初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第66話メガラニア1

今日も夜明け前に起き出し、城壁を密かに越えて冒険者ギルドの見習い寄宿舎に来てみたが、見習い全員が起き出して狩りの準備を整えていた。

まだ幼い子供と言っていい者もいるが、年長者が起こしてやって準備も手伝ってやっている。自分が小学生の低学年だったころ、分団児童会の集団登校で年長のお兄さんお姉さんに世話してもらっていたのを思いだした。

冒険者パーティーに放り込まれ、虐待とも言える待遇で扱き使われていたのが、反面教師になっているのかもしれない。携帯食として使えるように、ファングラットとホーンラビットの肉が焼き冷まされている。狩場に着くまで行軍しながら食べる心算だろう、生きて行く上で必要不可欠な食料確保が狩りである以上、見習達の狩りに対する思い入れが強いことを改めて思い知らされた。

街の城門を出て、昨日よりも遠くの狩場に向かったのだが、当然の話なのだが道中で鳥類を見かける。種族を全滅させる気など毛頭ないのだが、今日明日にも一旦この街を離れると言ってしまった以上、見習達にまとまった食料を渡しておきたい。だから見かけた鳥類は手当たり次第に魔法で首チョンパして、見習達に回収させた。当然の事なのだが、昼食を作る際に必要な薪・野草・香草・キノコ・果物も集めさせながら行軍した。

「御師匠様、そろそろ狩場でございます」

「そうか、偵察の者達に細心の注意を払うように指示しなさい」

「はい!」

臨時とは言え隊長職を与えられたことで、たった1日2日でもイルオンは急速に成長したようだ。実際に多くの魔獣に止めを刺した事で、レベル自体も上がっているのだろう。これは見習達全員に言える事でもあるのだが、イルオンだけではなくローザやジェミニと言った班長職を与えられた者ほど成長が著しい。

(ミノル、マップとリサーチで調べないのか?)

(分かっているよ、だけどセイ、出来る限り魔法に頼らず見習達の実力で戦わせてやりたいんだ)

(昨日何時でも治せるし蘇らせればいいと言ったのとは矛盾するが、事前に調べられるだけ調べてやった方がいいぞ。斬られたり突かれたりするくらいなら大丈夫だが、喰い殺されたら精神的に立ち直れなくなるからな)

(今日の魔獣はその危険があるのか?)

(いや、昨日の魔獣にもその危険はあったのだが、ちょっと人間に対する配慮が欠けていたのだ)

(随分と人間に優しくなったのだな)

(デュオとしてミノルとシンクロしているからな、ミノルに余裕が出て来て優しくなれば、自然と我も優しくなるのだよ)

(おいおいおい、昨日までの俺が冷たかったみたいじゃないか?)

(言ったろ、ミノルに余裕がなかったと)

(そうか・・・・・突然異世界に連れて来られたんだから、余裕がなかったのは仕方なよな、じゃあ余裕が出来たのならそれに相応しい態度をとらせてもらうよ)

「イルオンが調べてくれたように、この辺にはメガラニアと言う魔獣がいるようだな」

「はい、1度パーティーで討伐に来た事あるのですが、あまりに数が多くて危険なので、討伐を諦めて撤退しました」

俺はセイのアドバイス通り入念なリサーチをして、見習達が喰い殺される事のないように、十二分の注意と支援をした上で、午前中一杯1組ごとに練習狩りをさせた。

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