初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第133話ダイオウイカ1
ナーポリ港:朝市
「どう言うことだ?」
「ちょっと聞いてきます」
夜明け前にキャンプ地から密かにナーポリの街に戻った俺は、前日に約束していたヴィゴールと冒険者ギルドで合流した。そして愉しみにしていた魚介類を買いに朝市に来てみたのだが、買い物客はいるものの露店がないのだ。いや、わずかな露天商が商いをしているのだが、その価格が昨日の十数倍以上と言う高額だった。
「ミノルさん大変だ! 漁船が戻ってきていないんだ!」
「どう言うことだ?」
「俺の説明じゃ2度手間になる、アンドレアの親父に説明してもらうよ」
「そうか、そうだな、そうしよう」
俺はヴィゴールに先導してもらい、アンドレアの親父の露店にまでついて行った。
「ミノルさんすまねぇ! アンタに頼まれていた魚介類は買えなかった」
「いやそれはいいんだが、何があったんだ?」
アンドレアの親父の露店には、全く魚介類が置かれていなかった。そうなのだ、1匹の小魚すら置かれていない。これでは孤児たちが食べ物にありつけない、いや、大丈夫だな、昨日保存用の小魚を与えていたから、あれを食べればいい。なんなら、昨日下処理が間に合わなかった魚介類を、孤児たちの為に放出してもいいのだ。
「漁船が戻ってこないんだ! 沖合で何かあったようだ」
「沖合か、沿岸部で漁をしている船は戻って来ているんだな?」
「ああ、沿岸部で漁をする小船は戻って来てるし、地引網は問題無く魚を捕っている。だがそこで獲れた魚は、全部権力者や金持ちの所に行って、露天商には回ってこないんだ」
「孤児たちの食料は大丈夫か?」
「ああ、ミノルさんが天日用にくれた魚が大量にあるから、4・5日は大丈夫だが、万が一船が全部沈没していると、不漁が長引く可能性がある・・・・・」
「そうか、何なら昨日買った魚の中から、俺の好みじゃない魚を寄付しようか?」
「なに? それは孤児たちに寄付してくれると言う事か?」
「そうだ、万が一の事になったら、ナーポリの街自体が不況になってしまうだろう。そんな街の孤児がどう言う運命をたどるか、少し考えれば分かる事だからな」
「そうか、正直有り難い、塩を大量に使えば1年でも2年でも魚を保存できるだろう。保存は出来るが、最悪の状況になっていまっていたら」
「食糧難になった街で、力のない孤児が食料を持っていたら」
「親父さんやミノルさんが考えている通り、襲撃され最悪殺されますね。俺の経験上間違いなくそうなりますね」
「とにかく原因が分からない限り対処のしようがないが、親父さんには何も思い当たる事はないのか?」
「常識的に考えれば、沖合に魔魚かモンスターが現れたと言う所だが、この辺は安全な海域のはずなんだ」
「魔魚とモンスターか、1隻2隻ではなく、沖合に出た漁船全てが帰って来ないとなると、考えられる相手はいないんだな?」
「この辺りの昔話には、クラーケンが大暴れしたと言う物がある。二百年くらい前の話ではあるが、再び現れたと言う事も考えられるが、そうであれば最悪の状況だろうな」
「漁船が帰って来たぞ~!」
「親父さん、親父さんなら情報を集められるか?」
「ああ、色々な所に伝手があるから、確かな情報を集めよう」
「ヴィゴール、俺達は冒険者ギルドに行って、ギルドルートの情報を集めよう」
「そうですね、魔魚やモンスターが出たのなら、冒険者ギルドに討伐依頼が来るでしょうから、ギルドでも情報を集めるべきですね」
俺達はギルドに行って色々と聞き込みを行ったが、到着直後には何の情報も入っていなかった。だが時間が経つにつれて、徐々に情報が入り出し、ギルドからの公式情報が出る前に、ある程度の情報を掴むことが出来た。
「これをアンドレアさんから預かってきました」
「そうか、よく届けてくれた、これは御駄賃だ」
「ありがとうございます!」
特に役立ったのは、ヴィゴールとアンドレア親父が孤児を使って連絡をとってくれたことだ。いちいち俺やヴィゴールがアンドレア親父の所に行かなくても、親父が書いた最新情報の手紙を、孤児がギルドにいる俺達も下に運んで来てくれるのだ。
何度も何度も子供を変えて使いに出すのは、公平に御駄賃を分け与えるためだろう。アンドレア親父も御駄賃をあげているだろうが、俺が出さない訳にはいかない。1人1人に小銀貨1枚を与えて、小魚以外の食べ物が買えるようにしてあげた。
「何と書いてあるんですか?」
「今のところダイオウイカの群れに襲撃されたと言うのが、漁師ギルドの見解らしい」
「ダイオウイカですか、確かに手ごわい相手ではありますが、ナーポリの荒くれ漁師が太刀打ちできない相手ではないんですがね」
「前代未聞の、海を覆い尽くさんばかりも群れだったそうだ」
「そんなに巨大な群れが、ナーポリの沖合に居座っているのですか?!」
「いや、どうやら海岸線にまで迫って来ているらしい」
「そりゃ一大事じゃないですか! あいつら人間だって海に引きずり込んで喰っちまいますよ」
(全長20m級の肉食イカだったな、セイ)
(ああ、1匹2匹なら熟練漁師1人でも倒せることが出来るが、百や二百の群れに船を囲まれたら、魔法を使えない漁師ではひとたまりもないだろうな)
(そうか、漁師の中にいる魔法使いは、低レベルの風魔法の使い手か水流魔法の使い手だったな)
(ああ、皆無とは言わないが、殺傷能力のあるような魔法使いは、冒険者になる事が多いからな)
(皆無ではないと言う事は、少数なら高レベル魔法使いで漁師をしている者がいると言う事か?)
(ふむ、細かな知識まではないな、ヴィゴールに聞いてみろ)
(そうだな、そうしよう)
「ヴィゴール、漁師の中に高レベルの魔法使いはいるのか?」
「そうですね、帆に風を当てる魔法使いや、海流を創り出す魔法使いの中でも、レベルが上がった者がいます。漁師を家業にする家から、魔法の才能がある子供が産まれる事もあります。比較的買い取り価格の高い魔魚や海生モンスターを専業に狩る、冒険者兼業の猟師もいるのです」
「なるほどね! 専業漁師ではなく、冒険者を兼業している漁師なのだな!」
「海中のモンスターを狩るのは至難の極みです! 魔魚やモンスターの移動は早く、船の上しか足場のない場所で戦わなければなりません。いえ、船を海中から攻撃されれば、碌な抵抗も出来ずに海に引きずり込まれてしまいます」
「なるほどね、それだと海上を歩く事が出来る、水自体を操る魔法使いか海流を操る魔法使いしか、海特化型の冒険者は務まらないな」
「はい、逆に言えばそのような魔法しか使えない魔法使いは、漁師を兼業するしかないのです」
「どう言う事だ?」
「魔魚や海生モンスターは、早々陸地に上がって権力者を攻撃したりしません。冒険者ギルドを通しての依頼は極端に少ないのです」
「なるほどね、仕事がなければ魔法を使えても食べて行けないのだな」
「はい、海特化型の魔法使いは、漁師ギルドに所属するか、兼業するしか安定した生活が出来ないのです」
「だから高レベルになっても、基本は漁師ギルドに所属しているのか」
「はい、討伐依頼もないのに、命懸けで強大な魔魚やモンスターを狩る必要などありません。確実に捕れるモンスターや魔魚・魚を獲るだけで、結構な金になりますから。それに駆け出しの頃から面倒見てくれた先輩や船長の恩をあだで返したら、それこそ誰にも信用されなくなります。生きて帰って来てる船は、そう言う高レベル魔法使いが乗船しているか、高レベル魔法使いが船長をしている船です」
「だが今回はさすがに領主が討伐依頼を出すだろうな」
「おそらくそうなると思われます。ナーポリの領主様は、漁業で街を発展させ、税収を格段に増やされて国内屈指の富裕貴族と成られました。この状況を指を咥えて見ているとは思えません」
「領主様から討伐依頼が来たぞ! 狩ったダイオウイカは自由に処分していい上に、1匹当たり大銀貨1枚の討伐金が支給されるぞ!」
情報通だろう冒険者が大声で新情報を披露したが、その途端冒険者ギルドの酒場やロビーでは、喧々諤々とした意見交換が始まった。
「なんだよ、それぽっちかよ!」
「ああそうだな、それっぽっちじゃ命なんぞかけられんぞ」
「やめたやめた、おりゃナーポリを出て他所の街に行くわ」
「まだそれは早計だぞ、応じる冒険者がいなけりゃ値上げして来るって」
「おいおいおい、そりゃあ読みが甘いぞ」
「どう言う事だ?」
「ここの領主は頭が切れるんだ、海を覆い尽くすようなダイオウイカの群れに高額の討伐金はかけられないと判断したんだよ」
「なるほどな、確かに何万何十万といるか分からないダイオウイカに、高額な討伐金を出せないな」
「多分次は、一旦個々のダイオウイカ討伐依頼をキャンセルして、この事件自体を解決する事に大金を出すだろうが、そんな巨大なダイオウイカの群れを全て討伐できる奴なんかいないよ」
「ああそうだな、俺もそう思うぞ」
「でだ、領主として真っ当な手順を踏んで冒険者ギルドに討伐依頼を出したが、冒険者ギルドが非協力的だと言う事で、領主権限の強制討伐命令を出すだろうよ」
「そりゃ不味いじゃねえかよ、拒否権なしの強制討伐命令が出されたら、死ぬと分かっていても海に出なけりゃいけなくなるぞ」
「だから今の内に街を出た方がいいんだよ、何十万ものダイオウイカの群れが襲ってくると分かった以上、ぐずぐずしてたら犬死だぞ」
「そうか、そうだな、急いで宿に戻って出発の準備だ」
「バカヤロウ、てめぇ~らそれでも冒険者か! 街の人々が困っている時に戦ってこそ冒険者だろう! その為に入会書に強制討伐命令を受ける文面があるんだろうが」
「へん、知った事かよ、命あっての物種なんだよ。それに今ならまだ強制討伐命令は出ていないからな、街を出ても何も問題も無いよ」
(また目立ってしまいそうだ)
(仕方ないだろうな、だがまあ海に群棲しているダイオウイカなら討伐も簡単だろう。だが何故なんだろうな、ダイオウイカの現物はもらえるんだから、依頼料が無くてもダイオウイカを売ればいいだろうに)
(我にも分からんな、ヴィゴールに聞いてみればよかろう)
(そうだな、そうしよう)
「静かにしろ! 冒険者ギルドの正式発表を行う!」
「どう言うことだ?」
「ちょっと聞いてきます」
夜明け前にキャンプ地から密かにナーポリの街に戻った俺は、前日に約束していたヴィゴールと冒険者ギルドで合流した。そして愉しみにしていた魚介類を買いに朝市に来てみたのだが、買い物客はいるものの露店がないのだ。いや、わずかな露天商が商いをしているのだが、その価格が昨日の十数倍以上と言う高額だった。
「ミノルさん大変だ! 漁船が戻ってきていないんだ!」
「どう言うことだ?」
「俺の説明じゃ2度手間になる、アンドレアの親父に説明してもらうよ」
「そうか、そうだな、そうしよう」
俺はヴィゴールに先導してもらい、アンドレアの親父の露店にまでついて行った。
「ミノルさんすまねぇ! アンタに頼まれていた魚介類は買えなかった」
「いやそれはいいんだが、何があったんだ?」
アンドレアの親父の露店には、全く魚介類が置かれていなかった。そうなのだ、1匹の小魚すら置かれていない。これでは孤児たちが食べ物にありつけない、いや、大丈夫だな、昨日保存用の小魚を与えていたから、あれを食べればいい。なんなら、昨日下処理が間に合わなかった魚介類を、孤児たちの為に放出してもいいのだ。
「漁船が戻ってこないんだ! 沖合で何かあったようだ」
「沖合か、沿岸部で漁をしている船は戻って来ているんだな?」
「ああ、沿岸部で漁をする小船は戻って来てるし、地引網は問題無く魚を捕っている。だがそこで獲れた魚は、全部権力者や金持ちの所に行って、露天商には回ってこないんだ」
「孤児たちの食料は大丈夫か?」
「ああ、ミノルさんが天日用にくれた魚が大量にあるから、4・5日は大丈夫だが、万が一船が全部沈没していると、不漁が長引く可能性がある・・・・・」
「そうか、何なら昨日買った魚の中から、俺の好みじゃない魚を寄付しようか?」
「なに? それは孤児たちに寄付してくれると言う事か?」
「そうだ、万が一の事になったら、ナーポリの街自体が不況になってしまうだろう。そんな街の孤児がどう言う運命をたどるか、少し考えれば分かる事だからな」
「そうか、正直有り難い、塩を大量に使えば1年でも2年でも魚を保存できるだろう。保存は出来るが、最悪の状況になっていまっていたら」
「食糧難になった街で、力のない孤児が食料を持っていたら」
「親父さんやミノルさんが考えている通り、襲撃され最悪殺されますね。俺の経験上間違いなくそうなりますね」
「とにかく原因が分からない限り対処のしようがないが、親父さんには何も思い当たる事はないのか?」
「常識的に考えれば、沖合に魔魚かモンスターが現れたと言う所だが、この辺は安全な海域のはずなんだ」
「魔魚とモンスターか、1隻2隻ではなく、沖合に出た漁船全てが帰って来ないとなると、考えられる相手はいないんだな?」
「この辺りの昔話には、クラーケンが大暴れしたと言う物がある。二百年くらい前の話ではあるが、再び現れたと言う事も考えられるが、そうであれば最悪の状況だろうな」
「漁船が帰って来たぞ~!」
「親父さん、親父さんなら情報を集められるか?」
「ああ、色々な所に伝手があるから、確かな情報を集めよう」
「ヴィゴール、俺達は冒険者ギルドに行って、ギルドルートの情報を集めよう」
「そうですね、魔魚やモンスターが出たのなら、冒険者ギルドに討伐依頼が来るでしょうから、ギルドでも情報を集めるべきですね」
俺達はギルドに行って色々と聞き込みを行ったが、到着直後には何の情報も入っていなかった。だが時間が経つにつれて、徐々に情報が入り出し、ギルドからの公式情報が出る前に、ある程度の情報を掴むことが出来た。
「これをアンドレアさんから預かってきました」
「そうか、よく届けてくれた、これは御駄賃だ」
「ありがとうございます!」
特に役立ったのは、ヴィゴールとアンドレア親父が孤児を使って連絡をとってくれたことだ。いちいち俺やヴィゴールがアンドレア親父の所に行かなくても、親父が書いた最新情報の手紙を、孤児がギルドにいる俺達も下に運んで来てくれるのだ。
何度も何度も子供を変えて使いに出すのは、公平に御駄賃を分け与えるためだろう。アンドレア親父も御駄賃をあげているだろうが、俺が出さない訳にはいかない。1人1人に小銀貨1枚を与えて、小魚以外の食べ物が買えるようにしてあげた。
「何と書いてあるんですか?」
「今のところダイオウイカの群れに襲撃されたと言うのが、漁師ギルドの見解らしい」
「ダイオウイカですか、確かに手ごわい相手ではありますが、ナーポリの荒くれ漁師が太刀打ちできない相手ではないんですがね」
「前代未聞の、海を覆い尽くさんばかりも群れだったそうだ」
「そんなに巨大な群れが、ナーポリの沖合に居座っているのですか?!」
「いや、どうやら海岸線にまで迫って来ているらしい」
「そりゃ一大事じゃないですか! あいつら人間だって海に引きずり込んで喰っちまいますよ」
(全長20m級の肉食イカだったな、セイ)
(ああ、1匹2匹なら熟練漁師1人でも倒せることが出来るが、百や二百の群れに船を囲まれたら、魔法を使えない漁師ではひとたまりもないだろうな)
(そうか、漁師の中にいる魔法使いは、低レベルの風魔法の使い手か水流魔法の使い手だったな)
(ああ、皆無とは言わないが、殺傷能力のあるような魔法使いは、冒険者になる事が多いからな)
(皆無ではないと言う事は、少数なら高レベル魔法使いで漁師をしている者がいると言う事か?)
(ふむ、細かな知識まではないな、ヴィゴールに聞いてみろ)
(そうだな、そうしよう)
「ヴィゴール、漁師の中に高レベルの魔法使いはいるのか?」
「そうですね、帆に風を当てる魔法使いや、海流を創り出す魔法使いの中でも、レベルが上がった者がいます。漁師を家業にする家から、魔法の才能がある子供が産まれる事もあります。比較的買い取り価格の高い魔魚や海生モンスターを専業に狩る、冒険者兼業の猟師もいるのです」
「なるほどね! 専業漁師ではなく、冒険者を兼業している漁師なのだな!」
「海中のモンスターを狩るのは至難の極みです! 魔魚やモンスターの移動は早く、船の上しか足場のない場所で戦わなければなりません。いえ、船を海中から攻撃されれば、碌な抵抗も出来ずに海に引きずり込まれてしまいます」
「なるほどね、それだと海上を歩く事が出来る、水自体を操る魔法使いか海流を操る魔法使いしか、海特化型の冒険者は務まらないな」
「はい、逆に言えばそのような魔法しか使えない魔法使いは、漁師を兼業するしかないのです」
「どう言う事だ?」
「魔魚や海生モンスターは、早々陸地に上がって権力者を攻撃したりしません。冒険者ギルドを通しての依頼は極端に少ないのです」
「なるほどね、仕事がなければ魔法を使えても食べて行けないのだな」
「はい、海特化型の魔法使いは、漁師ギルドに所属するか、兼業するしか安定した生活が出来ないのです」
「だから高レベルになっても、基本は漁師ギルドに所属しているのか」
「はい、討伐依頼もないのに、命懸けで強大な魔魚やモンスターを狩る必要などありません。確実に捕れるモンスターや魔魚・魚を獲るだけで、結構な金になりますから。それに駆け出しの頃から面倒見てくれた先輩や船長の恩をあだで返したら、それこそ誰にも信用されなくなります。生きて帰って来てる船は、そう言う高レベル魔法使いが乗船しているか、高レベル魔法使いが船長をしている船です」
「だが今回はさすがに領主が討伐依頼を出すだろうな」
「おそらくそうなると思われます。ナーポリの領主様は、漁業で街を発展させ、税収を格段に増やされて国内屈指の富裕貴族と成られました。この状況を指を咥えて見ているとは思えません」
「領主様から討伐依頼が来たぞ! 狩ったダイオウイカは自由に処分していい上に、1匹当たり大銀貨1枚の討伐金が支給されるぞ!」
情報通だろう冒険者が大声で新情報を披露したが、その途端冒険者ギルドの酒場やロビーでは、喧々諤々とした意見交換が始まった。
「なんだよ、それぽっちかよ!」
「ああそうだな、それっぽっちじゃ命なんぞかけられんぞ」
「やめたやめた、おりゃナーポリを出て他所の街に行くわ」
「まだそれは早計だぞ、応じる冒険者がいなけりゃ値上げして来るって」
「おいおいおい、そりゃあ読みが甘いぞ」
「どう言う事だ?」
「ここの領主は頭が切れるんだ、海を覆い尽くすようなダイオウイカの群れに高額の討伐金はかけられないと判断したんだよ」
「なるほどな、確かに何万何十万といるか分からないダイオウイカに、高額な討伐金を出せないな」
「多分次は、一旦個々のダイオウイカ討伐依頼をキャンセルして、この事件自体を解決する事に大金を出すだろうが、そんな巨大なダイオウイカの群れを全て討伐できる奴なんかいないよ」
「ああそうだな、俺もそう思うぞ」
「でだ、領主として真っ当な手順を踏んで冒険者ギルドに討伐依頼を出したが、冒険者ギルドが非協力的だと言う事で、領主権限の強制討伐命令を出すだろうよ」
「そりゃ不味いじゃねえかよ、拒否権なしの強制討伐命令が出されたら、死ぬと分かっていても海に出なけりゃいけなくなるぞ」
「だから今の内に街を出た方がいいんだよ、何十万ものダイオウイカの群れが襲ってくると分かった以上、ぐずぐずしてたら犬死だぞ」
「そうか、そうだな、急いで宿に戻って出発の準備だ」
「バカヤロウ、てめぇ~らそれでも冒険者か! 街の人々が困っている時に戦ってこそ冒険者だろう! その為に入会書に強制討伐命令を受ける文面があるんだろうが」
「へん、知った事かよ、命あっての物種なんだよ。それに今ならまだ強制討伐命令は出ていないからな、街を出ても何も問題も無いよ」
(また目立ってしまいそうだ)
(仕方ないだろうな、だがまあ海に群棲しているダイオウイカなら討伐も簡単だろう。だが何故なんだろうな、ダイオウイカの現物はもらえるんだから、依頼料が無くてもダイオウイカを売ればいいだろうに)
(我にも分からんな、ヴィゴールに聞いてみればよかろう)
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