないのなら新たな同盟相手と手を結び、挟撃すると言う事だな」

「はい、厳しい選択にはなりますが、武田と敵対するなら一向宗との戦いも考えなければなりません」

「一向宗を相手にするなら、三河・尾張・北伊勢・近江・山城・越前での激しい一揆を覚悟せねばならんな」

「一向宗が武田と手切れしてくれるのならいいのですが、そうでなければ戦うしかありません」

「なるほど、武田と一向宗を切り離すことも考えればいいのだな」

「はい、義直の側室が早川殿で無くて顕如殿の娘でもいいのですから」

「なるほどな、人質と言うと問題だが、一向宗から娘を貰えば領内の安定にも寄与するな」

「あとは関東の事ですが、五郎を元服させて関東公方として派遣するのはどうでしょうか」

「上杉も北条も互いの古川公方を担いでいるが、それを一新すると言う事か」

「はい、将軍家が一新するのですから関東公方も一新するべきではないでしょうか」

「ふむ、考慮に値するな」

「それといつも冬の間に、上杉は北条に関東の覇権を奪い返されています」

「それで」

「越後が本拠の上杉が関東管領なら、冬の間代理を務める関東管領代を置くべきではないでしょうか」

「北条を関東管領代にして、上杉と北条に五郎を担がせるのか」

「それも1つの手ですが、五郎を北条の人質にされるのは面白くありません」

「なるほど、佐竹だな、北条が同盟に応じなければ上杉と佐竹に五郎を担がせるのだな」

「はい」

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