「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第39話

「リポン侯爵に不服はないのですか?」

「ありません。
むしろ女王陛下にお聞きしたいです。
私でいいのですか?
私は幼い頃に何度も殺されかけて、性格が歪んでいます。
猜疑心が強く敵対する者に容赦がありません。
女王陛下のような、慈愛の心を持った方の伴侶にはふさわしくありません。
そんな私でいいのですか?」

「なにを言っているのです。
王侯貴族に恋愛結婚など許されません。
共通の利益がある家に生まれた者が、責任を果たすために結婚するのです。
それにはリポン侯爵は最適の相手です。
リポン侯爵は政略も軍略も魔力も私以上です。
これから女皇帝を名乗る私には、皇室の血を引くリポン侯爵が必要です。
私とリポン侯爵の子供ならば、皇帝を名乗るにふさわしい魔力を持った子供が生まれてくれるでしょう。
それよりどうなのです?
私の事が嫌いなら、他に好きな人がいるのなら、はっきり言いなさい。
人の恋人や夫を奪う趣味はありません。
嫌なら他の提案を両皇国にしなければいけないのです」

「いえ……お慕いしていました。
私は女王陛下を心からお慕いしています。
公爵家の娘として責任を果たそうとされるお姿に、貴族の理想をみました。
不可触民を助けようとされるお姿に、感銘を受けました。
家臣領民を少しでも豊かにしようとされるお姿に、私の進む道を見つけました。
女王陛下、いえ、女皇帝陛下の配偶者になりたいです」

唐突の告白に、正直衝撃を受けました。
頭を鈍器で叩かれたように感じてしまいました。
ですがこの告白も、フェルドナンドの策略かもしれません。
完全に信じることなどできません。
ですがそんな事はどうでもいいことです。
女皇帝としては、フェルドナンドが夫に最適です。
他の選択肢などありません。

この後の話はびっくりするほど順調に進みました。
私は三カ国の統治者として皇帝になる事を宣言しました。
サンアリステラ皇国とアメリア皇国が即座に承認したことで、どの国も反対しませんでした。
国名をサンファンケーン王国からサンファンケーン皇国に改めました。

そしてフェルドナンドがサンアリステラ皇国の皇族であること、ドミニネック皇帝の大叔父であることを明かして、リポン侯爵をリポン公爵に爵位をすすめ、私の配偶者としました。
ですがそれだけでは、アメリア皇国との関係が希薄過ぎます。
サンアリステラ皇国とアメリア皇国が、何重にも婚姻関係を結んでいるだけではダメなのです。

私はエヴァの立場を変えました。
私の叔母であることを大々的に公表し、エヴァ公爵としました。
そしてエヴァには、アメリア皇国の皇弟を婿に向かえました。
アメリア皇国は嫁に迎えたいと言ってきましたが、断固として拒否しました。
エヴァを人質に出すくらいなら、戦争も辞さない覚悟があります。

そう言ったら、フェルドナンドが私も護ってくれますかと言いだしました。
解せません!
フェルドナンドが私に護られるなど、どうあっても逆でしょ?
アメリア皇国が折れて事なきを得ましたが、皇帝の地位は重くて辛いです。
このまま何事もなく幸せに暮らしたいです。

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