「婚約破棄」「ざまあ」短編集5巻

克全

第25話

「マイロード。
国王と王妃が殺されました」

「国王と王妃だけなのですか?」

「いえ、グレイソン第二王子以下、全ての王族が殺されました」

「全ての王族ですか?」

「不確かな表現をしてしまいました。
実行犯のアキーレヌ王太子以外の、王城にいた王族全てです」

「臣籍降下している王族は生き残っているのですね」

「はい、マイロード」

「エヴァがやらせたのですか?」

「いえ、そのような事は決してありません」

「ですが知っていて放置したのですね?」

「……はい、絶好の機会でしたから」

やれやれ、それでなくても色々と忙しいのに、エヴァは私になにをさせようというのですか?
いえ、分かっていますよ。
私を女王に戴冠させたいのは分かっています。
ですが、これ以上の責任は背負いたくないというのが本音です。

まあ、エヴァの言い分も分かります。
確かに絶好の機会です。
フェルドナンドのお陰で、軍資金にも兵糧にも不足はありません。
二百万人もの不可触民が集まっていますので、兵士にも不足はありません。

一方アキーレヌは、王太子の地位にあったとはいえ、私との事件が社交会に知れ渡っていて、信望が地に落ちています。
王家直属の騎士や徒士、特に本当は一番頼りになるはずの近衛騎士団から、愛想を尽かされているのです。
さらに今回の弑逆でほとんどの貴族士族からも見捨てられる事でしょう。
普通なら戦力は全くないといっていいでしょう。
それなのに弑逆を成功させています。

「誰が味方に付いたのか分かりますか?」

「ジャンバッティスタ辺境伯家、バルフォア侯爵家、フィールド伯爵家、ベアリング伯爵家などでございます」

全員我が家とイザコザガあって、エヴァに罠に嵌められた家ではありませんか。
これでよく何もしかけていないといえたものです。
エヴァの事ですから、アキーレヌ討伐の大義名分も、味方をするべき貴族士族も、滅ぼすべき貴族士族も、全て段取りした後なのでしょうね。

「それで、エヴァは直ぐに兵を挙げろというのですか?」

「とんでもありません、マイロード。
私の知恵や力などしれたものでございます。
ここはフェルドナンド殿に相談されて、最善の方法をお選びください」

思わず吹き出してしまいそうになりました。
ここまで段取りしておいて、最後の責任はフェルドナンドに押し付けようとするのですね。
いえ、それだけではないですね。
フェルドナンドの力と知識、特に魔力を使い倒すつもりです。

それと、これは想像するのも怖いですが、サンアリステラ皇国も意識しているのかもしれません。
私を女皇帝に戴冠させるために、フェルドナンドに一国を支配する地位を与えるつもりかもしれません。
ですが本当に分かっているのですか、エヴァ。
力を得たフェルドナンドが、私を裏切り殺す事もありえるのですよ。

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