初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第159話報復攻撃

ナーポリ漁師ギルド本部:ミノルとセイ

「どうするのだ?」

「どうするって?」

「今回の謀反劇の始末だ」

「どうもしないよ、報復攻撃するだけだよ」

「報復の範囲はどこまでだ?」

「そうだな、貴族や騎士の地位にある者は全員だな、あとは100人以上の部下を持つ軍人も対象にしよう」

「ロンドレア伯爵が言っていたように、謀叛人の領地と、それを支援した周辺国の関係者の領地にも攻撃を加えるのか」

「どうするかな? まあ報復しておいたほうが、今後手出しする者が減るだろうから、ここは思いっきり報復しておこう」

「ふむ、まあそれがいいだろうな」

「じゃあセイ、今回生け捕りにした謀叛人たちは、俺の記憶の中にある八大地獄を再現して、生きながら地獄めぐりをさせてやってくれ」

「我にやらせるのか?」

「俺はサディストじゃないんで、そう言うことは苦手なんだよ、そこはセイが補ってくれるかな?」

「まあよかろう、互いの苦手を補ってこそのディオだからな。で、領地に対する報復は、ロンドレア伯爵が言っていたようにするのか?」

「う~ん、威圧と言う意味では、空にジャイアント・ホワイトホエールが現れて、城砦を圧し潰せばインパクトはあるんだろうけど、食べ物が傷むのは嫌なんだよね」

「ミノルにとったら、ジャイアント・ホワイトホエールはただの喰いもんなんだな」

「そうだよ、今更経験値なんか意味ないし、美味しいかどうかだけが大切だよ」

「ではどうする、ジャイアント・ホワイトホエールの代わりに大岩でも叩き付けてやるか?」

「そうだな、どうしようか? うん、決めた! 威嚇にジャイアント・ホワイトホエールの幻影を見せよう。俺やセイが使う魔法を見破れる人間はいないよな?」

「そのような生物は、原初以外には存在せんよ」

「だったらこれ以上、ジャイアント・ホワイトホエールの現物を、アイテムボックスから出しておくのは止めよう」

「ではアイテムボックスにしまう間に、俺が幻影魔法でジャイアント・ホワイトホエールを創り出してやろう」

「頼むよ、それと謀叛人の領地上空にも頼むよ」

「それも我がするのか? 魔法の練習も兼ねて、後でミノルがやればよかろう」

「しゃあないか、面倒だけど、八大地獄めぐりはセイに頼んだから、それくらいはやった方がいいな」

「そうだぞ、いくらレベルが上がっていても、魔法の習熟度は使わねば上達せんからな」

「分かりました、謀叛人の脳内を探る魔法と、幻影魔法を繰り返し繰り返し使いますよ」

「どうせなら、もっと沢山の魔法を使ってみろ」

「もっと沢山? 具体的には何を使えばいいんだ?」

「毎日の食事の支度で、念動力系の魔法は細やかに使っているし、狩りでも血抜きを兼ねて、風魔法と水操作系の魔法は使っている」

「そうだな、確かにそれらは無意識に多く使っているな」

「デス系の即死魔法も使ってはいるが、料理に使う火炎系の魔法は、火力操作の細やかな使い方だけで、最大火力を伸ばしたり範囲を広げる使い方はしておらんだろ」

「そうだったね、じゃあ謀叛員の城砦を、最大火力でマグマのように熔解させる魔法を使うか?」

「そうだな、それと罪なき民を巻き込まないように、空間閉鎖系の魔法やシールド系の防御魔法を同時に使うがよかろう」

「そうだな、最初に幻影魔法で威嚇して、城砦内から人間を退避させておいたら、それこそ無制限に魔法訓練が出来るな」

「そうだ、攻撃と防御の魔法を同時に練習できるであろう」

「うんそうだね、セイのアイデアが1番いいね」

「それで、王はどうするんだ」

「どうとは?」

「あのように愚かな王を、これからも王位つけておいていいのか?」

「だがあれは仕方なかろう、どう考えても先天的に障害があるだろう」

「国民の生命財産を預かる王に、あのような障害を持つ人間をつけるなど、それこそ無責任の極みであろう」

「確かにね、そう言う視点もあるだろうね」

「ふむ、ミノルらしくないな。地位には責任が伴うと言うのが、ミノルの信条であったはず。それに違う視点を加えるなど、らしくないではないか」

「うん、そうなんだけどね、俺の知識の中には、家督継承で揉めて、国中を巻き込んだ大戦の歴史があるんだよ」

「無能や障害のある王を廃そうとして、国中を巻き込んだ戦争の歴史か?」

「うん、戦乱の絶えない時代なら、能力最優先も悪くはないんだけど、それを理由に佞臣が第2王子以下を担いで、内乱を始めてしまうのも怖いんだよね」

「ふむ、では国王だけは、能力ではなく血統順に継承させればよかろう」

「基本はそうなんだけどね、例えばさっき忠義を尽していた宰相だけど、あの宰相家が後継問題で揉めていたら、謀叛人たちは介入しただろうね」

「ふむ、そうなった場合は、王が多少有能であっても、宰相家の後継問題から内戦が勃発すると言うのか」

「俺の記憶を探ってくれると、いちいち説明せずに済んで早いんだけど、応仁の乱なんかがそうだよ」

「ふむ、確かにそのようだな。重臣家の家督継承問題を、他の重臣家が介入する事で、国中を巻き込んだ内乱に発展してしまったのだな」

「ああ、だから正直迷うんだよ。今のイータリ国なら、駄々っ子王に王位を任せ続けた方がいいのか、宰相に王位を継がせる様に仕向けた方がいいのか」

「ふむ、ミノルの選択肢の中には、駄々っ子王を廃立し、もっと傀儡として扱いやすい王族を擁立し、宰相に実権を握らせると言うのもあるな」

「俺の心を読んだのか?」

「ミノルが説明するのが面倒になって、無意識に我に伝えてきたのであろう」

「そうなのか? 自覚は無いんだがな」

「まあデュオなのだ、意識があろうとなかろうと、互いの考えがいきなり伝わる事もあろう」

「そう言うものなのなら、いちいち目くじら立てても仕方ないな」

「そう言う事だ、あるがままを受け入れるしかないのだ。で、どうするのだ?」

「様子見だね」

「現状維持か?」

「俺に取ってはどちらでもいい事なんだ、実際民が戦乱に巻き込まれたのなら、支援をするけれど、駄々っ子王と宰相の関係などは、2人で決めてくれればいいさ」

「ふむ、ミノルがその心算なら、それはそれでよかろう。駄々っ子王が何度佞臣に騙されようが、宰相の才能を妬み続けようが、それは我らに関係の無い事だからな」

「そう言う事だよ、でもちょっとお仕置きくらいはしておこうか」

「陰口を言われたくらいで怒るミノルではないから、何に対してお仕置きするのだ?」

「冒険者が命懸けで得た魔獣やモンスターの権利を、王だと言う理由だけで横取りしようとしたことだよ」

「ふむ、それは正当な報復だな、では王にも生きたまま八大地獄めぐりをさせるのか?」

「現役の王を、行方不明にさせる訳にはいかないから、幻影魔法と夢魔法を組み合わせて、実際に八大地獄めぐりをしたのと同じ、恐怖と苦痛を味合わせてやろう」

「ふむ、確かに幻影魔法と夢魔法を駆使すれば、現実と同じ恐怖や苦痛を味合わせることが出来るであろう。だがそうなると、王が発狂したり心臓麻痺を起こすこともありえるぞ」

「その辺は治癒魔法を駆使して、狂わないように死なないように、じっくりと時間を掛けて恐怖と苦痛を味わってもらうさ」

「ミノル、よくそれで抜け抜けと自分はサディストではないと言えたな」

「うん? 王へのお仕置きはセイが担当だよ」

「我にさせるのか?」

「適材適所だよ、セイにとったら人間など虫けらと同じだろ? 俺が気にしてるから、人間に配慮してくれているだけだろ?」

「まあそう言うことだ」

「だったら、人間に対する報復やお仕置きは、セイが担当してよ」

「仕方あるまい」

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