初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第86話話し合い
「なるほど、そう言う事でしたら今日は10頭買い取らせていただきたいのですが、それでよろしいですか?」
「ええ、10頭買い取りして頂ければ十分です」
個室で密談と言うありがちな話にはならず、昨日と同じように解体場で皆集まって立ち話と言う、ざっくばらんな話し合いになった。正式な契約書の署名は別の場でするのだろうが、多くの人目にさらされた場での話し合いは好感が持てる。
今この場で直接話し合っているのは、俺とギルドマスターに解体長、更に俺の担当官になったと言うオードリーに地下の嵐のリーダー・ノドと言う組み合わせだ。ノドは余分な気もするが、俺とギルドの話し合いの証人になってくれると言う意味では邪魔と言うほどでもない。何より解体場には解体役のギルド職員も沢山いるし、解体中の獲物査定に同席している冒険者も多い。これほど公明正大な場も少ないから、値段交渉するのに相応しいとも言える。
ただギルドとしても、昨日10頭のジャイアント・レッドベアーを完売したばかりだから、もう10頭を今日完売できるとは思えないとのことで、在庫として抱えれるのは10頭が限界と言う話になった。だが買い取り値段は昨日と同じで、俺も解体に同席した上で昨日と同じ査定基準で買い取ってくれると言う事だ。在庫にすると言う話だったから、値切られるかもしれないと思ったが、良心的な対応をしてくれた。
「それで地下の嵐達はミノルさんとチームを組みたいとのことですが、ミノルさんに有利になる物を提供できるのですか?」
「そうですね、正直思惑が狂いました」
「どう言う事ですか?」
「我々としても、ジャイアント・レッドベアーをこれほど簡単に狩れる人とは思えなかったので、協力して狩りをする心算だったのです」
「ではチームを組むと言う話は、無かったことでいいのですね」
「ただ問題はあの洞窟なんです」
「そうですね、あの洞窟は早く解放してもらいたいですね」
「どういうことですか」
買い取り交渉が終わり、解体長以下の解体チームがジャイアント・レッドベアーの解体を始めたが、俺は横目でそれを見ながらギルドマスターとノドの話を聞いていた。だがどうも、洞窟に住み着いたジャイアントレッドベアーよりも、洞窟自体が大切なような口ぶりだったのだが、対して興味もないので無視していたが、オードリーが確認してしまった。
オードリーは仕事熱心なようで、俺の担当官として事情を確認する心算のようだ。だが俺としたら、想定以上の食材と大金が手に入ったから、これ以上余計な事に係わりたくないのだ。
「オードリーには話が行っていなかったか? あの洞窟は鉱山として有望でな、国としてドワーフ族に開発と精錬を委託する話が有るのだよ」
「そうだったんですね、それでジャイアント・レッドベアーが邪魔なんですね」
「ああ、正式な依頼はまだなんだが、ドワーフ族としても新たな鉱山を任されるかどうかは死活問題でな、俺達で予備調査をする事になってな」
「ではミノルさんに討伐要請を出されればいいのではありませんか?」
「本来はそうすべきなのだが、まだ国から正式な依頼が来ていないのでな、国から予算が出ない以上ギルドは依頼を出せないんだよ」
「そうですね、ギルドが損する訳にはいきませんよね」
やれやれ、さすがにギルドマスターともなれば、腹芸も出来るし先読みもできる。今日俺が依頼したジャイアント・レッドベアーの買い取りを承諾すれば、多少の在庫は抱えるかもしれないが、討伐依頼を出さなくても、俺がジャイアント・レッドベアーを狩る可能性があると考えたのだろう。
さてどうすべきだろう?
(ミノル、直ぐに答えを出さなくていいのではないか)
(どう言う事だ?)
セイが秘かに念話で話しかけて来たから、俺も念話で聞き返すことにした。
(ジャイアント・レッドベアーを試食してみて、美味しかったら狩ればいいし、不味ければ断ればいいじゃないか)
(セイは身も蓋もない事を言う)
(だが事実であろう、在庫の多いジャイアント・レッドベアーだが、美味しいのならリュウや白虎の食材にすればいい、巨大な分だけ使い勝手が有るぞ)
(確かにそうだな、特に美味しい部位が有るのなら、アグネスも喜んでくれるかもしれないな)
「なぁ、俺を無視して話を進めても意味ないんじゃないか」
「そうですね、ミノル様抜きで話しても意味ないですね」
「そうだな、パーティーに連合を組ませて討伐させるかどうかも、国の予算次第だからな」
「それはそうなんだが、ドワーフ族としては、生産精錬量に応じて歩合を出してでも討伐依頼を出してもらいたい」
「ノド、それは無理しすぎだろう」
「ですがマスター、新たな村を立ち上げるのはドワーフ族として死活問題なんです」
「それはあくまで有望な鉱山であった場合だろう?」
「有望な鉱山であれば何よりの話ですが、それ以前に住み易い広大な洞窟が必要なんです」
「それほどなのか? 今有る鉱山街を拡張すればいいのではないのか?」
「洞窟があまりに深く長くなると、通風孔の問題が出て来てしまうのです。通風孔が多くなり過ぎると、安全面防衛面で問題が出てしまうのです」
「そうか、ドワーフ族は洞窟でないと妊娠が難しかったのだな」
「ええ、精神的な安心感が影響していると言われていますが、地上の街に住むドワーフ族の妊娠率が極端に悪いのです」
「悪いがドワーフ族の事情は俺には無関係だ、取りあえず話にあった鉱山収入の歩合率の話を書面にしてくれ。俺がジャイアント・レッドベアーを狩るかどうかはその後の話だ」
「ええ、10頭買い取りして頂ければ十分です」
個室で密談と言うありがちな話にはならず、昨日と同じように解体場で皆集まって立ち話と言う、ざっくばらんな話し合いになった。正式な契約書の署名は別の場でするのだろうが、多くの人目にさらされた場での話し合いは好感が持てる。
今この場で直接話し合っているのは、俺とギルドマスターに解体長、更に俺の担当官になったと言うオードリーに地下の嵐のリーダー・ノドと言う組み合わせだ。ノドは余分な気もするが、俺とギルドの話し合いの証人になってくれると言う意味では邪魔と言うほどでもない。何より解体場には解体役のギルド職員も沢山いるし、解体中の獲物査定に同席している冒険者も多い。これほど公明正大な場も少ないから、値段交渉するのに相応しいとも言える。
ただギルドとしても、昨日10頭のジャイアント・レッドベアーを完売したばかりだから、もう10頭を今日完売できるとは思えないとのことで、在庫として抱えれるのは10頭が限界と言う話になった。だが買い取り値段は昨日と同じで、俺も解体に同席した上で昨日と同じ査定基準で買い取ってくれると言う事だ。在庫にすると言う話だったから、値切られるかもしれないと思ったが、良心的な対応をしてくれた。
「それで地下の嵐達はミノルさんとチームを組みたいとのことですが、ミノルさんに有利になる物を提供できるのですか?」
「そうですね、正直思惑が狂いました」
「どう言う事ですか?」
「我々としても、ジャイアント・レッドベアーをこれほど簡単に狩れる人とは思えなかったので、協力して狩りをする心算だったのです」
「ではチームを組むと言う話は、無かったことでいいのですね」
「ただ問題はあの洞窟なんです」
「そうですね、あの洞窟は早く解放してもらいたいですね」
「どういうことですか」
買い取り交渉が終わり、解体長以下の解体チームがジャイアント・レッドベアーの解体を始めたが、俺は横目でそれを見ながらギルドマスターとノドの話を聞いていた。だがどうも、洞窟に住み着いたジャイアントレッドベアーよりも、洞窟自体が大切なような口ぶりだったのだが、対して興味もないので無視していたが、オードリーが確認してしまった。
オードリーは仕事熱心なようで、俺の担当官として事情を確認する心算のようだ。だが俺としたら、想定以上の食材と大金が手に入ったから、これ以上余計な事に係わりたくないのだ。
「オードリーには話が行っていなかったか? あの洞窟は鉱山として有望でな、国としてドワーフ族に開発と精錬を委託する話が有るのだよ」
「そうだったんですね、それでジャイアント・レッドベアーが邪魔なんですね」
「ああ、正式な依頼はまだなんだが、ドワーフ族としても新たな鉱山を任されるかどうかは死活問題でな、俺達で予備調査をする事になってな」
「ではミノルさんに討伐要請を出されればいいのではありませんか?」
「本来はそうすべきなのだが、まだ国から正式な依頼が来ていないのでな、国から予算が出ない以上ギルドは依頼を出せないんだよ」
「そうですね、ギルドが損する訳にはいきませんよね」
やれやれ、さすがにギルドマスターともなれば、腹芸も出来るし先読みもできる。今日俺が依頼したジャイアント・レッドベアーの買い取りを承諾すれば、多少の在庫は抱えるかもしれないが、討伐依頼を出さなくても、俺がジャイアント・レッドベアーを狩る可能性があると考えたのだろう。
さてどうすべきだろう?
(ミノル、直ぐに答えを出さなくていいのではないか)
(どう言う事だ?)
セイが秘かに念話で話しかけて来たから、俺も念話で聞き返すことにした。
(ジャイアント・レッドベアーを試食してみて、美味しかったら狩ればいいし、不味ければ断ればいいじゃないか)
(セイは身も蓋もない事を言う)
(だが事実であろう、在庫の多いジャイアント・レッドベアーだが、美味しいのならリュウや白虎の食材にすればいい、巨大な分だけ使い勝手が有るぞ)
(確かにそうだな、特に美味しい部位が有るのなら、アグネスも喜んでくれるかもしれないな)
「なぁ、俺を無視して話を進めても意味ないんじゃないか」
「そうですね、ミノル様抜きで話しても意味ないですね」
「そうだな、パーティーに連合を組ませて討伐させるかどうかも、国の予算次第だからな」
「それはそうなんだが、ドワーフ族としては、生産精錬量に応じて歩合を出してでも討伐依頼を出してもらいたい」
「ノド、それは無理しすぎだろう」
「ですがマスター、新たな村を立ち上げるのはドワーフ族として死活問題なんです」
「それはあくまで有望な鉱山であった場合だろう?」
「有望な鉱山であれば何よりの話ですが、それ以前に住み易い広大な洞窟が必要なんです」
「それほどなのか? 今有る鉱山街を拡張すればいいのではないのか?」
「洞窟があまりに深く長くなると、通風孔の問題が出て来てしまうのです。通風孔が多くなり過ぎると、安全面防衛面で問題が出てしまうのです」
「そうか、ドワーフ族は洞窟でないと妊娠が難しかったのだな」
「ええ、精神的な安心感が影響していると言われていますが、地上の街に住むドワーフ族の妊娠率が極端に悪いのです」
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