初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第120話「魔獣肉とタマネギの煮炒め」

「なぁ~主よ~」

「なんだい白虎」

「このタマネギってやつ本当にいるのか?」

「そうだな、人間には必要だと思うぞ」

「俺にはいらないと思うんだがなぁ~」

「白虎用はタマネギ抜きで出してやるよ、でも最初からタマネギなしだと、この味にはならないからな」

「そうか! 食べる時にタマネギと青ネギを抜いてくれるのなら何の文句もないぞ!」

「ミャア!」

「アグネスは寝に行かないのか? もうステーキと焼肉をお腹一杯食べたろ?」

「ミャミャミャウ!」

「いや何も試食は駄目って言っている訳じゃないんだよ。昨日までは食べると直ぐ寝ていたからね。眠くないか心配になっただけだよ」

「ミャウミャウミャミャミャ」

「うんうんうん分かったよ、寝てる間に新作料理を先に食べられるのが嫌なんだね」

「ミノルよ、よくアグネスに言っている意味が理解できるな」

「それは愛情だよ、セイ」

「よく恥ずかしげもなくそのような事を言い切れるな」

「父親が子供に対する愛情を恥ずかしがってどうするんだ!」

「はいはいはい、いいのか? 手が止まってるぞ、1番にアグネスに食べさせてあるのであろう」

「ミャウミャヤミャ!」

「もうできるからね、もうちょっとだけ待っててくれ」

「主~、俺の分は~」

「やかましいわ! 自分の分は自分で作れ!」

「ゴメンナサイ、ごめんなさい、御免なさい!」

「まあまあまあ、そう怒ってやるなセイ。白虎の分は肉が厚いから、その分味が染み込むのに時間が掛かるんだ、出来たら出してやるから待ってろ」

「主~、ありがとうよ~」

「その代わりと言っちゃぁなんだが、何時ものように色んな魔獣肉やモンスター肉を使って、同じ料理を試作してくれよ」

「わかっているよ~、ほら、ちゃんと作っているだろ」

そうなのだ、何のかんの言っても白虎は何時も料理を手伝ってくれる。御蔭でどんどんどんどんアイテムボックスに試作料理が溜まっている。料理が作れない状況下に追い込まれたり、大人数に直ぐ料理を出さなければいけない状況では、備蓄料理が大いに役立ってくれるだろう。

だがまあなんだ、そもそも追い込まれないことが1番大切なんだが。

「魔獣肉とタマネギの煮炒め」
牛かたロース(薄切り):40kg
(各種魔獣肉やモンスター肉)
タマネギ       :大300個
(異世界野草)
青ネギ        :300束
(異世界野草)
バター        :大さじ200杯
(魔獣脂やモンスター脂)
小麦粉        :大さじ200杯
(異世界穀物粉)
ブイヨン       :200カップ
ワインビネガー    :大さじ100杯
塩          :大さじ200杯
こしょう       :適量


1:魔獣肉は、前もって幅5~6Cmほどの食べやすい大きさに切っておく。
(リュウや白虎用はそれぞれにあった厚みに切る)
2:タマネギは、縦半分に切った後、横にして半円の薄切りにする。
(異世界野草でタマネギに似た物を代用)
3:煮込み用の厚手の鍋にバターを入れて溶かし、タマネギを褐色になるまでゆっくりと炒める。
4:タマネギがねっとりしてきたら、小麦粉を振り込み、粉にも色がつくくらいまで炒める。
:ブイヨンを加え、ワインビネガー、塩、こしょうで味付けする。
:弱火でコクが出るまで弱火で長時間煮詰めます。
5:煮汁にとろみが出たら肉を加える。
:肉に味がしみ込むまで中火で煮込む。
(リュウと白虎用はタマネギを取り出し煮汁だけで煮炒めする)
6:青ネギを刻む。
7:全体に味がなじんだら器に盛って刻み葱を振って完成。

「ミノル、このタマネギの代用野草をどうする?」

「思い当たる野草はないのか?」

「似た野草はあるが、これほど大きくならんし、鱗茎もこれほど重なっておらん」

「それはこの辺に生えているのか?」

「いや、もっと雨の少ない乾燥した地方に生えている」

「では雨が多いビランやテトラ周辺で栽培するのは無理だな」

「いや栽培は出来るぞ、ただし日照時間が14時間以上ないと無理だし、熱くなり過ぎると枯れてしまう」

「そうか、だったら森林を開墾するか、山岳部の森林がなく日照時間が長い場所で栽培さすかだな」

「分身体に管理させるのならともかく、普通はそのような危険な場所に住もうと思う人間はいないぞ」

「危険なのか?」

「高原より高い山岳地帯など、高レベルモンスターの巣窟だぞ」

「困ったな、そうなると森林を開墾するしかないのか?」

「森林を開墾するのはいいが、環境の好い場所なら、人間はタマネギもどきを作るより、穀物を作りたいのではないか」

「そうか、そうだな、そうなるだろうな」

「まあこの料理をこの世界で流行らすのは諦めろ」

「う~ん、そうか、諦めるしかないか、どうにもならんかな?」

「まあ人間族が増えすぎて、危険な場所にまで侵出するようになれば、穀物を栽培できずに他の代用品としてタマネギもどきを作るようになるかもしれんがな」

「そうか、そうなるか、だがセイは人間族が増えすぎるのには反対なんだよな?」

「我は反対だが、この世界は原初の人間が仕切っている人間の世界だ。増えすぎた人間が世界を滅ぼさないのなら、どれほど増えても原初の人間は気にしまい」

「なるほどね、そうなるともっともっと人間の勢力圏は広がる可能性が有るのだな」

「ああ、前にも言ったが、増えた人間族が餓えない数の魔獣やモンスターは必要なのだ」

「だがなセイ、俺の元いた世界では何十億もの人がは暮らしていたぞ」

「だが多くの人間が互いに殺し合い餓えていたのであろう」

「そうだな、俺は平和で豊かな国に産まれる事が出来ていたが、そうでない国も多かったな」

「我もミノルの記憶と知識を得ているから、この世界にも日本の多くの事を取り入れる事で、魔獣やモンスターを多少絶滅させても大丈夫な事は理解している。だがミノルは本当にそれで好いのか、そう言う世界を望んでいるのか?」

「いや、分からん、そもそもそんな事を真剣に考えた事はない」

「だったら考えろ。考えるのが嫌で、更に自分のしたことで多くの人が不幸になったり死んだりするのが嫌なら、この世界の常識や自然の範囲から逸脱するな」

「そうか、そうだな、俺の性格なら事なかれ主義が1番合っているだろうな」

「事なかれ主義か、ミノルの世界では駄目なやり方と思われているんだったな」

「そうだな、表向きはそう言われているが、争い事で自分が傷ついてしまう優しい人間には、いい方法だと俺は思っているよ」

「ならばそうしろ、たかが料理の事ではないか」

「たかが料理ではないのだがな、衣食住は大切だぞ」

「餓える訳ではあるまい、それにミノルは食べることが出来るではないか。異世界に流行らせたいと言うのはミノルの野望でしかないのではないか?」

「そうか、そうだな、確かに俺の野望でしかないな」

「高レベルの魔獣やモンスターなら、特に料理に手を加えなくても美味しいし、栄養とやらもバランスが取れておるではないか」

「まあそうだな、血肉を余すとこなく使えば、栄養のバランスもとれているんだな」

「今回は諦めろ、少なくともテトラとビランでタマネギもどきを人間に栽培させるのは無理だ。ミノルがどちらかに永住して、常に穀物よりも高値で買い取ってやるのなら別だがな」

「そうか! タマネギもどきを使った料理自体が流行り、高価格で取引されればいいんだな」

「そうれはそうだろう、これはミノルの知識の中にあったことだぞ?」

「いやそうなのだがな、テトラの見習村や開拓村で考えていたから無理だと思ったけど、別格で豊かなビランで高級料理に使うならいけるんじゃないか?」

「それはそうかもしれないが、その豊かなビランで誰がタマネギもどきを作るんだ? また見習や奴隷を助けてやらすのか?」

「いや、その、そうだな」

「止めておけ、止めておけ、これ以上この世界の成り立ちや国の制度に手出しするんじゃない」

「そうか、そうなのかな、そうすべきなのかな」

「主~、まだこの料理作るのか? それの俺の分はまだ出来ないのか?」

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