逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。
第67話兄ディラン視点
このままでは大変な事になる。
厳重な警備網を喰い破って、陛下と殿下に媚薬を盛られてしまった。
これが毒薬なら、既に陛下と殿下は殺されていた。
まあ、だが、正直なところ、殺されていた方がまだましだった。
殺されていたら、賢明なヘンリー王子に王位を継いでいただけた。
正妃殿下が摂政に立ち、次代の国王陛下が育つまで時間稼ぎも可能だ。
だから、陛下や殿下を媚薬で操られたり、狂わされたりする方が困る。
現に今も、問題のある勅命に廷臣が右往左往している。
まあ、今の所は色に狂っているだけだから、政治にまでは問題が及んでいないが、これが外交にまで悪影響を及ぼすようだと、父上が陛下の幽閉を断行せねばならなくなる。
万が一そのような事態になれば、父上と敵対する貴族が狂気に陥った陛下や殿下を担ぎ、この国の権力を奪おうとするだろう。
そんな事になると、この国の民が塗炭の苦しみを舐める事になる。
税は高くなり、内乱で死傷する事だろう。
そんな事にならないように、一刻も早く媚薬の素を断つか、解毒薬を完成させなければならない。
「アイザック。
まだ媚薬の解毒薬は完成しないのか?」
「父上が他の侍医も動員して研究しているが、なかなかも目途が立たない。
緩和薬だけでも作れないかと考えているのだが、全く当てがない」
王家王国の医師を総動員する勢いで研究しても無理なのか!
「オーウェン。
魔法で何とかならないか?」
「父上も宮廷魔導士団を総動員して研究しているが、こちらも全く目途が立たない。
既存の魔法では解毒も緩和も無理だ」
「ディラン。
俺がスカーレットを斬る。
それで殿下を媚薬から解放できるだろう?」
いつもおしゃべりなボルトンが珍しく黙っていたと思ったら、そんな物騒な事を考えていたのか。
確かにスカーレットを斬れば、マナーズ男爵の野望は潰えるだろう。
だが、陛下と殿下に媚薬を盛ったのはスカーレットではない。
マナーズ男爵だとも断言できない。
マナーズ男爵を斬っても、ラトランド侯爵とマールバラ伯爵が残り、現体制批判の口実を与えるだけだ。
「もうしばらく待て、ボルトン。
本当に必要な時には斬ってもらうが、今斬ったらラトランド侯爵とマールバラ伯爵がお前の父上を糾弾するぞ。
それよりもだ。
オーウェン。
父上に治癒魔法の開発より前に、宮廷魔導士団を総動員して、陛下と殿下に媚薬を盛った人間を特定してもらえないか?」
「取りあえず実行犯を捕らえて、一時的にでも媚薬の効果を止めると言うのだな?」
「ああ、父上達なら既にそのように動いておられるかもしれないが、我々が何を優先して動いているかを、それぞれに父に分かっておいてもらわないと、陛下の側近団と殿下の側近団が反目してしまう可能性がある。
それでなくても敵が増えているのだ。
内部分裂など起こしてはおれんのだ」
「分かった」
厳重な警備網を喰い破って、陛下と殿下に媚薬を盛られてしまった。
これが毒薬なら、既に陛下と殿下は殺されていた。
まあ、だが、正直なところ、殺されていた方がまだましだった。
殺されていたら、賢明なヘンリー王子に王位を継いでいただけた。
正妃殿下が摂政に立ち、次代の国王陛下が育つまで時間稼ぎも可能だ。
だから、陛下や殿下を媚薬で操られたり、狂わされたりする方が困る。
現に今も、問題のある勅命に廷臣が右往左往している。
まあ、今の所は色に狂っているだけだから、政治にまでは問題が及んでいないが、これが外交にまで悪影響を及ぼすようだと、父上が陛下の幽閉を断行せねばならなくなる。
万が一そのような事態になれば、父上と敵対する貴族が狂気に陥った陛下や殿下を担ぎ、この国の権力を奪おうとするだろう。
そんな事になると、この国の民が塗炭の苦しみを舐める事になる。
税は高くなり、内乱で死傷する事だろう。
そんな事にならないように、一刻も早く媚薬の素を断つか、解毒薬を完成させなければならない。
「アイザック。
まだ媚薬の解毒薬は完成しないのか?」
「父上が他の侍医も動員して研究しているが、なかなかも目途が立たない。
緩和薬だけでも作れないかと考えているのだが、全く当てがない」
王家王国の医師を総動員する勢いで研究しても無理なのか!
「オーウェン。
魔法で何とかならないか?」
「父上も宮廷魔導士団を総動員して研究しているが、こちらも全く目途が立たない。
既存の魔法では解毒も緩和も無理だ」
「ディラン。
俺がスカーレットを斬る。
それで殿下を媚薬から解放できるだろう?」
いつもおしゃべりなボルトンが珍しく黙っていたと思ったら、そんな物騒な事を考えていたのか。
確かにスカーレットを斬れば、マナーズ男爵の野望は潰えるだろう。
だが、陛下と殿下に媚薬を盛ったのはスカーレットではない。
マナーズ男爵だとも断言できない。
マナーズ男爵を斬っても、ラトランド侯爵とマールバラ伯爵が残り、現体制批判の口実を与えるだけだ。
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「ああ、父上達なら既にそのように動いておられるかもしれないが、我々が何を優先して動いているかを、それぞれに父に分かっておいてもらわないと、陛下の側近団と殿下の側近団が反目してしまう可能性がある。
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