初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第166話鯨汁

ナーポリ近郊の秘密キャンプ地

「余に鯨汁を食べさせるのだ!」

「ステーキがいいみゃ、ジャイアント・ホワイトホエールの尾の身とさえずりのステーキが食べたいミャ」

「主~、ジャイアント・ホワイトホエール料理と言ったら、やっぱり昆布出汁でモツを煮たもんだよ!」

「分かった分かった、鯨汁もステーキもモツ煮も作り置きがあるから、それを喰ってくれ」

「そうだな、前菜は直ぐ食べたいから作り置きでもよかろう。だが、やはり焼き立てが美味しい料理もあるから、メインディッシュのステーキやローストは、セイがこの場で焼いた物を喰わせろ」

「おいおいおい、、身勝手も大概にしろよ。第一そんな料理は、開拓村で作ってもらえるだろうが?!」

「何が身勝手なものか! 毎日毎日余直々に、馬車代わりに色んな所に運んでいるではないか、その代償としたら安いものだ。それに余が喰うジャイアント・ホワイトホエール分以上に、多くのジャイアント・ホワイトホエールを狩って持ってきているではないか」

「だから! 自分で狩れるし開拓村で料理も出来るんだから、そこで喰えばいいだろ」

「うぬぅぅぅぅぅぅ、だが何故かここで喰った方が美味いんだ、だからここで喰わせろ!」

「それは仕方ないだろ、仲間で一緒に食べた方が料理は美味しいんだ。だから何度も何度も、開拓村の人間と一緒に食べろと言ってるだろ!」

「余もそう言ったが、開拓村の人間は怖がって、絶対一緒に食べようとせんのだ」

「それは、まあ、そうなるか。原初の竜と一緒に、平気で飯が喰える人間はいないだろうな」

「だがら、ここで喰わせろ。ちゃんと仕事もしてるし、材料も余が喰う分以上に持ってきてるではないか!」

「分かった分かった、だが、だからと言って、開拓村への食料供給を止めるんじゃないぞ」

「そうは言うがな、セイの分身体がいるのだから、食料に困ることなど無いではないか。だったら、三度三度の食事はここで喰わせろ」

「あのなぁ~、俺が狩りや交易で、日に何度も何度も移動しているのは知ってるだろ。アグネスや白虎と一緒に食事をするのは朝晩だけで、昼食は別々だとしってるだろ?」

「だから余は、昼食もアグネスや白虎と一緒に食べると言っているのだ」

あぁあぁあぁ、寂しがりかよ!

家族や仲間と一緒に食事をする、愉しさ美味しさに目覚めてしまったんだな、こればかりは開拓村に任せるのは無理だな。

「分かったよ、だがな、だったらリュウにも料理を覚えてもらうぞ」

「何故だ? 何故余が料理を覚えなばならん?!」

「あのなぁ~、リュウの食べる量がどれだけ膨大か分かっているのか? そんな量を三度三度作っていたら、とてもじゃないが作る分量が間に合わなくなるだろ。だからせめて、セイや白虎が俺のために作る分くらい、リュウが代わりに作れよ」

「うぬぅぅぅぅぅぅ、仕方がない、作ってやる。その代わり、今日から毎日三食食べに来るからな」

「分かったよ、これで約束を交わしたからな」



「塩鯨汁」
塩鯨:鯨の皮と脂肪の層
(材料)
塩鯨 :5kg
(異世界の似た野菜を探す)
大根 :5本
人参 :20本
牛蒡(ごぼう):10本
ふき :3kg
わらび:3kg
昆布出汁:適量
塩   :適量
(異世界になければ省く)
蒟蒻 :20丁
木綿豆腐:20丁

1:塩鯨は炒めてから湯通しする
2:牛蒡はささがきにして酢水につける
3:蒟蒻はお湯でさっと洗ってアクを抜き、食べ易い大きさに千切る
4:豆腐・きのこは食べやすい大きさに切る
5:大根・ニンジンは皮をむいていちょう切りにする
6:ふき・わらびはアク抜きをする
7:鍋に昆布出汁を入れ、湯通しした塩鯨・ニンジン・ごぼうを入れて火にかけます
8:沸騰したらアクをこまめに取りながら大根・きのこ・焼き豆腐・ふき・わらびを入れる
9:材料に一通り火が通ったら、塩で味を整えて完成


「醤油鯨汁」
塩鯨  :5kg
人参  :適量
大根  :適量
わらび :適量
玉ねぎ :適量
フキ  :適量
筍(たけのこ):適量
椎茸  :適量
エノキ :適量
シメジ :適量
だし昆布:適量
醤油  :適量
(異世界になければ省く)
豆腐  :適量
かまぼこ:適量
ちくわ :適量
蒟蒻  :適量

1:材料を一口大の大きさに切る
2:塩鯨は炒めてから湯通しする
3:塩くじら・玉ねぎ・豆腐・醤油以外の材料と水を鍋に入れ煮る
4:沸騰したらだし昆布を取り出し、硬い野菜に火が通ったら、塩くじら・玉ねぎ・豆腐・醤油を鍋に入れ少し煮込む
5:しょう油で味を調え、具材に味が染み込むまで煮込む

「味噌鯨汁」
塩鯨:5kg
(異世界の似た野菜を探す)
生姜:30~50かけ
茄子(なす):大20本
茗荷(きょうが):25個
出汁昆布:適量
(異世界の材料で試作する)
早白味噌:大さじ25
熟成味噌:大さじ25

1:塩鯨は炒めてから湯通しする
2:茄子は食べやすい大きさに切って、水にさらしておく
3:生姜を下ろす
4:出汁昆布・塩鯨・茄子・下ろし生姜を水に入れて火をかける
5:茄子が柔らかくなったら味噌を入れ、ひと煮立ちしたら火をとめる
6:茗荷の千切りをのせて出来上がり。

「粕鯨汁」
塩鯨:5kg
(異世界の似た野菜を探す)
大根:適量
人参:25本
葱 :適量
出汁昆布:適量
(異世界の材料で試作する)
油揚げ:50枚
蒟蒻 :
酒粕 :6kg
醤油 :大さじ25杯

1:塩鯨は炒めてから湯通しする
2:油揚げは熱湯をかけて、余分な油をとり、短冊きりにする
3:蒟蒻は手で千切り、お湯にくぐらす
4:出汁昆布で昆布出汁をとる
5:塩鯨と葱以外の材料と昆布出汁で合わせて、やわらかくなるまで煮る。
6:葱は輪切りにしていれて、再度沸騰させる。
7:火をとめて醤油・酒粕を入れる

後々の事も考えて、また大量の寸胴鍋をローン配送させて、塩味・醤油味・味噌味・粕漬味の鯨汁を作った。当然なのだが、リュウや白虎は肉しか食べない。そうなると、一緒に煮た野菜などは捨てなければならなくなる。

せめてスープだけでも残っていれば、孤児や貧民への施しに回せるのだが、肉と野菜の旨味が出たスープは、リュウも白虎も争うようにして飲んでしまう。残った少量のスープと野菜だけでも、孤児や貧民は喜んで食べてくれるだろうか?

「そうだな、冬場の貧民街では、屑野菜でも食べれればいい方で、外殻まで挽いて作ったパンが食べれればいい方だろう。そんな貧民街なら、鯨の旨味が加わった煮野菜は、大変な御馳走になるのではないか」

「そうか、そうかもしれないな。だったらどこで配ろうか?」

「今まで関係があった街でいいではないか、ナーポリ、ビラン、テトラなら、残り物を渡すだけで、配るのを引き受けてくれる人間もいるであろう」

「そうかな? そうだな! 街ごとに責任者を決めて、配ればいいな」

「何をぐちゃぐちゃいっておる、魔の森に撒いておけば、スライムなどの魔獣やモンスターが、争って喰うではないか。それに棄てた物に集まった魔獣やモンスターをまとめて狩れば、アグネスのレベル上げにもつながるのではないか」

「だがなリュウ、もうアグネスはだいぶ成長しているから、ゴミに集まる魔獣やモンスターを狩ったくらいでは、余り効率のいいレベル上げにはならないんだよ」

そうなのだ、毎日毎日白虎がレベリングしてくれたので、アグネスのレベル上昇が驚くほど効率よく行われていたのだ。

「ミノルは分かっていないな」

「何がだよ?」

「余や白虎を魅了するような料理が、低級の魔獣やモンスターをどれだけ引き付けると思っているのだ?」

「へ? そんなに凄いに?!」

「試してみれば直ぐに分かる!」

話は鯨汁に戻るのですが、北海道では元々、鯨汁は塩クジラや山菜といった保存のきく食品で作る、体が温まる冬の食べ物だったそうだが。「正月から大きなものをいただいて縁起がよい」とか、「ニシンを岸に集めるクジラを食べて豊漁を祈る」といったゲン担ぎで、正月に食べられるようになったのではないか言われているそうです。

特に函館では、大鍋に大量に作って、お正月の間鯨汁食べるていたそうです。鯨汁の作り方や具材に味つけは、それぞれの家庭の味があるそうです。

塩鯨のお椀からは、とてもいい潮の香りが漂います。塩鯨から出た上質の旨みと野菜から出た甘みが溶け合い、優しい味わいを醸し出しています。クジラは噛むとかすかにクジラらしい香りが鼻に抜け、シャリシャリ・シャクシャクとした独特の食感。山菜の味わいも深く、食べたあとに体の芯から温まってくる料理です。

一方新潟や会津では、高温多湿な夏の嫌な暑さを乗り越えるために、夏野菜と一緒に作る、鰻のかば焼きに負けないスタミナ料理だそうです。鯨の脂の浮いた、熱い鯨汁を食べることで、蒸し蒸したじっとりと暑い嫌な夏に負けない体力をつけるのだそうです。

特に茄子が出回る頃の鯨汁は必須の食べ物だそうで、新潟市周辺は丸茄子を使って作るそうです。

長岡市周辺では、丸茄子に加えて乾瓢(かんぴょう)の材料になるゆうがおが加わるそうです。

会津地方でも同じだそうですが、山形県ではジャガイモが入るので、新じゃがが出回る頃から夏が、鯨汁のシーズンだそうです。

僕の住む家の周辺では大阪河内地方ですが、おでんにコロと呼ばれる鯨の部位を入れます。塩鯨と同じ部位ですが、皮脂肪を鯨油で揚げたもので、長時間温度調整しながら油を(絞る)抜きしカラッと仕上げたものです。

コイツを入れたおでんの出汁は絶品なのですが、僕には庶民の味だと言う印象が強すぎて、今の高価な値段では買う気にならないのです。

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