「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第26話

「お呼びでしょうか、公爵閣下」

「ええ、でもなぜ呼ばれたのかわかっているのでしょ?
それくらいの情報網は持っているでしょ?」

フェルドナンドが苦笑しています。
何が言いたいのか分かっているのでしょう。
そうです、探りを入れたのです。
フェルドナンドがこの国に張り巡らせている情報網があることを、私に告げる気があるのかという事を確認していることを。
そして何より、サンアリステラ皇国とどこまで対立する気があるのかを!

「王位簒奪者、アキーレヌの件でございますね。
叩き潰すべきだと思います。
必要ならば全て私が表に出て行わせていただきますが、それではサンアリステラ皇国と正面から対立する事になりかねません。
表向きは忠臣エヴァ殿が出られた方がいいと思われます。
必要な魔術書と魔術巻物は私が用意させて頂きます」

「それで勝てますか?」

「もうこの段階で圧勝です。
エヴァ殿がおられるだけで、この国くらいはいつでも手に入れられたでしょう」

「ですがそれは、フェルドナンド殿が軍資金と兵糧を用意してくれたからできた事ではありませんか」

「そんな事はありません。
公爵閣下の英断とエヴァ殿の忠誠心があれば、多少の犠牲と時間はかかっても、私がいなくても、この国は閣下のモノになっていましたよ」

「確かにそうかも知れませんね。
ですが今は、フェルドナンド殿がいますから、それを前提に、これからの話をしましょう。
フェルドナンド殿は皇位を望んでおられるのですか?
サンアリステラ皇国と戦う気があるのですか?」

「私は争いを好みません。
ですが、黙って殺される気もありません。
サンアリステラ皇国が、手出しする気にならないくらいの力を、なんとしても手に入れるつもりです。
そのために学院内に確固たる地位を築きましたし、閣下の手助けもしています」

「それを信じていいのですか?」

「どこに穴があり、どんな悪影響が出るか分からないので、魔術契約を結ぶ事はできませんが、信じて頂きたいです」

「魔術契約を結べないというのでは、絶対的な信用はできませんね。
ですが、条件がフェルドナンド殿には不利過ぎますから、それが当然と言えば当然ですね。
分かりました。
フェルドナンド殿を信用しましょう。
フェルドナンド殿が表に出ないように、ファンケン公爵家の内臣としての地位は上がますが、カラッテ王国の爵位も地位も与えないようにします。
ただし、ファンケン公爵家内の領地は、フェルドナンド殿の魔法を使えば三千万石分与えましょう。
それだけあれば、サンアリステラ皇国に対抗できるだけの力を持てるでしょう」

「ありがたき幸せでございます」

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