初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第129話イータリ国・海の街:ナーポリ
イータリ国・海の街:ナーポリ
「すみません、ここが入城者の列ですか?」
「そうだ、アンタも冒険者か?」
「ええそうなんですよ、ただこの国は初めてくるんで、入城手続きに幾らかかるか分からなくて」
「そうか、入城税が必要だが持っているのか」
「ずっと狩りをしながら自給自足でここまで来たので、この国の貨幣を持っていないんですが、そんな場合はどうなるんですかね?」
「はぁ、俺がそんな事知る訳ないだろうが」
「そうですか、では通常の入城税は幾らなんですか?」
「小銀貨が1枚だ」
「そうですか、他国の貨幣でよければ払えそうですね」
「換金できそうな物を持ってないのか?」
「非常時に使う為の魔石があるんだけど、それは手放したくないんですよね」
「狩りをしながら旅して来たのなら、素材の1つや2つはあるだろうが?」
「ああ、それはあるんですが、入城前に換金できるのですか?」
「ボッタクリ価格だがな」
「ああ、なるほどね、入城したいけどお金のを持っていない者から、悪質な値段で素材を買い叩くんですね」
「そう言う事だ」
「う~ん、この国って冒険者や国民に厳しいと言うか、暮らし難いのですか?」
「はぁ? お前馬鹿か?」
「いや、俺結構いろんな国を渡り歩いているけど、入城税を支払わせるのにボッタクリで換金させる国った初めてなんですよ」
「どんだけ国や街に寄らずに来たんだ? イータリ国周辺の国は全部そうだぞ? お前なんか怪しいな!」
「いやいや、流れ流れてきた冒険者なら俺なような人間が多いですよ」
「そんな事あるかよ、俺だって中堅の冒険者だぞ、それなりに色んな冒険者と交流はあるんだ」
「いや~、ですがね、旅の冒険者を騙して殺し、財貨を奪うような冒険者ギルドは知らないでしょ?」
「へぇ? 馬鹿言え! そんな冒険者ギルドがあるはずないだろ」
「そうでもないんですよ、実は国や地方によったら結構あるんですよ」
「何て国だよ?」
「元と言う東方の強大な国なんですがね、領主の力が強く、冒険者ギルドを私兵化しているですよ」
「まあ冒険者ギルドが領主の影響を受けるのは当然だが、それがどうして冒険者を襲う事に繋がるんだよ」
「貧乏な冒険者は殺されたりはしないですよ、危険な依頼を安い金で押し付けられて、領主や冒険者ギルドの金蔓にされるだけですよ」
「裕福な冒険者が狙われるのか?」
「そうなんですよ、裕福と言う事は、それなりの実力者と言う事でしょ」
「まそうだな」
「待遇の悪い街と知ったら、とっとと出て行って、待遇のいい街を目指すでしょ」
「それは当然だな」
「だから、出て行かれる前に殺して身ぐるみはぎ取るのですよ」
「け! 反吐が出るぜ。だがまだ信じられないな、そんな下劣な冒険者ギルドも領主も、直ぐに噂になって誰もその街に近づかなくなるだろう」
「だからさ、逆に噂を撒くのですよ」
「どんな噂だよ」
「強力だが、恐ろしく財宝を貯め込んだモンスターが街の地下ダンジョンに生息している。多くの冒険者は、そのモンスターに返り討ちになっているってね」
「なるほど! 冒険者が誰1人街から戻らなくても、疑われ無いようにしているのか。だがそれだと、そもそも冒険者が立ち寄らなくなるだろう」
「街の周辺には普通に魔獣やモンスターは住んでいるから、それを狩る分には何の問題もないんですよ。それにな、もっと積極的な噂も流しているんですよ」
「どんな噂だ?」
「地下ダンジョンのモンスターに苦慮した領主は、モンスターを倒してくれた冒険者には、元の身分を問わずに娘の婿に迎え、子爵家の後継者にすると言う噂ですよ」
「ふへぇ~! そんな噂が流れていたら、むしろ腕に覚えのある冒険者の方が惑わされてしまうな!」
「そうなんですよ、悪辣な噂なんですよ。で、この街はどうなんですか?」
「あん? さっきも言ったろ、普通だよ、ふ、つ、う!」
「城門前の素材換金率が悪いんですよね」
「ああ、アンタの言った事が本当うだとしたら、そもそもアンタの普通の基準が分からん。少なくともナーポリの街は、周辺諸国を入れても普通の換金率だよ。城門前の換金所がボッタクリで、冒険者ギルドの正規買い取り所と差が大きいのは普通の事だよ」
「なるほど、確かにその通りですね。季節や直近の狩りの成否によって、素材の売買価格が大きく変動するのは普通ですし、民間素材買い取り所で、売り手と買い手が丁々発止の駆け引きをするのも普通ですね」
「そうだよ、この街は普通の街だよ。だがアンタ、そんなに騙されるのを気にするところをみると、結構な金持ちなんだな」
「気がついてるんだろ、街にも村にも寄らず、ナーポリの街まで辿り着いたんだ。実力もそれなりにある心算だし、売らずに貯め込んだ素材もそれなりにあるよ」
「お、言葉を直してきたな、下手に出てたがそれなりの実力者だとは分かっていたよ。大荷物も持っていないし、アイテムボックスの能力者か魔法袋を持っていると言う事だな」
「そう言う事だよ」
「ふう、それこそ危機感がないな。アイテムボックスにしても魔法袋にしても、単独の冒険者が持っていると知れたら、それこそ闇討ちされる危険があるぞ。と言う事は、今まで話していた事はホラ話、大嘘だと言う事だな」
「ばれたか」
「それくらいわかるよ! まあ入城の列に並ぶ間のいい時間潰しにはなったがな」
「だろ、結構愉しく話せたろ」
「ああそうだな、いつの間に随分列が前に進んだな」
「そうそう、冒険者ギルドは入場門から近いのか?」
「ああ近いぞ、入場門を入って直ぐ右手にあるぞ」
「運がいいな」
「そうでもないぞ、いや、運がいいのか」
「どう言う事だい?」
「冒険者が入城していい城門がここだと言う事だよ」
「なるほどね、職業によって使っていい城門が決められているのか?」
「そう言う事だよ、王侯貴族ならどの城門を使ってもいい事にはなっているが、王侯貴族ほど非常時以外は正門を使いたがるからな、庶民は正門を使えないよ」
「で、俺は運よく冒険者用の門を引き当てたとう事か」
「ああ、ここが冒険者が使う事を許されと門だと知らないで、1度でここに並んだのなら運がよかったな」
「確かにな」
「そろそろ俺の番だ、ヨタ話は止めさせてもらうぞ」
「ああ、付き合ってくれてありがとう」
「いや、俺も面白い話ができてよかったよ」
(随分と上手に話を作ったな)
(うん、まあ、昔から空想するのが好きだったからな)
(しかしよくまああれほどポンポンと嘘が言えるものだな)
(嘘では無いよ、みんなで愉しむ作り話だよ)
(ふむ、だが作り話ではあるが、全くないとは言えない話だな)
(ああ、この国も下手をすればそんな国になるかもしれない)
(領主が悪辣だったらか?)
(ああ、ナーポリの領主が悪辣な場合、下手に素材を売ってしまうと狙われる可能性がある)
(それでどうするのだ)
(入城税の事か?)
「次!」
(話す前に順番が来たな)
「はい!」
「冒険者だな」
「はい」
「証明書を見せろ」
「これです」
「はぁ? どこの国の証明書だ?」
「この街からはかなり遠方になります」
「しかし、レベル認定がK級などと、いい加減にも程があるぞ!」
「え~と、俺に言われましても」
「レベル認定は厳格にしてもらわんと困る、この証明書は信用できん!」
「え~と、レベルはともかく、冒険者として入城させてもらえませんかね」
「証明書が信用できん以上、冒険者とも認められん!」
「それでは魔法を見せると言う事で、冒険者と認めて頂けませんか?」
「剣を持っているのに魔法が使えるのか?」
「魔法剣士ですから」
「ふむ、魔法と剣技の両方でレベルを加算したのか?」
「さあ、冒険者ギルドのレベル認定は、僕にはわかりません」
「ちっ! 仕方ないな、やってみろ」
「ファイアボルト!」
「ほう! 中々の魔法だな、まあレベルは信用できんが魔法が使えるなら冒険者と認めてやろう。それで税金は払えるのか?」
「他国の銀貨しかないのですが?」
「はん? そんな事は認められん!」
「まぁまぁまぁ」
俺はテトラの小銀貨2枚を門番に握らせた
「すみません、ここが入城者の列ですか?」
「そうだ、アンタも冒険者か?」
「ええそうなんですよ、ただこの国は初めてくるんで、入城手続きに幾らかかるか分からなくて」
「そうか、入城税が必要だが持っているのか」
「ずっと狩りをしながら自給自足でここまで来たので、この国の貨幣を持っていないんですが、そんな場合はどうなるんですかね?」
「はぁ、俺がそんな事知る訳ないだろうが」
「そうですか、では通常の入城税は幾らなんですか?」
「小銀貨が1枚だ」
「そうですか、他国の貨幣でよければ払えそうですね」
「換金できそうな物を持ってないのか?」
「非常時に使う為の魔石があるんだけど、それは手放したくないんですよね」
「狩りをしながら旅して来たのなら、素材の1つや2つはあるだろうが?」
「ああ、それはあるんですが、入城前に換金できるのですか?」
「ボッタクリ価格だがな」
「ああ、なるほどね、入城したいけどお金のを持っていない者から、悪質な値段で素材を買い叩くんですね」
「そう言う事だ」
「う~ん、この国って冒険者や国民に厳しいと言うか、暮らし難いのですか?」
「はぁ? お前馬鹿か?」
「いや、俺結構いろんな国を渡り歩いているけど、入城税を支払わせるのにボッタクリで換金させる国った初めてなんですよ」
「どんだけ国や街に寄らずに来たんだ? イータリ国周辺の国は全部そうだぞ? お前なんか怪しいな!」
「いやいや、流れ流れてきた冒険者なら俺なような人間が多いですよ」
「そんな事あるかよ、俺だって中堅の冒険者だぞ、それなりに色んな冒険者と交流はあるんだ」
「いや~、ですがね、旅の冒険者を騙して殺し、財貨を奪うような冒険者ギルドは知らないでしょ?」
「へぇ? 馬鹿言え! そんな冒険者ギルドがあるはずないだろ」
「そうでもないんですよ、実は国や地方によったら結構あるんですよ」
「何て国だよ?」
「元と言う東方の強大な国なんですがね、領主の力が強く、冒険者ギルドを私兵化しているですよ」
「まあ冒険者ギルドが領主の影響を受けるのは当然だが、それがどうして冒険者を襲う事に繋がるんだよ」
「貧乏な冒険者は殺されたりはしないですよ、危険な依頼を安い金で押し付けられて、領主や冒険者ギルドの金蔓にされるだけですよ」
「裕福な冒険者が狙われるのか?」
「そうなんですよ、裕福と言う事は、それなりの実力者と言う事でしょ」
「まそうだな」
「待遇の悪い街と知ったら、とっとと出て行って、待遇のいい街を目指すでしょ」
「それは当然だな」
「だから、出て行かれる前に殺して身ぐるみはぎ取るのですよ」
「け! 反吐が出るぜ。だがまだ信じられないな、そんな下劣な冒険者ギルドも領主も、直ぐに噂になって誰もその街に近づかなくなるだろう」
「だからさ、逆に噂を撒くのですよ」
「どんな噂だよ」
「強力だが、恐ろしく財宝を貯め込んだモンスターが街の地下ダンジョンに生息している。多くの冒険者は、そのモンスターに返り討ちになっているってね」
「なるほど! 冒険者が誰1人街から戻らなくても、疑われ無いようにしているのか。だがそれだと、そもそも冒険者が立ち寄らなくなるだろう」
「街の周辺には普通に魔獣やモンスターは住んでいるから、それを狩る分には何の問題もないんですよ。それにな、もっと積極的な噂も流しているんですよ」
「どんな噂だ?」
「地下ダンジョンのモンスターに苦慮した領主は、モンスターを倒してくれた冒険者には、元の身分を問わずに娘の婿に迎え、子爵家の後継者にすると言う噂ですよ」
「ふへぇ~! そんな噂が流れていたら、むしろ腕に覚えのある冒険者の方が惑わされてしまうな!」
「そうなんですよ、悪辣な噂なんですよ。で、この街はどうなんですか?」
「あん? さっきも言ったろ、普通だよ、ふ、つ、う!」
「城門前の素材換金率が悪いんですよね」
「ああ、アンタの言った事が本当うだとしたら、そもそもアンタの普通の基準が分からん。少なくともナーポリの街は、周辺諸国を入れても普通の換金率だよ。城門前の換金所がボッタクリで、冒険者ギルドの正規買い取り所と差が大きいのは普通の事だよ」
「なるほど、確かにその通りですね。季節や直近の狩りの成否によって、素材の売買価格が大きく変動するのは普通ですし、民間素材買い取り所で、売り手と買い手が丁々発止の駆け引きをするのも普通ですね」
「そうだよ、この街は普通の街だよ。だがアンタ、そんなに騙されるのを気にするところをみると、結構な金持ちなんだな」
「気がついてるんだろ、街にも村にも寄らず、ナーポリの街まで辿り着いたんだ。実力もそれなりにある心算だし、売らずに貯め込んだ素材もそれなりにあるよ」
「お、言葉を直してきたな、下手に出てたがそれなりの実力者だとは分かっていたよ。大荷物も持っていないし、アイテムボックスの能力者か魔法袋を持っていると言う事だな」
「そう言う事だよ」
「ふう、それこそ危機感がないな。アイテムボックスにしても魔法袋にしても、単独の冒険者が持っていると知れたら、それこそ闇討ちされる危険があるぞ。と言う事は、今まで話していた事はホラ話、大嘘だと言う事だな」
「ばれたか」
「それくらいわかるよ! まあ入城の列に並ぶ間のいい時間潰しにはなったがな」
「だろ、結構愉しく話せたろ」
「ああそうだな、いつの間に随分列が前に進んだな」
「そうそう、冒険者ギルドは入場門から近いのか?」
「ああ近いぞ、入場門を入って直ぐ右手にあるぞ」
「運がいいな」
「そうでもないぞ、いや、運がいいのか」
「どう言う事だい?」
「冒険者が入城していい城門がここだと言う事だよ」
「なるほどね、職業によって使っていい城門が決められているのか?」
「そう言う事だよ、王侯貴族ならどの城門を使ってもいい事にはなっているが、王侯貴族ほど非常時以外は正門を使いたがるからな、庶民は正門を使えないよ」
「で、俺は運よく冒険者用の門を引き当てたとう事か」
「ああ、ここが冒険者が使う事を許されと門だと知らないで、1度でここに並んだのなら運がよかったな」
「確かにな」
「そろそろ俺の番だ、ヨタ話は止めさせてもらうぞ」
「ああ、付き合ってくれてありがとう」
「いや、俺も面白い話ができてよかったよ」
(随分と上手に話を作ったな)
(うん、まあ、昔から空想するのが好きだったからな)
(しかしよくまああれほどポンポンと嘘が言えるものだな)
(嘘では無いよ、みんなで愉しむ作り話だよ)
(ふむ、だが作り話ではあるが、全くないとは言えない話だな)
(ああ、この国も下手をすればそんな国になるかもしれない)
(領主が悪辣だったらか?)
(ああ、ナーポリの領主が悪辣な場合、下手に素材を売ってしまうと狙われる可能性がある)
(それでどうするのだ)
(入城税の事か?)
「次!」
(話す前に順番が来たな)
「はい!」
「冒険者だな」
「はい」
「証明書を見せろ」
「これです」
「はぁ? どこの国の証明書だ?」
「この街からはかなり遠方になります」
「しかし、レベル認定がK級などと、いい加減にも程があるぞ!」
「え~と、俺に言われましても」
「レベル認定は厳格にしてもらわんと困る、この証明書は信用できん!」
「え~と、レベルはともかく、冒険者として入城させてもらえませんかね」
「証明書が信用できん以上、冒険者とも認められん!」
「それでは魔法を見せると言う事で、冒険者と認めて頂けませんか?」
「剣を持っているのに魔法が使えるのか?」
「魔法剣士ですから」
「ふむ、魔法と剣技の両方でレベルを加算したのか?」
「さあ、冒険者ギルドのレベル認定は、僕にはわかりません」
「ちっ! 仕方ないな、やってみろ」
「ファイアボルト!」
「ほう! 中々の魔法だな、まあレベルは信用できんが魔法が使えるなら冒険者と認めてやろう。それで税金は払えるのか?」
「他国の銀貨しかないのですが?」
「はん? そんな事は認められん!」
「まぁまぁまぁ」
俺はテトラの小銀貨2枚を門番に握らせた
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