「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第4話

「聖女エルサはヴィンセントとの婚約を解消すると言うのだな」

国王ウィリアムが、不機嫌を隠すことなく苦々しそうに話しかけてきました。
これ以上私を怒らせてどうするつもりでしょうか?
この国を滅ぼした愚王として、歴史に名を残したいのでしょうか?
まあ、いいです。
私は王家も王国も半ば見放したのです。
王家とこの国の命運は、王家で決めればいいのです。
私が自分を犠牲にして、延命させる義務などありません。

「はい、ウィリアム国王陛下」

「今までヴィンセントに貸していた金と利息を、余に払えと言うのだな?」

ケチでバカな国王。
払わないで済ます気なのは顔を見れば分かります。
守護神様の聖女に博打の負け金を建て替えさせて払わなかったら、博打の守護神様の怒りを買う事も理解できないのですね。
でも、これほどバカだったでしょうか?
もう少しましだったと記憶しているのですが。

「王太子と婚約を継続し、王妃になれば、この国の資産が全て聖女のモノになる。
それではダメなのか?」

「他国の王族や貴族との賭けに負け、私を借金のかたに売り払おうとしたバカと、結婚しろと申されるのなら、この国の守護神様も一緒に他国に行かれるでしょう。
国王陛下はその程度も理解できないほどボケられたのでしょうか?」

あまりにも愚かな事を言いだすので、確認してみました。
適当に話して、自分に有利な方に会話を誘導する事など簡単なのですが、それでは国王がボケたのか誰かに唆されているのか分かりません。
それを確認しておかないと、この国を見捨てる決断が鈍ります。
王家や貴族などどうなっても構いませんが、民を見殺しにするのは少々胸が痛んでしまうのです。

「なに?!
余を愚弄するか!
守護神様の聖女であろうと、国王を愚弄する事は許されんぞ!」

これは、誰かに唆されているか、洗脳されていますね。
ボケたという可能性も捨てきれませんが、聖女である私が、守護神様がこの国から去ると言っても、恐怖することなく怒りをあらわにするなんて、正常な判断力を失っているとしか思えません。

「近衛騎士!
陛下は正常な判断を失われている。
確保して搭に入っていただけ。
このままでは国が滅ぶことは理解できるだろう」

「「「「「は!」」」」」

第二王子のジュリアン殿下は、まだまともなようですね。
まだ洗脳されていないのか、それともジュリアン殿下が、国王とヴィンセントの糞野郎を洗脳して操っていたのか?
自分が王になりたくて、父親のウィリアム国王と兄のヴィンセントを狂わせた可能性もあるのです。
これは、今からが本当の勝負なのかもしれません。



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