「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第29話

私は多くの見合い話を全て断り、内政に力を入れました。
ファンケン公爵領内では、天災や凶作の時に備えた非常用の食糧も兵糧も備蓄できていますが、王家直轄領では全くできていません。
基本自助で備蓄したいのですが、疲弊している王家直轄では、通常の年貢ですら集めるのが厳しいのです。

もっとも、農民を疲弊させた、通常の年貢より多く奪い、自分の私腹を肥やしていた代官や官吏、村長などの村役人は逮捕して奴隷にしました。
武装蜂起で前王家を滅ぼした私たちです。
前王家に仕えて悪事をしていた者を、そのまま使う必要など全くありません。
密偵に全てを調べさせ、容赦せずに奴隷としました。
死ぬまで鉱山で働いてもらいます。

尻尾を掴ませない者には、餌をまいてやりました。
ファンケン公爵家の食糧を、各地に兵糧として預けたのです。
それをどう扱うかを徹底的に調べました。
普通に盗む者は逮捕して奴隷に落としましたが、中には悪知恵を働かせる者もいて、私が送った良質な兵糧の中身を抜いて、劣悪な食糧を入れる者がいました。
中には全て入れ替えるのではなく、半分程度抜いて、半分劣悪な食糧を混ぜるといった、浅知恵を働かせる者もいました。

そんな者たちも容赦なく逮捕して奴隷としました。
情けない事ですが、官、官吏、村役人の九割が奴隷となりました。
お陰で多くの奴隷が集まると同時に、人心の刷新ができました。
多くの農民が、私に期待するようになりました。
死んだ魚のようだった目が、少し光を取り戻したと、エヴァの配下から報告がありました。
そんな内政重視の時に、外交問題が勃発してしまいました。

「マイロードケーニギン。
モンザ王国の第二王子、アルドス殿下が謁見を求めてきています」

「お見合いの依頼は断ったのですよね?」

「はい。
ですが今回はお見合いではなく、外交官として赴任したので、着任の挨拶がしたという事です」

「やってくれましたね。
どうしても国内に置いておきたくなかったのですね?」

「はい。
あの国の王位継承は、血で血を洗う内紛が常識の国です。
以前王配候補であったビルド王弟は、アルドス殿下に殺されたと聞きます。
王太子以外の王族の多くが殺しあって、アルドス殿下が生き残りました」

「王位継承で内紛を起こすのではなく、私の王配の座を目指して殺しあうとは、これは国王の計略ですか?」

「恐らくは、その通りだと思われます。
国王と王太子は騎士団に守られて王都に残り、他の王族を離宮に押し込められたそうですから、計画的なモノでしょう」

「なにがなんでも私の王配になる気ですね。
アルドスは傍若無人、悪逆非道だと聞きます。
謁見の間で私を襲い、既成事実を作ろうとするかもしれません。
対策が必要ですね」

「はい、マイロードケーニギン」

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