「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第2話

「セオドア!
ダーシィ!
お前達に親の資格はない。
オリビアの親権を剥奪する!」

「それは横暴過ぎます、父上」
「そうですわ、義父上。
オリビアは私が腹を痛めて生んだ子です」

「だったら何故虐待する。
私が何も気づいていない愚か者だとでも思っていたか!」

「そ、そ、そんなことはありません。
父上を愚か者だなんて、一瞬たりとも思ったことはありません!」
「そうですわ、義父上。
これは誰かの讒言でございます。
子を産めない石女の妬みによる讒言です!」

「黙れ腐れ女!
それ以上腐った口を開けば、一族の当主として幽閉するぞ!」

お爺様の怒りは激烈で本気でした。
愚かな父も、極悪非道の母も、口もきけなくなるほどの気魄でした。
性根が卑怯で憶病な父は、ガタガタと震えています。
でも母は、蛇のように冷たく残虐な眼でお爺様を睨んでいます。
お爺様に害が及ばなければいいのですが……

「オリビアに対する虐待は明らかだ。
医師も診断書を出してくれた。
文句はないな?」

「……はい」

お爺様に言われて、父は小さく返事しました。
もい逆らう勇気も気力もないでしょう。
ですが母は……

「それは躾です。
親が子供を躾するのは当然の事です。
一族の当主であろうと、義父上に口出しされる覚えはありません。
そですね、貴男?!」

「くっくっくっくっ。
お前のような腐れ外道なら、そう言うと思っていたよ。
入っていただけますか、ご典医メリッサ殿」

「はい、モンタギュー公爵様」

父と母が驚いています。
父などはこの世の終わりのような顔をしています。
もう貴族としての人生が終わった事が分かったのでしょう。
でも、母は、いえ、ダーシィは、この期に及んでまだお爺様を睨みつけています。
ご典医のメリッサ殿を睨んでいます。

「国王陛下と貴族院への証明書を出していただけますね?」

「はい、今の発言。
躾として自らやったという証言と共に、エミリーという者が詳細に記録した日記を添えて、国王陛下と貴族院に提出させていただきます」

これで父と母の貴族としての人生は終わりました。
お爺様の跡を継いで、公爵になるという野心も潰えます。
それどころか、伯爵の爵位すら奪われるかもしれません。
もともとマクリント伯爵位はモンタギュー公爵家の従属爵位です。
お爺様と伯父様の好意で貸し与えられていただけです。

それなのに、ダーシィはジュリア伯母様を虐め続けました。
その言動は、私から見ても目に余るものがありました。
それが許されてきたのは、伯父様と伯母様に御子がなく、モンタギュー公爵家の跡継ぎになるべき子供を生んだのが、ダーシィだけだったからです。

でも私が伯父様と伯母様と養子になれば、全ては変わります。
状況が天と地ほど入れ替わるのです。
もう父と母、いえ、セオドアとダーシィの逆転の眼はありません。


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