「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第12話

「今のところレイノルド伯爵夫人には、西方の毒の反応しかありません。
ですが今持っている道具だけでは、調べるのも限界があります。
後日もっと精密な道具と試薬を用意して、詳細に調べさせてもらいます」

「お願い致します」

「メリッサご典医。
必要な素材や試薬で入手困難なモノがあるなら、私達も探します」

「分かりました。
集めてもらいたい素材や試薬の名簿を、後で弟子に届けさせます」

「「はい!」」

メリッサご典医の診断は信用できます。
義母上と義父上が縋るような目で見ておられます。
特殊な検査をしてでも、誤診見落としを防ごうとされていますが、そのためには多大な費用と時間が必要なのでしょう。

「今のところレイノルド伯爵には、四つの毒薬反応がありました。
これだけなら、一年あれば毒は抜けます。
ただ西方の毒と同じように、知られていない特殊な毒を盛られている可能性もありますから、夫人と同じように詳細に調べさせてもらいます。
これは大切な事ですから、くどいですが、もう一度申し上げておきます。
絶対に治療薬を使わないでください。
他の毒が身体に残っていると、見つかった毒の常識的な治療をする事で、不妊が固定する可能性があります。
このような事を仕掛ける卑怯下劣なモノです。
それくらいの罠は、悪意でしかけている可能性があります。
それと治療薬の純度によっても、取り返しのつかない後遺症を残す可能性もありますから、絶対に守ってください」

「「はい!
絶対に先生の指導に従います」」

義父上と義母上が必死です。
それはそうでしょう。
もしかしたら我が子を抱けるかもしれないという、希望が見えてきたのです。
メリッサご典医にすがって当然です。

それに、メリッサご典医の慧眼と話し方が凄いです。
確かにあの悪辣非道なダーシィなら、毒を盛っている事を知られた時の対策はしていて当然です。
義父上と義母上を絶望の淵に叩き落とす方法を使うというのも間違いありません。
それを話すことで、焦った義父上と義母上が、耐えきれずに治療薬を使う事を防ごうとされているのです。
まさに名医です!

「レイノルド伯爵閣下!
自白いたしました。
全てを自白いたしました」

「いえ、気をつけてください。
最も悪質な毒物だけを隠している可能性もあります。
殺さず尋問を続けてください。
取り返しのつかないことになるのだけは、防がなければいけます」

拷問官が報告に入ってきましたが、メリッサご典医が遮ります。
確かにその可能性は否定できないですね。

「分かりました、メリッサご典医
全て先生の指示を守ります。
ですから、なにとぞ、なにとぞ、お願いいたします」

「任せてください。
全身全霊を込めて治療させていただきます」

診断と治療方針はある程度定まりました。
次は報復です!

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