「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第10話

「その者を捕えなさい!
自害させてもいけません!
生かして捕えなさい!」

「「「「「はい!」」」」」

義母上の侍女達が一斉に動いてくれました。
逃げようとした侍女を捕え、自害できないように口にハンカチを詰め、手足も縛ってしまいました。
義母上の侍女達もよく訓練されています。
その侍女達が、刺客が入り込んでいることに気がついていなかったのです。
二流だと思っていましたが、一流なのかもしれません。

「メリッサご典医をお呼びして。
急いで来ていただいて、毒の調査をしてもらって。
義父上にも伝令を走らせて。
義母上が毒殺されそうになったとお伝えして、拷問官を連れてきていただいて」

私は思いつく限りの手を打ちました。
義父上は超がつくほどの愛妻家です。
義母上が暗殺されそうになったと聞けば、全てを捨てて駆けつけられます。
実行犯を生きて捕まえたと聞けば、背後にいる黒幕を見つけるために、情け容赦せずに激烈な拷問をされるでしょう。

「申し訳ありません、お嬢様。
私の知る毒は入っておりませんでした。
ですがこの者は逃げ出そうとしました。
必ず何かの毒が含まれているはずです」

その事は私も分かっていました。
なにもなければ逃げる必要などないのです。
それと、義母上や私に出す前に、侍女達は毒見したはずです。
優秀な義母上の侍女が、見逃してしまった毒です。
特殊な毒なのは明白でした。
じりじりするような時間が過ぎて、メリッサご典医と義父上が来てくださいましたが、それからの事は驚きの連続でした。

「レイノルド伯爵。
レイノルド伯爵夫人。
これはとても恐ろしい毒でございます。
この毒は西方にしか生えない茸から抽出精製される毒で、子供を生めなくする悪質な毒でございます」

「わぁあああああああ!
毒!
毒のせいで、私は子供が授からなかったのですか?!」

義母上が慟哭されています。
魂が泣き叫んでおられます。
義父上も怒りに打ち震えておられます。
お二人が子供が授からない事でどれほど苦しんでこられたか、私は知っています。
特に義母上が、モンタギュー公爵一族一門から、非難され陰口も言われてこられた事を、私はよく知っています。

それが、ダーシィの陰謀だったのです。
自分の子供アイラを後継者にするために、義母上に不妊の毒を盛り続けたのです。
これほど下劣なおこないはありません。
絶対に許せる事ではありません。
ダーシィとアイラは、卑怯卑劣な手段を使ってでも、殺さなければいけません。
国王の願いなど知った事ではありません。
ですがその前に、どうしても確認しておかなければいけない事があります。

「メリッサご典医。
義母上は治るのでしょうか?
毒を抜き身体を元に戻す事は可能なのでしょうか?」

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